2005/12/10

ID理論の数学担当Dembskiを読む(2)神の作品=デザインを検出する

前のエントリに引き続いて、数学担当Dr. William DembskiのScience and Design (科学とデザイン)(1998年10月1日)を読んでいく。

今回は、デザインを検出する"複雑さ-指定(Complexity-Specification)について。

"complexity-specification(複雑さ-指定)でデザインを検出するDr. Dembski

デザインの検出基準として、Dr. Dembskiは、後に"Specified Complexity(指定された複雑さ)"という用語を使うようになる概念、"complexity-specification(複雑さ-指定)"を提唱する。それは、あるものがデザインされたものであると言うには

  • 複雑である: 偶然では創りえない
  • 意味がある: 

が備わっていなければないというもの。

ただ、「意味がある=指定された(Specified)」の定義は直感的なものでしかない。Dr. Dembskiはここで、このドキュメントが書かれた1998年の前年に公開された映画「コンタクト」を例に説明する。

The SETI researchers in Contact found the following signal:

映画コンタクトのSETI研究者は次のような信号を見つけた:

11011101111101111111011111111111011111111111110111111111111111
11011111111111111111110111111111111111111111110111111111111111
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1111111111

In this sequence of 1126 bits, 1’s correspond to beats and 0’s to pauses. This sequence represents the prime numbers from 2 to 101,where a given prime number is represented by the corresponding number of beats (i.e., 1’s), and the individual prime numbers are separated by pauses (i.e., 0’s).

1126ビットのこの系列では、1はビートに、0はポーズに相当している。、この系列は2から101までの素数に対応しており、与えられた素数はビート(すなわち1)の数に対応し、個々の素数はポーズ(すなわち0)で区切られている。


と"Specification"の例として、地球外知性が発信した素数列を挙げる、こんな通信を受信したら、デザイン=意図されたものだと考えるだろうと。ただし、この"0"と"1"の並びを10進数で書くと
2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, 53, 61, 67, 71, 73, 79, 83, 89, 97, 101

となっていて、"59"が抜けている[J. Shallit and W. Elsberry, 2004 (Amazon)]ので、"Dembskiの間抜け素数列"と呼ばれている(かどうかは定かではない)。2002年の時点のDr.Dembskiの本("No Free Lunch"の143〜144ページ)にも同じ間抜けがある。

間抜けではあるが、十分に意味ありげな数列なので
The SETI researchers in Contact took this signal as decisive confirmation of an extraterrestrial intelligence. What is it about this signal that decisively indicates design? Whenever we infer design, we must establish two things--complexity and specification. Complexity ensures that the object in question is not so simple that it can readily be explained by chance. Specification ensures that this object exhibits the type of pattern that is the trademark of intelligence.

映画コンタクトのSETI研究者はこの信号を地球外知性の決定的証拠と判断した。この信号の何が決定的にデザインを示すのだろうか?我々がデザインについて推論するなら、いつでも、複雑さと指定という2点を備えているか確かめなければならない。複雑さは、問われているものが偶然という理由で説明できてしまうような単純なものでないことを保証する。"指定"はこのものがインテリジェンスの特徴であるパターンの型を示していることを保証する。
ということで、"Specification"と判断されると、Dr.Dembskiは言う。

この例が示すことは、Dr.Dembskiの言う"Specitication"であるか否かの判断が、経験的にしか行えないということだ。
2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, 53, 59, 61, 67, 71, 73, 79, 83, 89, 97, 101
という正しい素数列なら"Specification"だという基準で、地球外知性をさがしていたら、"Dembskiの間抜け素数列"を見逃すだろう。

ただし、そのことをDr. Dembskiは問題にしていない。何故なら、このドキュメントの末尾に次のように書いているからだ。
Martin Heidegger remarked in Being and Time that "a science’s level of development is determined by the extent to which it is capable of a crisis in its basic concepts." The basic concepts with which science has operated these last several hundred years are no longer adequate, certainly not in an information age, certainly not in an age where design is empirically detectable. Science faces a crisis of basic concepts. The way out of this crisis is to expand science to include design. To admit design into science is to liberate science, freeing it from restrictions that can no longer be justified.

マーチン・ハイデッガーは"Being and Time"(存在と時間)[訳注:英語版,日本語版]で、「科学の発展レベルは基本概念にある危機を扱える範囲によって決まる。」と書いた。過去数百年にわたって科学ととともに機能してきた基本概念はもはや適切ではない。特に情報時代において、そして特にデザインが経験的に検出できる時代においては。科学は基本概念の危機に直面している。この危機から脱出する方法は科学を拡張してデザインを取り入れることだ。科学にデザインを取り込むことを認めることが科学を自由にし、もはや正当ではない制約から解放することになるのだ。

Dr. Dembskiは経験的に(empirically)に検出できることをポジティブな意味に使っている。

さて、ここまで見てくると、Dr. Dembskiがまったく言葉にしていない暗黙の前提があることに気づく。それは「complexity-specification criterion (複雑さ指定評価基準)によって、デザインではないと判定されたものには、インテリジェント・デザイナーは直接介入していない」という前提だ。これを担保するのは、「現象を同程度うまく説明する仮説があるなら、よりシンプルな方を選ぶべきである」という「オッカムの剃刀」(wiki)だけだ。
これが保証されないと、あらゆる自然現象に対してインテリジェント・デザイナーの直接介入があったかもしれないという疑問が出てしまう。そして、その疑問は決して解決できない。"自然法則に則ったかのように"介入してきたかどうかは科学的には判断できないからだ。Dr. Dembskiが気にしていないのは、インテリジェント・デザイナーが聖書に記述される神様であるという信仰によるものだろう。聖書に記された神様はそんないたずらはしないと。

複雑さ

複雑さの定義は自明なようで、考えるとよくわからなくなる。Dr. Dembskiはこの複雑さについてこのドキュメントには何も書いていない。

複雑さの定義としては、Kolmogorov complexity(wiki)が有名。ある文字列の複雑さは、その文字列を生成するために必要な最小のプログラムの大きさと定義するもの。プログラミング言語仕様に依存しないように、チューリングマシン(wiki)を前提にする。[J. Shallit and W. Elsberry, 2004 (Amazon)]は、さらにUnixのCompressコマンドで圧縮したサイズで測定するという方法もあるよと、Dr.Dembskiを揶揄っている。
これらの方法だと、経験的な複雑さとはまったく違った複雑さの判定がなされるだろう。

このあたりのことをDr. Dembskiはわかっていて、避けているのかもしれない。

いずれにせよ、経験的に判断するしかない"Specification"と、定義すらあやうい"Complexity"という評価基準で、Dr. Dembskiはデザインを検出する。

[次のエントリへ続く...]


posted by Kumicit at 2005/12/10 13:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | Dembski | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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