2008/08/03

ニセ医療装置MRAとETAscan

ニセ医療装置EPFXを追跡したSeattle Timesの報道記事を3回にわたって取り上げた((1),(2),(3))。これと同類の"エネルギー医療装置"と総称されるニセ医療装置をもうすこし見てみたい。

ニセ医療装置MRA

William Nelsonの販売ネットワークは日本には及んでおらず、日本で有名な"エネルギー医療装置"はMRAのようである。ただし、"エネルギー医療装置"という名称ではなく、"波動測定機器"と総称されているようである。

このMRAはRonald Weinstockという人物によって作られたもので、福本博文氏によれば、まったくのいんちき:
サトルエネルギー学会の会員は、大半が製造業者なので、器械の中身を知らないわけがない。中身については、暗黙の了解事項だったのである。が、外部に公表しないことを前提に、測定器メーカーの関係者が回答することになった。そして以下のことが判明した。

  1. 微弱な磁気を測定する装置があるように言われているが、そんな回路は何一つない。
  2. コードは表示器に数字が出るだけで、その他の部分には何もつながっていない。機械の周波数、電圧、電流などにはいっさい関係がない。コードネームは、デタラメにつけた無意味なものである。
  3. 出てくる音とコードは何の関係もない。音を出す装置は、掌に押し当てる金属球との間の電気抵抗のみによって決まる周波数の発振器からなっており、オペレーターの意志によって周波数を自由に変えることができる。
  4. 科学的に言って、転写される構造はまったくない。

[福本博文:"波動汚染", 別冊宝島334, 1997
via 左巻健男: "水はなんにも知らないよ", pp/52-54, 2007
via 波動 on Skeptic's Wiki]
しかも、いんちきであることは秘密でも何でもなかった:
おもしろいことに、波動測定器には波動を測定できるような回路が含まれていないことは秘密でもなんでもないようで、古川彰久という人物の著書『知らないうちに強くなる―無限のパワーを生む「波動脳力」』(文献13、p.87)には、つぎのような開き直りともとれる記述がある。(文献11)
...
そこで、いわゆる波動測定器と言われているLFT、MRA、QRS、MAX、MIRS等の器機を持ち寄り、それぞれの構造や測定の原理等を検討しました。その結果、どの測定器の構造も基本的には変わりなく、それぞれの測定器自体はセンサーを持っていないということが判明しました。つまり、LFTについて増田さんがはっきりさせたように、いわゆる波動測定器と言われているものは、どれも測定者がセンサーとして機能し、器機そのものは道具にすぎないということです。


11 「サトルエネルギー学会」:健康本の世界
13 『知らないうちに強くなる―無限のパワーを生む「波動脳力」』 古川 彰久 (著) 、文芸社 (2001/06)
[波動 on Skeptic's Wiki]
MRAで商売をしていたと思われる人物のWebサイトでは「MRAだけは本物だった」と言い張りつつも、波動機器がいんちきであったことを認めている:
歪められた「波動ブーム」とその後
−MRAの真実ー
...
また、MRAを模倣した「波動機器」には、科学的に説明しうるような計測機能がないことがサトルエネルギー学会で暴露され、MRA自体までがインチキ呼ばわりされ、「波動技術」は、その後急速に社会的信用を失い、またMRAの開発者も謎の失踪を遂げたため、ブームの発信元だった(株)IHMも、MRAから撤退し、「波動ブーム」は終焉しました。「波動機器」が不信感をかった要因としては、開発者が作動原理について明らかにしなかった点も上げられます。

[MRAと波動の真実 (cache)
via 54. sai — June 30, 2008 @11:33:14 on ミヤネ屋の反響(バイオシーパルス) (2008/06/09) on kikulog]
しかも、同じ記事で、"波動"を計測していないことを明記して、自爆している:
また、その後の研究で、MRAの測定プレートに内蔵されたコイルには、特定周波数の交流が流れ、そこから生じる磁気の波動により、被験者の身体との間にに相互誘導が起こり、その結果、皮膚電気抵抗ではなく、身体内部のインピーダンスの変動を捉えていると考えられています。



ニセ医療装置MRAで商売していた人物

このニセ医療器械を日本に持ち込んで、商売を始めたのが、Masaru Emotoという人物である。
hado01.png
[MRAと波動の真実 (cache)]

hado02.png
[HADOアストレア(cache)]
上述のように、MRAの製作者の失踪などにより撤退しているが、旧世紀には"カウンセリング"形式の商売をしていたようである。

"カウンセリング"形式だと、"カウンセラー"がそれなりの人物だと示しておいたほうが商売がしやすくなる。このMasaru Emotoという人物も、商売を始めたとされる1989年の3年後の1992年にインドのディプロマミルから学位を入手している。

==>忘却からの帰還: "message from waterでも見てみようかな" (2007/03/27)


ニセ医療装置ETAscan

DeviceWatch (QuackWatch)によれば、2008年1月、Washington州司法長官Rob McKennaと州保健長官Mary SeleckyがFDAに対して、エネルギー医療装置の取り締まりを要請する書簡を送った。この中で、効果のない"医療装置"としてリストアップされた有象無象のなかに、以下のような同類たち(ヘッドフォン使用)がいた。
Etascan(cache)(ドイツ) $13,500
Etascan.jpg
Metascan (cache)(ドイツ) $13,500
Metascan.jpg
Oberon (cache) (ポーランド) $15,000
Oberon.jpg
(価格はエネルギー医療装置比較サイトによる)
これらのうち、エネルギー医療装置比較サイトにコメントがあったのはETAscanのみ:
Henrik Sawela

Not very convincing!
ちっとも納得できないね!

Both the english and the scientific language is well below par.
英語も科学的表現も平均以下。

Already the words "Quantum Generator" arises suspicion: once again somebody who tries to fool the amateur reader with (semi-)scientific terms.
だいたい、"量子ジェネレータ"ってとことで怪しい: 誰かが、科学っぽい用語で素人を騙そうとしてるってとこだね。

"If we represent the entropy values of a system as spectral colors in accordance with the rules of the quantum science..."
Just about any person with a degree in sciences laugh loud when reading the above.
「量子科学の法則に従って、系のエントロピー値をスペクトルカラーとして表示するなら....」って、理学の学位を持ってたら、読んだら笑うぜ。

But you have probably heard that " there is a succer born every day" and so there will allways be somebody who is gullible enough to by anything, even your product.
でも、「カモはいくらでもいる」って聞いたことがあるだろ。キミの商品にだって騙されるやつは幾らでもいるだろうけどね。
いや、ごもっとも。

で、このニセ医療装置ETAscanは日本で販売されている。販売しているのは、かつてMRAを取り扱っていたMasaru Emotoという人物である。

==>HADOアストレア(cache)

ビジネスモデルはおおよそニセ医療装置EPFXと同じで、「医療装置ではない」と付記することで、規制当局との係争を逃れようとしている:
【確認事項】 この「HADOアストレア」は、一般的に認知されている医学的な治療、診断を目的とするものではありません。弊社の波動的な考え方、知識を身につけていただいた方(会員制)だけがお使いいただけます。
そして、価格は高め設定で、"カウンセラー"を開業しようとする人々を対象としている:
IHM特別ご提供パッケージ価格 ¥1,995,000円(税込み)
それらしいトレーニングと資格を用意するところもEPFXと同じ:
6日間のカウンセラー養成講座を行っております。終了時にはカウンセラーの認定資格が授与されます。
違うと思われる点は、コミッション(販売手数料)によるWilliam NelsonのようなEPFX販売ネットワークが見当たらないこと。


おまけ:こんな特徴があったらニセ医療装置かも

ついでに、quackwatchにあった記事:
[Signs of a Quack Device (いんちき医療装置のしるし) on QuackWatch]

How can you tell whether a medical device will live up to the claims made for it? Bob McCoy, curator of the Museum of Questionable Medical Devices, provides tips in his book Quack! Tales of Medical Fraud. You should be suspicious if:

ある医療装置が主張通りのものか、どうやったらわかるだろうか? Museum of Questionable Medical Devices(いんちき医療装置博物館)の学芸員Bob McCoyは、自著"Quack! Tales of Medical Fraud"(いんちき! 医療詐欺の物語)で、tipsを挙げている。こんな医療装置は疑うべき:

  1. 通常科学者によって検出できない、ほとんど知られていないエネルギーを使っている
  2. 何kmも離れたところにいる人を診断・治療できる
  3. 何だかわからないが、科学的に聞こえる名前を持っている
  4. "世界的に有名"な医者によって発明されたと主張されるが、その医者は実際には知られていない。
  5. 何の目的に使われているのかわからない発光体がついている
  6. 実用的な目的のないノブやダイアルがついている
  7. それは、あなたの体をゆする・ガタガタする・回転させる・吸う・衝撃を与える・温める
  8. おそらく、何でも治療できる
  9. 通販か特別な販売会でしか手に入らない
  10. 通常の医院ではお目にかかれない
  11. 製造業者は、その装置がどうやって、あるいは何故機能するのか、はっきりわかっていない
  12. 結果を得るために、患者は特定の状態のときだけ、あるいは通常ではない時にのみ使わなければならない
  13. 何も悪いところがなくても、使うように提案される
  14. FDAが認可していない

5.と6.と7.は旧世紀の香りが強く、ETAscanにはあてはまっていない。意味もなく多くのLEDがついていて点滅したり、いっぱいレバーやダイアルがある方が、子供時代を怪獣映画や特撮で過ごした老人たちには受けそうだが...

posted by Kumicit at 2008/08/03 00:01 | Comment(3) | TrackBack(0) | Quackery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いんちき医療装置の特徴の5, 6ですが、いまだに残っているものもあります。
今も残るラジオニクスとか。
http://www.omnijapan.co.jp/radionix/index.htm
「波動治療器」などで検索してヒットするインチキな機械も小さなわりにスイッチ類が多いものがあります。
エントリ中に紹介されているポーランドのOberonも昔ながらのインチキ医療機器のスタイルを継承していますね。
Posted by 町田 at 2008/08/03 12:51
確かに、まだまだボタンやらツマミやらLEDやらの多いものが見つかりますね。大人の中に眠る子供心をくすぐるオモチャなデザインの"ソフィア"とか。

最近のニセ医療装置は、PC画面に表示するようになってきているので、むしろ意味のないグラフィックス表示やパラメータ設定ということなってきたかもしれません。
Posted by Kumicit 管理者コメント at 2008/08/04 08:47
波動であるか否かは置いといて、その波動と言われる得体のしれないパワーを体験したことはおありでしょうか?

出来ましたら、私のパワーを見て頂き感想をお聞かせいただけませんでしょうか・

私は機械は使いませんが、波動測定器を探しています。
本当に測定できるのであれば、欲しいと思っています。

千葉県船橋市中野木1-21-3
田中健
090-3194-7359
Posted by 田中 健 at 2019/07/17 01:38
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