2014/09/06

現地調査したNiang教授は「エボラ否定は植民地思考に対する反抗である」と言う

エボラウィルスがこれまでのアウトブレイクと同様のもので、特に性質を変えていない。にもかかわず、感染がこれまでよりも広範囲かつ多人数に及んでいるのは、これまで取り上げてきたようにエボラ感染域であるギニア・リベリア・シエラレオネでは、政府不信の陰謀論からエボラ対策がなかなか進められていない点にある。

リベリア内戦の難民たちが流入した、リベリアの首都モンロヴィアにあるスラム"West Point"にある、エボラ隔離施設が集団に襲われて、17名の感染者が逃亡するという事件も起きている(2014年8月17日)。

このような状況に関して、WHOのミッションの一環として、2014年7月の一か月間、現地調査にあたったセネガルの社会学者Cheikh Ibrahima Niang教授は「エボラ否定は植民地思考に対する反抗である」と言う。
エボラ否定は植民地思考に対する反抗であると、専門家は言う (2014/09/02)

ここに致命的な感染症における奇妙な特徴のひとつがある。西アフリカ社会で積極的に意見を言う少数派が、たとえ身の回りの家族や友人が死んでも、エボラの存在を否定している。

年始以来、アウトブレイクはこの地域で猛威をふるい、1500人以上を死なせている。しかし、いまだ医師や看護師たちは、エボラは作られtものだと主張する怒れる暴徒たちの妨害を受けている。

感染の中心地の地域社会で一か月間を過ごした著名な社会学者は、「エボラ否定」はおそらく、見えているものだけがすべてではないと言う。

「人々がエボラは存在しないというとき、人々は何か別物に反抗している」とセネガルのCheikh Anta Diop UniversityのCheikh Ibrahima Niang教授はAFPに語った。

「彼らは何の相談も受けない状況に置かれていて、パターナリズムのもとで治療を受けていると感じている。」

国際援助機関からの医師や看護師たちは、感染症と戦うだけでなく、ウィルスは西洋によって作られたもの、あるいはウィルスはホラだという根拠なき噂の虜となっている地域社会の根深い不信とも戦っている。

リベリアの首都モンロヴィアでは、2週間前、棍棒を振り回し、「エボラは存在しない」と叫ぶ若者たちに隔離センターが襲撃され、17名の感染者が逃亡した。この地域ではこのようなことは繰り返し起きている。

ダカールのCheik Anta Diop Universityでのインタビューで「我々は、何が彼らにそう言わしめているのか問う必要がある」とNiang教授はAFPに語った。

「人々は必要は情報を得られていないという印象を持っていて、彼らの対して施される予防対策や医療措置に同意しない」

Niang教授は、WHOのミッションの一環で、アウトブレイクとの戦いの最前線である、シエラレオネのKenemaとKailahunの東部地区で7月を過ごした。

年始にギニアで発生し、リベリアとシエラレオネとナイジェリアに拡大したエボラの流行は、1976年にエボラ出血熱が特定されて以来、最悪のエボラアウトブレイクとなっている。

植民地の遺産

WHOの最新統計によれば、3000人以上が感染し、リベリアでは694人、ギニアでは430人、シエラレオネでは422人、ナイジェリアでは6人の合計1552人が死亡した。

Niang教授は、「逆効果」な国境閉鎖は誤ったアプローチの例であり、危険な状態にある人々に対して、誤った安心感を与え、自己満足を伝播させたと考えいてる。

「町や地域社会に拡大した森林火災は、元から断たなければならないという、非常に重要なアフリカ人のメタファーがある。自宅でバリケードを築き、到来したときに備えて、消火に使う水を備蓄しておく」と教授は言う。

「国境線は植民地の遺産であり、人為的なものでしかない。どれだけの人々が、森や草原の小道をたどって、一夜にして国境を越えていることだろうか」と教授は問いかける。

Niang教授は、地域の反応を考慮していないが故に、エボラと闘う厳密な臨床アプローチは、「比較的限定的」な成功しかもたらさないと言う。

「それでは感染症だけを見ていて、コンテキストを見ていない。それが、適切な反応が得られまでに非常に時間がかかっている理由である」と教授はAFPに語った。

アフリカ人が現代医療を受け入れるのをしぶっているのは、現代医療が「還元的医療ビジョン」から来ていることによるものだと、Niang教授は考えている。

問題は地元住民が医療が機能することを認めないことにあるのではない。どう行動すべきかを告げる、祖国に侵入してくる文化を地元住民が信頼していないことにある。

教育キャンペーンにおける個人をターゲットにした西洋モデルは、主にウィルスの影響を受けているのが家族である場合、同様に方向性を誤っていると、Niang教授は考えている。

教授は、感染拡大に対する反応が男性主導の状況にあり、もっと女性を意思決定の場に呼ばなければならないと言う。

「エボラはウィルスによって感染拡大するが、感染症のアウトブレイクは、感染を拡大させている社会的・政治的・文化的・歴史的コンテキストから来ている」とNiang教授は述べた。

教授は「我々西アフリカ諸国のより強い政治的意志と、臨床及び社会的答えの提供するチームを送るために動員すべき人的資源」の必要性を呼びかけている。

[Ebola-denial a revolt against colonial mindset: expert (2014/09/02) by AFP]
その後、現地のエボラ否定は収まりつつあるが、逆に恐怖の故に、死体が路上に放置される事態を招いているようである。

また、ギニアからシエラレオネへのエボラ感染が、エボラを治療できると主張した1名の伝統的治療師(エボラに感染して死亡)を経由したものであることが示された。にもかかわらず、ナイジェリアでは、エボラを治療できると伝統的治療師たちが主張していれる。

なお、最新(2004/09/04)のWHOのエボラ感染集計結果は以下の通り(週単位の振り分けは独自処理)で、リベリアの感染者数の指数関数的な増大が止まっていない。
Ebola_20140831gn.PNG

posted by Kumicit at 2014/09/06 06:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | Disease | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする