- [第1段階] ある現象が自然法則と確率過程で説明できないことの証明して、
- [科学の枠内] 論理やモデルが正しいか間違っているかはともかくも、科学の範囲内での
- [疑似科学] デザインや"指定された複雑さ"(Specified Comlexity(などインテリジェント・デザインの疑似科学による
- [科学の枠内] 論理やモデルが正しいか間違っているかはともかくも、科学の範囲内での
- [第2段階] それはインテリジェント・デザイナーによるデザインである
反証不可能=証明不可能な疑似科学
インテリジェント・デザインの理論家たちDr. William Dembski, Dr. Michael Behe, Dr. Jonathan Wellsなどの中で、もっとも科学の枠内にとどまっていると思われるのが生化学担当Dr. Michael Beheだ。
とにもかくにも、科学の枠内で査読のある学術誌に論文を出す一方、疑似科学ドキュメントを執筆するDr. Michael Beheの書いたものを見てみよう。
科学の枠内のDr. Michael Behe
インテリジェント・デザインの[第1段階][科学の枠内]にとどまるDr. Michaerl Beheの論文が査読つきのまっとうな学術誌に掲載されている。
Michael J. Behe and David W. Snoke: " Simulating evolution by gene duplication of protein features that require multiple amino acid residues", Protein Sci., 13, 2651-2664, 2004.(Web Full Text)
"複数の突然変異が同時に起きないと進化できない"とDr. Michael Beheが主張するタンパク質機能について、シミュレーションモデルを作って確率の小ささを評価したものだそうだ。
Gene duplication is thought to be a major source of evolutionary innovation because it allows one copy of a gene to mutate and explore genetic space while the other copy continues to fulfill the original function. Models of the process often implicitly assume that a single mutation to the duplicated gene can confer a new selectable property. Yet some protein features, such as disulfide bonds or ligand binding sites, require the participation of two or more amino acid residues, which could require several mutations. Here we model the evolution of such protein features by what we consider to be the conceptually simplest route—point mutation in duplicated genes. We show that for very large population sizes N, where at steady state in the absence of selection the population would be expected to contain one or more duplicated alleles coding for the feature, the time to fixation in the population hovers near the inverse of the point mutation rate, and varies sluggishly with the th root of 1/N, where is the number of nucleotide positions that must be mutated to produce the feature. At smaller population sizes, the time to fixation varies linearly with 1/N and exceeds the inverse of the point mutation rate. We conclude that, in general, to be fixed in 10^8 generations, the production of novel protein features that require the participation of two or more amino acid residues simply by multiple point mutations in duplicated genes would entail population sizes of no less than 10^9.
遺伝子の複製は、進化の革新の主要因であると考えられている。これは遺伝子のコピーが突然変異して遺伝子空間を探索する一方、もう一方のコピーは元の機能を一時しているからである。この過程のモデルは暗黙に、遺伝子複製における1回の突然変異により淘汰対象となる特性が実現すると仮定している。しかし、二硫化結合や配位子結合などのタンパク質の機構は、2つ以上のアミノ酸残基の参加が必要であり、これは複数の突然変異を必要とする。本論文で我々は、遺伝子の複製における概念的に最も単純なルートポイント突然変異と我々が考えているものによって、そのようなタンパク質の機能の進化をモデル化した。サイズNの大きな集団に対して、淘汰のない安定状態では、集団はその機能をコーディングした、ひとつかそれ以上の複製された対立遺伝子を含むと考えられ、集団で固定化される時間は逆方向ポイント突然変異率近くを変化し、機能を創りだすために突然変異したヌクレオチドの位置の数の1/Nの平方根でゆるやかに変化する。より小さな集団では、固定化の時間は1/Nに比例して変化し、逆方向のポイント突然変異率を上回る。新しいタンパク質機能を創りだすのに、遺伝子複製過程での単純なマルチポイント突然変異によって2つ以上のアミノ酸残基が参加することが必要であり、10^8世代で固定化するには、集団は10^9よりも大きいものではなければならないと我々は結論した。
論文に関係代名詞や接続詞でずるずると文をつなげるような悪文を書くな!!というのはさておき、学術論文ではある。
Dr. Michael Beheは
- "design"(デザイン)というインテリジェント・デザインを想起させる単語を一切使っていない。また、自らが提唱した"irreducible complexity"(還元不可能な複雑さ)という用語も使っていない。
- あくまでも、突然変異による進化の確率が小さいことを結論としている。決して、神様やインテリジェント・デザイナーには触れていない。
もちろん、査読つき論文誌に載ったことが正しいことを保証するものではない。科学の議論のベースに乗っただけだ。論理のジャンプや式変形ミスくらいはチェックされているという程度のこと。(あとで気がついたのだが、Kumicitのmanuscriptも式変形ミスありのままで査読を通過して、一流どころに載っちまったことがある。できれば葬り去りたいpaperだが、出ちまったものは消しようもない。)
実際、同じ論文誌にDr. Michael Beheの論文は思いっきり間違いだという論文が掲載されている。
Michael Lynch: "Simple evolutionary pathways to complex proteins", Protein Sci., 14, 2217-2225, 2005.(Web Abstract)
A recent paper in this journal has challenged the idea that complex adaptive features of proteins can be explained by known molecular, genetic, and evolutionary mechanisms. It is shown here that the conclusions of this prior work are an artifact of unwarranted biological assumptions, inappropriate mathematical modeling, and faulty logic. Numerous simple pathways exist by which adaptive multi-residue functions can evolve on time scales of a million years (or much less) in populations of only moderate size. Thus, the classical evolutionary trajectory of descent with modification is adequate to explain the diversification of protein functions.
タンパク質の複雑なadaptive性を、既知の分子と遺伝および進化メカニズムによって説明できるという考えに疑問を呈する論文が本誌に掲載された。本論文では、その論文が、証明されていない生物学的仮定と不適切な数学モデリングと間違った論理による結果であることを示す。百万年(あるいはさらに短期間)の時間スケールと、それほど大きくない規模の数があれば、adaptive マルチ残基機能を進化させる道筋が多数ある。系統の古典的な進化経路を修正すればタンパク質機能の多様性を適切に説明できる。
そして、さらにDr. Michael Beheの反論
Behe and Snoke: "A response to Michael Lynch", Protein Sci., 14, 2226-2227, 2005. (Web Full Text: 有償)
が載っている。ただし、これは"Response"であって、反撃論文ではない。
いずれにせよ、理科の教科書に載るような話ではない。もし、このごときで、理科の教科書に載せていたら、理科の教科書はペリー・ローダン(wiki)よりも長くなってしまうだろう(既に2300巻を超え、初代訳者の松谷健二先生も亡くなられて7年)。
次のエントリへつづく
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