How one man's invention is part of a growing worldwide scam that snares the desperately ill
世界的成長する、わずかの希望に望みをかけている患者に対する詐欺において、ひとりの発明がいかなる役割を果たしたか
Michael J. Berens and Christine Willmsen, Seattle Times staff reporters
最終更新 2007年11月19日
1980年代後半、コロラドの失業中の数学講師William Nelsonが、体内に特定周波数の電波を照射すること[fire radio frequenceis]で、アレルギーから癌までのあらゆる病気を診断・治療できると主張する電子装置を作った。
しかし、医療装置を監督する米国食品医薬品局(FDA)は、William Nelsonに対して、その電子装置の販売および虚偽の主張を行うことを禁止する命令を出した。彼はこれを拒否して、重詐欺容疑で起訴された。彼は国外逃亡し、決して米国に帰国しなかった。
それが、奇跡医療の売人の、注意をひくことなき終わりとなるべきだった。
今日、William Nelsonは59歳となり、ハンガリーのブダペストの築後100年の建物から、米国で最も大胆な健康装置詐欺のひとつを率いている。閂をかけられた門と監視カメラと警備員によって守られて、彼は、精神的に誘惑されやすく、わずかの希望に望みをかけている患者から、お金を収奪するために使われる電子装置を販売して数千万ドルを稼いでいる。
その電子装置はEPFXと呼ばれる。米国だけでWilliam Nelsonは一万台以上を販売した。彼の会社の担当者は、特に米国北西部に多く販売したと述べた。
簡単にお金が稼げる仕事だと宣伝して、医者や指圧療法師や看護婦、そして医療免許を持たない主婦から退職者までを営業要員に採用して、William Nelsonはそのビジネスを構築した。
William Nelsonは、この電子装置による、たったひとりの不当利得者である。
Seattle Timesの調査により、効果の証明されていない電子装置を販売する製造業者と、疑うことを知らない患者を餌食にする開業医のグローバルネットワークを明らかにした。
彼らは脆弱な政府の管理体制を利用して、これらの装置を、非合法あるいは潜在的に危険な形で使用して、患者の金を吸い上げ、病気を誤診し、重篤な患者を救命医療から乗り換えさせた。
これらの犠牲者は、「身体はエネルギーフィールドを持っていて、これを健康増進するように制御できる」という信念に基づく代替医療である"エネルギー医療(energy medicine)"と呼ばれる成長中の分野の被害者である。エネルギー医療装置の大きさは、テレビのリモコン程度から、数百ポンドの重量のある巨大マシンまであり、価格も1200ドルから55,000ドルにわたっている。
多くの製造業者と治療に装置を使用する者たちは、FDA規則に従って、治療の効果が証明されていないことを明らかにしている。
しかし、政府の記録と200人以上のインタビューに基づくSeattle Timesの調査で、数千の業者が法律を守っていないことがわかった。この調査で、以下のことがわかっている:
- FDA当局は、どれだけの台数"エネルギー医療装置"が存在していて、どこで使われているか、そしてそれらが安全かどうか把握していない。10年前に議会は医療装置の監督を弱めた。それ以来、FDAに名前を登録しているエネルギー医療装置製造業者は最小限の連絡先しか登録していない。
- 連邦および州政府の規制当局は、患者に傷害を与え、死に至らしめる可能性のあるPAP-IMIという危険なエネルギー医療装置について、米国民への警告できていない。また連邦および州政府の規制当局は、強力な電磁波を体内に送るエネルギー治療装置のすべての没収もできていない。これらの装置は種子発芽装置(seed germinator)として米国に持ち込まれている。PAP-IMIは今日でも、ワシントン州を含む少なくとも5州で使用されている。
- 治療にエネルギー医療装置を使用する者たちの多くは、何の役にも立たない資格認定証と非認証学位を使って、非常に訓練された健康管理のプロのふりをして、普通の市民をだましている。いくつかの大規模かつ一見したところ独立な資格認定機関は、実際には、競合する2つの通販業者によって運営されている。
FDAのKaren Riley報道官は、Seattle Timesの調査に基づいて、EPFXを調査中だと述べた。
ニセ医療者(Medical charlatan)たちは、米国で100年以上前から、エネルギー医療装置を使ってきた。
ここ10年は、バイヤーと患者に迅速かつ安価に連絡を取れるインターネットによって、エネルギー医療装置は爆発的に成長した。
今日、数十のエネルギー医療装置製造業者は、ビデオ証言やニセ科学を満載した派手なWebサイトで宣伝している。
「メッセージそのものは過去百年変わっていない:『これは私が発見した治療法で、これを使って墓場から帰還を果たした多くの患者の証言によって裏づけられています』というものだ」とUniversity of Washingtonの医学部の医療史教授James Whortonは述べる。
国立衛生研究所(The National Institutes of Health)は、エネルギー医療の分野の研究が成果をもたらすことがあるかもしれないが、いかなるエネルギー医療装置も、いかなるエネルギー医療法も、科学的に有効性を証明されていないと言っている。
「疑いなく、多くにニセ医療(quackery=インチキ療法)が存在する。彼らは、あなたが聞きたいと望むことを、あなたに告げる。平均的な市民は、このような治療法を批判的に評価するようには教育されておらず、訓練もされていない」とJames Whorton教授は述べている。
Couple's final hope 夫婦の最後の希望
オクラホマ州Tulsaのクリニックで、JoAnn Burggraf 58歳は、EPFXにつながれて、特大の肘掛椅子に座った。
シアトルでエネルギー医療装置のトレーニングを受けた、クリニックのオーナーSigrid Myersは、電極を埋め込んだ黒いストラップをJoAnn Burggrafの額と手首と足首に巻きつけた。ストラップは靴箱サイズのEPFXに接続され、さらにEPFXはデスクトップPCに接続されていた。
Sigrid MyersはEPFXをJoAnn Burggrafの身体のスキャンと分析に使った。JoAnn Burggrafは、Sigrid Myersが不健康だと言う彼女の体の部分を鮮やかなカラーグラフィックスで表示しているモニターを見ていた。
そして、Sigrid Myersは、EPFXを"zap mode(消去モード)"にして、微小な低レベル周波数を電極を通してJoAnn Burggrafの身体へ送った。
JoAnn Burggrafと夫のJerry Burggrafは、成功したクリーニング&修繕会社をTulsaで経営していた。夫のJerry Burggrafは白血病になり、化学療法を受けた。2004年になって、彼は病気の進行を止めることを望んで、EPFX療法を受けるようになった。
そして、彼は2005年3月に、59歳で死亡した。
彼女の夫Jerry Burggrafは、化学療法による副作用の痛みに耐えていた。その後、彼女は医者を疑うようになった。
JoAnn Burggrafは、関節と脚の痛みの治療を求めて、1時間60ドルのEPFX治療を受けるようになった。
彼女の息子Bryan Burggraf 37歳は「私は母に病院に行くように頼んだ。でも、母はこの装置が私を治してくれると言いました」と語った。
しかし、彼女の痛みは悪化し、ついには痛みで意識を失うようになった。2005年10月に、息子のBryan Burggrafは、ただちに病院に行く必要があると母JoAnn Burggrafを納得させた。彼女は非常に弱っていて、病んでいて、脚は炎症を起こしていて、結局、彼女はヘリコプターで病院に運ばれた。
JoAnn Burggrafは入院数時間で死亡した。検査の結果、彼女の身体は未診断の白血病に侵されていたことがわかった。
息子のBryan Burggrafは、「両親は修繕事業で、現在は禁止されている溶媒を使っていたのではないかと疑っている」と医者に告げた。
Bryan Burggrafは「この詐欺な装置がまだあそこにあることに怒りを禁じえません。母がもっと早く病院に行っていれば、まだ望みがあったかもしれません。あれがなければ、母はあんな痛みで苦しみながら死ぬことはなかったかもしれません」と語った。
クリニックのオーナーSigrid Myersはマッサージセラピストで、正式な医療トレーニングを受けたこともなく、大学の学位も持っていない。しかし、彼女のホームクリニックの壁には、半ダースもの額に入った健康管理の認証や自然療法医の資格認定などの証明書が飾られていた。
クリニックを訪問したリポーターに、Sigrid Myersは「法的には言えませんが、でもこの装置は病気を消去できます(We're not supposed to say it, legally, but it can zap away disease)」と答えた。しかし、何故、EPFXがJoAnn Burggrafを治療できなかったかを問われたSigrid Myersは涙ぐんで「私はほんの数日トレーニングを受けただけだったのです。私は自分が何をしているか、わかっていませんでした。(I had just a few days of training. I really didn't know what I was doing.)」と答えた。
今では、Sigrid Myersは経験を積んだと言う。
Sigrid Myersは新たなEPFXを使ってホームオフィスで患者を治療している。彼女は高齢の患者に12,000ドルの装置を、Sigrid Myersのために買ってくれるように説得した。引き換えに、心臓病治療のためのEPFX療法を無償にしたと、Sigrid Myersは言った。
その患者もまた死亡した。
(つづく)
2008/07/30
ニセ医療装置EPFX (1)
ニセ医療「エネルギー医療装置EPFX」による大規模な詐欺行為を追跡したSeattle Timesの記事(掲載2004年2月5日・最終更新2007年11月19日)を紹介する。元記事は追記を重ねて長大になっているので、数日に分けて紹介する。
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック
[トンデモ]ホメオパシージャパンが販売する波動機器 クォンタム・ゼイロイド
Excerpt: 「水からの伝言」が波動ビジネスと結びついていると、しばしば指摘されている*1。「ありがとう」という言葉で水の結晶が美しくなるという、非科学的ではあるが一見無害な主張は、実のところ、動作原理が不明な高..
Weblog: NATROMの日記
Tracked: 2009-06-05 15:36
沖縄のホメパチ装置からの芋づる
Excerpt: しばらく避けたかったホメパチですが、9/2付朝日新聞がまた興味深いので勢いで触れます。 ■とりあえず事件の概略 事件は公立中学の養護教諭が5年以上も、調子の悪い生徒に砂糖粒しか治療として与えなかった..
Weblog: 新小児科医のつぶやき
Tracked: 2010-09-04 08:02