==>John Tierney: "Findings: Our Lives, Controlled From Some Guy’s Couch" (2007/0814)
また、MSNBCもシミュレーション・アーギュメントをとりあげた。
[via towleroad]
このシミュレーション・アーギュメントとは:
技術的に成熟した人類の次の段階の文明には、巨大な計算力があるだろう。この経験的事実に基づくと、シミュレーション・アーギュメントは次の命題のうち少なくとも一つは真であることを示す。(1)人類段階の文明が、次の段階の文明に到達する可能性は限りなくゼロに近い。(2) 次の段階の文明は、自らの祖先のシミュレーションを実行することに興味を持つ可能性は限りなくゼロに近い。(3) すべての人々のうち、シミュレーションの中に生きている人々の比率は限りなく1に近い。ただし、「"ここ"がシミュレーションではなく、基底的現実だ」ということは原理的に証明できない。それは、"ここ"が基底的現実と区別がつかないように創られたシミュレーションであるという主張を覆す方法がないから。
もし(1)が真であるなら、我々はほぼ確実に、次の段階に到達する前に滅亡する。もし(2)が真なら、発展した文明は、祖先のシミュレーションを実行したいと思い、かつ実行できるような、相対的に裕福な個人を事実上含まないようなものに収束する。もし(3)が真なら、我々はほぼ確実に、シミュレーションの中で生きている。我々の知識がない状態では、 (1)と(2)と(3)の信頼性はおおよそ等しい。
もし、我々がシミュレーションの中で生きているのでないなら、我々の子孫は決して祖先のシミュレーションを実行しない。
==> N. Bostrom, “Are You Living in a Computer Simulation?” Philosophical Quarterly, 2003, Vol. 53, No. 211, pp. 243-255. URL: http://www.simulation-argument.com/simulation.html
一方、「"ここ"がシミュレーションだ」ということを証明する方法もなきに等しい。
9. Isn’t the simulation-hypothesis untestable?[The Simulation Argument FAQ]SFだと、次のようなものが相当する。
There are clearly possible observations that would show that we are in a simulation. For example, the simulators could make a “window” pop up in front of you with the text “YOU ARE LIVING IN A COMPUTER SIMULATION. CLICK HERE FOR MORE INFORMATION.” Or they could uplift you into their level of reality.
我々がシミュレーション中であることを示す明らかにありうべき観測が存在する。たとえば、シミュレーションがあなたの目の前に"ウィンドウ"をポップアップさせて、「あなたはコンピュータ・シミュレーションの中で生きている。さらに情報がほしいときはここをクリック」という文字列の表示。あるいは彼らがあなたを、彼らのレベルの現実に引き上げる。
- Daniel F. Galouye: "Simulacron III", 1963 (中村融 訳: 模造世界)
- Greg Egan: "Permutation City", 1994 (山岸真 訳: 順列都市 上,下)
- James P. Hogan: "Realtime Interrupt", 1995 (大島豊 訳: 仮想空間計画)
- 山本弘: 神は沈黙せず,2003
当然のことながら、シミュレーション・アーギュメントはインテリジェントデザインを想起させる。
たとえば、rec.arts.sf.writtenで2007年4月頃にスレッドがたっていた。
Gerry Quinn -- Thu, 26 Apr 2007 13:37:19 +0100この流れで行くと、"ここ"がシミュレーションなら、リソース節約のため、"基底的現実"に比べれば、手抜きがいっぱいあるはずという論も成り立つ。たとえば、進化経路なんか隙間だらけで、遠方の宇宙にはディテールはなく、量子レベルも乱数で処理するとか。
我々が祖先シミュレーションのようなものの中で生きていると、本気で考えている人々がここには多そうだ。
もしそうなら、進化のシミュレーションは正しい形態の祖先を創れるように操作されているはず。人間の出現が必要なら、インテリジェント恐竜とか動物のいない世界ができないようにするだろう。
ということは、祖先シミュレーションの中で生きていると思う人は、論理的に、自然選択による進化よりもインテリジェントデザインを信じるべきじゃないか。
そして、祖先シミュレーションがありうると思うなら、インテリジェントデザインもありうると思わないといけないだろう。
David Johnston -- Thu, 26 Apr 2007 16:35:35 GMT
違うよ。インテリジェントデザインの中心的な主張は、生命をデザインするインテリジェンスなしに生命が発生しえないというもの。生物が自らの発展過程を複製しようとしてデザインしたシミュレーション世界に我々が生きていると本当に信じていると仮定すると、それは生命がさらに過去のどこかに起因することを意味するね。もちろん、そのような信仰は、君も言うと思うけど、とにもかくにも実質的に存在しない。
nuny@bid.nes -- 26 Apr 2007 15:12:18 -0700
"真の世界"の進化経路と似たような経路をたどらないといけないという、アプリオリな理由はないよ。
Wim Lewis --Thu, 26 Apr 2007 20:21:11 +0000 (UTC)
シミュレーションが、既にものが揃った状態でスタートしたって可能性を思いついた。これはインテリジェントデザイン創造論よりも、"若い地球の創造論"に近いね。
[rec.arts.sf.written: Ancestor simulations and Intelligent Design Options (魚拓)]
インテリジェントデザイン運動側、やっと気づく
どうも、インテリジェントデザイン運動な人々は、哲学・論理学やSFなどに疎いようで、まったくシミュレーション・アーギュメントに気が付いていなかったようだ。
しかし、さすがに、New York Timesは読んでいるようで、やっと反応した。
==>Robert Crowther: "Take the Red Pill, Nick, and Discover Intelligent Design Theory" (2007.08.16) on EvolutionNews.org(Discovery Institute 公式ブログ)
Compare this to the serious scientific ideas advanced by intelligent design theorists. How does Bostrom’s simulation theory look when lined up next to an idea propsed by Michael Behe such as irreducible complexity? Or, next to theorems proposed by William Dembski, such as those in The Design Inference or No Free Lunch?Robert Crowtherはインテリジェントデザインとシミュレーション・アーギュメントは近いという点で正しいが、それが科学だという点で間違っている。
これを、インテリジェントデザイン理論家たちによって発展した真剣に科学的な理論と比べてみよう。還元不可能な複雑さのようなMichael Beheが提起した考えと、Bostromのシミュレーション・アーギュメントを並べてみよう。あるいは、William Dembskiの提起した定理と並べてみよう。
Yet it is ID proponents like Behe and Dembski that are denied serious consideration and coverage by The New York Times (or, if they are covered, they're attacked and mocked), while the same media which ignores a scholarly proposition from an ID theorist will fuel serious discussion of ideas such as Bostrom’s. One scientist commented after reading this article that it is "fascinating what explanations for reality are acceptable in quarters which despise ID."
New York Timesは、BeheやDembskiのようなインテリジェントデザイン理論家の真剣な考慮を否定し、インテリジェントデザイン理論家の学究的な提唱を無視する。一方で、Bostromのような考えについて、重大な議論をあおる。これを読んだ科学者のひとりは「インテリジェントデザインをこけにするという点で、この現実についての説明を許容可能」とコメントした。
「『ここはシミュレーションだよーん』というポップアップが目の前に出現」といった"科学的にありえないこと"を探索するというインテリジェントデザイン"理論"のあり方は、シミュレーション・アーギュメントの特殊例だと見なせる。この点で、Robert Crowtherはそこそこ正しい。
一方、シミュレーション・アーギュメントはコペルニクス原理に基づく論理学ネタであって、自然科学ではなく、お友達には次のようなものがいる:
- Doomsday Argument: 人類の滅亡は近い
- 異星人は存在しない
==>三浦俊彦: 論理学入門, ゼロからの論証,
ちなみに、査読つき論文もあったりする。
Nick Bostrom: "Are You Living In a Computer Simulation?", Philosophical Quarterly, Vol. 53, No. 211, pp. 243-255, 2003.
Brian Weatherson: "Are You a Sim?", Philosophical Quarterly Vol. 53: 425-31, 2003
Nick Bostrom: The Simulation Argument: Reply to Weatherson", Philosophical Quarterly Vol. 55, No. 218, pp. 90-97, 2005.
Historical Simulations - Motivational, Ethical and Legal Issues. Peter S. Jenkins (2006) Journal of Futures Studies, Vol. 11, No. 1, pp. 23-42.
Doomsday Argumentだと、わんさかある。
Nick Bostrom: "The doomsday argument is alive and kicking", Mind 108(431):539-551, 1999
Nick Bostrom: "The Doomsday Argument Adam & Eve, UN++, and Quantum Joe", Synthese, Volume 127, Number 3 / 2001
他多数
で、インテリジェントデザインは
- 生物学ではなく論理学であり、
- 進化生物学とは無関係な議論であり、
- シミュレーション・アーギュメントの派生品だ
それは、インテリジェントデザインの主張が「鞭毛は進化では説明できないからデザインだ」という形式であるため、シミュレーション・アーギュメントの論に到達していないから。「デザインだ」で止まってしまうと、シミュレーションのリソース節減や再現性などの論点にまったく絡んでこない。
関連エントリ
シミュレーション・アーギュメントとオメガポイントについて (2006/09/30)
"ここ"がシミュレーションであることの検証可能性 by Nick Bostrom (2006/10/06)
シミュレーション・アーギュメント 順列都市 インテリジェントデザイン (2007/05/05)
Doomsday Argumentメモ (2006/10/08)
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