2008/07/04

ルイジアナ州反進化論州法についていろいろ

これまでルイジアナ州反進化論州法成立まで、経緯を追ってきた:
この反進化論州法Act473は、「進化論・地球温暖化・ヒトクローン」というReligious Rightが反対する項目を挙げているが、明示的には「創造論・インテリジェントデザイン」には触れていない。しかし、実質的には創造論を導入を可能とするものである。

==>忘却からの帰還: Barbara Forrest教授によるルイジアナ州反進化論州法案分析 (2008/06/16)

この州法成立を期待した学区教育委員のひとりは次のように述べている:
David Tate, a Livingston Parish School Board member, said after the meeting, "I believe that both sides -- the creationism side and the evolution side -- should be presented and let students decide what they believe." Tate said the bill is needed because "teachers are scared to talk about" creation, even when students bring it up.

Livingston学区教育委員David Tateは会議のあとで次のように述べた「私は両サイド、創造論サイドと進化論サイドが提示されるべきで、生徒たちに何を信じるか決めさせるべきだと信じている。この州法が必要なのは、たとえ生徒が話を持ち出したとしても、先生が創造について語ると職を脅かされるからだ。」

Panel OKs bill on science texts (2008/04/18) on nola.com -- Everything New Orleans]



この反進化論州法の成立させたルイジアナ州議会だが...


民主党優位のルイジアナ州議会による可決

この州法成立させた採決の票数は以下の通り:州上下院ともに民主党が過半数を占め、SB733の提案者Ben Nevers州上院議員も民主党である。また、Bobby Jindal州知事は共和党(副大統領候補の可能性あり)。

反進化論州法案を提案したり、それに賛成するのは共和党がやりそうに思えるのだが、ルイジアナでは民主党議員による提案に、民主・共和両党が賛成して成立させている。これは、それほど奇異なことではない。

もともと州法レベルで進化論を排除するという手法を確立したのは、民主党大統領候補として3回の大統領選に挑戦して敗れたWilliam Jennings Bryan (1860-1925)である。彼はReligious Rightと同様に、創世記を事実だと考えていたようである。

==>忘却からの帰還: Scopes裁判についての当時のTimesの記事 (2008/06/28)

これまでの世論調査でも、共和党支持者の方が創造論支持が多いという結果はあるものの、民主党支持者の40%は創造論を信じているという結果が出ている。

==>忘却からの帰還: 2008年5月の進化論についての世論調査 (2006/06/24)

ところで、共和党Bobby Jindal州知事は少なくとも科学に関してはブッシュ大統領以下の評価を受けるべきだとKumicitは思っている。ブッシュ大統領がインテリジェントデザインを支持する発言をしたのは2005年8月1日だが、それはかなり弱い表現だった。しかも、発言はその1回だけ。

==>忘却からの帰還: 2005年8月1日にPresident Bushは何と言ったか? (2007/04/20)

これに対して、共和党Bobby Jindal州知事は拒否権を発動せず、反進化論州法を成立させたのだから。もちろん、提案者である民主党Ben Nevers州上院議員や、これに賛成した民主・共和両党のルイジアナ州上下院議員も同様。

これも、ルイジアナ州という特別な場所?なのかもしれないが...



ルイジアナ州は創造科学の最後の砦だった

1987年6月19日のEdwards v. Aguillard裁判の連邦最高裁判決で、創造科学を理科で教えることは政教分離原則に反することが確定した。このときの裁判の対象が、創造科学と進化論を同一時間教えることを義務付けるた、ルイジアナ州のBalanced Treatment for Creation-Science and Evolution-Science in Public School Instructionという名称の反進化論州法(1981年成立)だった。そして、Edwards v. Aguillard裁判判決により、理科教育をめぐる反進化論/創造論サイドの戦いから、創造科学は姿を消すことになる。まさにルイジアナ州は創造科学の最後の砦だった。

その後に登場したのがインテリジェントデザイン"理論"だったが、これも2005年12月のKitzmiller v. Dover Area School District裁判で創造論と等価とみなされた。これにより、インテリジェントデザインを教えることも義務付けることができなくなった。

そんななか、ルイジアナ州の反進化論州法違憲判決から21年後に、、ルイジアナ州議会は再び反進化論州法を可決した。「進化論に対する学問の自由」という形で。


反進化論州法

反進化論州法案は毎年あちこちの州議会で提案されるが、実際に成立することはほとんどない。Anti-Evolution and the Lawによれば成立した州法は以下の通り...

  • ルイジアナ州法(1981) "Balanced Treatment for Creation-Science and Evolution-Science in Public School Instruction Act".
    Edwards v. Aguillardの違憲判決(1987)により終了
  • アーカンソー州法(1981) "Balanced Treatment for Creation-Science and Evolution-Science Act" (Act 590)
    1982年のMcLean v. Arkansasの違憲判決(1982)により終了
  • ケンタッキー州法(1976)
    既に創造論を信じている生徒に対して、教師が創造論を教え、それを以って教材を習得とみなすことを容認する州法。
  • テネシー州法(1973)
    「進化論は一つの理論と教え、別の理論も教える」ことを義務付けた州法。
    Steele v. Watersの違憲判決(1975)により終了
  • Arkansas Initiated Act No. 1 (1928)
    Epperson v. Arkansasの判決(1968)により終了
  • ミシシッピ州法(1926)
    Smith v. Mississippi裁判(1970)により終了
  • テネシー州法 The Butler Act (1925)
    Scope Trialでは州最高裁で合憲と判断されて、その後1967年に廃止
  • フロリダ州法(1923)
  • オクラホマ州法(1923)
    教科書無償化州法の付属品として制定され、1925年に教科書無償を維持できずに、一緒に廃止

従って、実際に州法を成立させてしまったルイジアナ州議会はかなり珍しい存在と言うことになる。





posted by Kumicit at 2008/07/04 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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