2006年10月21日

人間の存在意義を確信できるのか?

インテリジェントデザインの本山たるDiscovery InstituteのシニアフェローDr. Jonathan Wittの本「Meaningful World」のQ&Aページにおいて:
Our book takes on materialist reductionism, which tries to reduce everything to mere matter and energy, and defines everything strictly according to its smallest parts--cells, atoms, quarks. On this view, a human being is just an accidental assemblage of subatomic particles, nothing more. Materialist reductionism leads to nihilism, the view that life is pointless. It sucks the meaning out of life, flattens reality like a steamroller. We counter this by showing that the world is meaning-full, a work of genius far beyond any work of human genius.

万物をただの物質とエネルギーに還元しようとし、細胞や原子やクォークなど最小単位に対して万物を厳密に定義する唯物論的還元主義について、我々の本は述べる。この見方では、人間は、原子以下の粒子の偶然の集まりであって、それ以上のものではない。唯物論的還元主義は生命が無意味だというニヒリズムにつながる。それは生命から意味を吸い取って、ローラーで現実を平板なものにする。我々は、世界が意味に満ちていて、人間の才能をはるかに超える才能による被造物であると示すことで、これに対抗する。
とある。もちろん、世界や人間の意味は科学の範疇外のものであり、宗教を以って定義する他ない。

デザイナーが存在すれば、"意味"があるのか?

"崇高"な目的か気まぐれか、何らかの世界創造の目的はあるという神学はありになるだろう。しかし、それは、デザイナーにとっては意味があるだろう。被造物の存在意義もデザイナーにとってはあるだろう。

しかし、フィリップ K. ディック: "世界をわが手に"[マイノリティリポート所収]の世界球の中の知的生命や、エドモンド ハミルトン: "フェッセンデンの宇宙"[Amazon]の知的生命たちに、何の存在意義があるのやら...

と言ってしまうと終わってしまうので、デザイナーに意図があれば、被造物自身にも存在意義があるということにしてみよう。


未来を知らなければ

おそらくデザイナーの意図だけでは、被造物の存在意義があるということは保証されない。デザイナーが未来を知らないなら、デザインされた生物たちが生き延びるのか、滅亡するのかがわからないからだ。そして、大なり小なり、その種が生き延びられるかどうかは自然選択に委ねられる。

それでは、インテリジェントデザイン理論家たちの進化論批判の主張からすれば、自然選択に委ねられれば、人間の存在意義を見出せないだろう:
“Blind watchmaker” thesis: the idea that all organisms have descended from common ancestors solely through an unguided, unintelligent, purposeless, material processes such as natural selection acting on random variations or mutations;
[Stephen C. Meyer and Michael Newton Keas:The Meanings of Evolution]



未来を知るためには

ということで、人間の存続を自然選択と偶然に委ねないために、デザイナーは未来を知っているか、事実上知っている必要があるだろう。その方法は:

  • デザイナーはシミュレーションにより未来を知っている。あるいは、デザイナーは自らが意図する未来に至るパラメータを見つけるためのシミュレーションをしまくっている。
  • デザイナーは自らの意図どおりに事が運ばなければ、Saveポイントまでもどってやりなおす。


ここが意図する未来に至るパラメータを見つけるためのシミュレーションなのか、"真なる"世界であるのか区別がつくだろか? 区別がつくなら、本当に未来を知っていることにはならない。区別がつくということは、真なる世界と差異があることになるからだ。
そして、おそらく、真なる世界1個に対して、シミュレーションの数は圧倒的に多いだろう。とするなら、"ここ"は真なる世界ではなく、シミュレーションである可能性が圧倒的に高くなる。

あるいはRPGのようにSaveポイントにもどってやりなおすという形で、事実上、未来を知っているかのごとくにデザイナーが振舞うとすれば、シミュレーションは必要なくなる。しかし、失敗して"なかったこと"にされてしまう時間の方が、圧倒的に多くなるだろう。我々はこの瞬間にもリセットされて"なかったこと"にされてしまうかもしれない。
また、"この"世界の誕生はわずか5分前のSaveポイントかもしれない。


意図した世界を生み出すパラメータ決定のためのシミュレーション世界の住人の存在意義、あるいは"なかったこと"にされてしまって消えた時間にいた住人の存在意義とは何だろうか。

となると、デザイナーが未来を知っているだけでは、人間に存在意義があることは確信できないだろう。
ということで、デザイナーはシミュレーションなどしなくても未来を知っていることにしよう。そうでないと、インテリジェントデザイン支持者たちは、人間の存在意義を確信できない。


そもそも未来を知っているとは

何はともあれ神は未来を知っているなら、インテリジェントデザイン支持者たちは、人間の存在意義を確信できるだろうか。

実のところ、そうではない。というのは「デザイナーは未来を知っている」とは何かを考えてみると明らかになる。たとえば、「佐藤孝之が2007年9月14日21:46:43に斉藤貴子に電話した場合は2007年9月17日13:32〜14:57にStone Burgでいっしょに食事をしている。しかし、21:46:49に電話した場合は佐藤孝之は同時刻に自宅にいる」ということをデザイナーは知っているとしよう。ただし、どうやって知ったかは、もはや問わない。

さて、"知っている"とはどういうことだろうか?

  • 文字情報として「佐藤孝之と斉藤貴子は2007年9月17日13:32〜14:57にStone Burgでいっしょに食事をしている」だけを知っているが、その動画情報もなければ、交わされる会話内容も知らない
  • 固定カメラ視点の動画情報があり、石焼きハンバーグのおおよその画像もあるが、味や分子構造などはまったくない。
  • Stone Burgの店内は素粒子レベルまでの情報がある。しかし、そこにいる人間たちの精神はわからない
  • Stone Burgの店内は素粒子レベルまでの情報があり、そこにいる人間たちの精神状態も完全にわかっている。
さて、どこまでデザイナーは"知っている"だろうか?おそらく人間たちの精神状態までも知っていなければ、未来を知っているとは言えないだろう。

さて、素粒子レベルあるいはクォーク・レプトンのレベルまで知っていて、精神の動きもすべてわかっているとするなら。その"知っている"="デザイナーの知識"は、"現実"と違いがあるだろうか?Stone Burgという限定された空間の2007年9月17日13:32〜14:57という限定された時間だけが存在する世界そのものではないのか?

そうなると、我々が今、PCの前でネットを彷徨っている状態も、"デザイナーの知識"ということなのかもしれなくなる。"ここ"は"真なる世界"なのか、"誰かの未来を知っている"ということのなのか、区別はつける手段はないだろう。そして、おそらく、あらゆる人々の選択に基づいて分岐する未来に対応して、"デザイナーの知識"の数は無限に近いだろう。となれば、我々が"真なる世界"ではなく、デザイナーの知識の中にいる可能性はほぼ100%に近いくなる。

我々が、そのような"デザイナーの知識"の中の存在であったとしても、インテリジェントデザイン支持者たちは人間の存在意義を確信できるだろうか?


魂を持ち出しても

"デザイナーの知識"の中の人間には魂はなく、"真の世界"の人間には魂があるということにしてみよう。それなら、魂を持つ人間は"真の世界"にしか存在しなくなる。それなら、人間の存在意義を確信できるだろうか?

実はそれも保証されない。魂が存在するか否かに差異があるなら、魂のない"デザイナーの知識"としての未来と、"真の世界"の未来には差異があることになる。すなわち、デザイナーは正しい未来を知らないことになる。

ということで、魂を持ち出したくらいでは、人間の存在意義を確信できない。


では、何故インテリジェントデザイン支持者たちは、デザイナーがいれば人間の存在意義を確信できるのか?

さて、何故だろうか?
posted by Kumicit at 10/21 23:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | DiscoveryInstitute