- 卵子と精子から始まり受精・卵割・着床から誕生に至る過程のどの時点を以って、人間とみなすか?多くの文化、そして現在も、一貫性のない人々の反応を示している(Richard Weikartはこれを見なかったことにしているが)。生物学は境界線を引けない。
- 人間とそれ以外の動物の境界線。数万年前に数千個体にまで減少したことによって、種としての均一性が高く、近縁種が絶滅しているために、たまたま孤立して存在している人類。
しかし、「神の似姿で神によって創造された人間」という命題は、本当に「人間の尊厳を保証する」のだろうか? それは「近縁種がすべて絶滅しているために、ホモ・サピエンス・サピエンスが他の動物から隔絶した種になっている」という進化生物学的な僥倖と同等の僥倖によって確固たる保証に見えているだけではないのか?
ということで、毎度おなじみ、次のようなお遊びを始めよう
GDE世界
この宇宙とはつながりがない、次のようなGDE世界がある:
- この宇宙と物理法則などは同一である
- 超越的な神(God)が存在する
- 超越的な神(God)は6000年前にGED世界(GDE地球とGDE太陽とその他のGDE宇宙)
を創造した。 - God以外に、世界を創造するほどの力はないが、そこそこの超越的な力を持つDevilが存在する。
さらにGDE聖書が存在して:
- GDE聖書の執筆者はGodのインスピレーションによって執筆した。記述内容の正確性はGodの保証つき
- GDE聖書には、DNAにあるGod署名とDevil署名の識別方法が記載されている。
- GDE聖書は、人間をGodが創造したAdamとEveの子孫のみだと定義されている。
- GDE聖書は、人間について、生命の尊厳や愛などを規定している。
- GDE聖書は、Devilによって作られた人間のようなものが存在していると記述している。
- GDE聖書は、Devilによって作られた人間のようなものを滅ぼすべき対象として規定している
- GDE聖書は、善悪判断の基準であると規定している
- GDE世界の人間たちはGodを信仰し、GDE聖書を真実であると信じている。
想定1: E人間の発見
- DNA配列が全く異なる"人間"が発見された(これをE人間と呼称)
- 研究調査の結果、真性の人間(G人間と呼称)とE人間の表現形に違いがないことが判明した
- G人間とE人間の間に子孫は生まれないことが確認された。
- 塩基配列を"GDE聖書"に従って換字すると、G人間にはGodの署名が、E人間にはDevilの署名が見つかった
想定2: E人間最終処分法案審議中
キミはG人間であることがわかっている。G人間との間に子孫を作れないE人間は、生物学的にも別の種である。当然のごとく、キミはE人間最終処分法に賛成である。これはGodの意志に従うものである。
想定3: 恩人で後ろ盾になってくれている人がE人間だった
キミは彼/彼女から呼ばれた。彼/彼女が言うには、市販キットで自分自身を判定したところ、E人間であることがわかったという。DE人間対策センターに自ら出向くつもりであり、判定が確定すれば、悄然と死を受け入れるという。
遅かれ早かれ、彼/彼女がE人間と判明し、最終処分される日が来ることは避けられない。このGDE地球上に長く隠れていられる場所もない。それでも、各地のDE人間対策センターの対応力に限りがあるため、あと数ヶ月あるいは数年は何事もなく生きていけるはずだ。
もちろん、キミは彼/彼女を止めたりしない。そして、彼/彼女の死を悼むこともない。GDE聖書は恩義を仇で返すことは悪と規定しているが、E人間を殺すことはGodの意志にそうものである。
想定4: 幼馴染の彼女/彼がE人間だった
市販のGDE判別キットを使って、こっそり彼女/彼のDNAを検査した。結果はE人間だった。もちろん、市販キットの結果は最終判断ではなく、公的機関による公式検査によって、初めてE人間だと判定される。従って、確定ではない。
キミはもよりのDE人間対策センターに通報するだけでいい。通報の秘密は守られるので、彼女/彼に知られることはない。そこで誤判定でG人間であることが判明すれば、ハッピーだ。E人間であると確定すれば、そのまま最終処分される。
そこで、キミは通報した。彼女/彼は予定よりも6ヶ月早く、順序繰上げで、DNA検査を受けさせられた。そして、E人間であることが判明し、最終処分された。
Godの意志に従うなら、幼馴染の彼女/彼を殺すのが善である。キミはもちろんGodの意にかなう善を行ったことに満ち足りた気分になった。彼女/彼とは生物学的にも別種である。気にすることなどあるだろうか?
想定5: D人間の発見
E人間以外にDevilの被造物であるD人間が発見された:
- 真性の人間だと思われていた人々のDNAを調査中に、塩基配列を"GDE聖書"に従って換字すると、GodではなくDevilの署名を持つものが見つかった(これをD人間と呼称)
- 研究調査の結果、G人間とD人間のDNAの差異は個人差を除き、God署名とDevil署名だけだった。
- 真性の人間(G人間)とD人間の表現形に違いがないことが判明した
- G人間とD人間の間に子孫は生まれることが確認された。
想定6: D人間最終処分法案審議中
キミはG人間であることがわかっている。当然のごとく、D人間最終処分法に賛成である。これはGodの意志に従うものである。
想定7: 嫌な上司がD人間だった
市販のGDE判別キットを使って、こっそり嫌な上司のDNAを検査した。結果はD人間だった。もちろん、市販キットの結果は最終判断ではなく、公的機関による公式検査によって、初めてD人間だと判定される。従って、確定ではない。
そこで、キミは通報した。嫌な上司は予定よりも6ヶ月早く、順序繰上げで、DNA検査を受けさせられた。そして、D人間であることが判明し、最終処分された。
嫌なやつという理由でG人間を殺すことは罪だとGDE聖書は規定しているが、D人間を殺すことはGodの意志にそうものである。キミはもちろんGodの意にかなう善を行ったことに満ち足りた気分になった。
想定8: 殺人か善行か
女性を強姦の上、殺害した男性が不起訴になった。女性がD人間であり、男性がG人間であることが判明したためである。キミは不起訴と判断した検察を支持した。強姦を罪だとGDE聖書は規定しているが、D人間を殺すことはGodの意志にそうものだからである。
想定9: GxDy断種法案審議中
D人間の血がワンドロップでも混じっている(GxDyと呼称)者に、断種手術を義務付ける法案が審議中である。キミはこの法案を支持した。GxDy人間はGodの被造物でもあるので、最終処分するわけにはいかないが、D人間を絶滅させることはGodの意志にそうものだからである。
想定10:キミはG7D1だった
お約束のオチが必要なので、最後は曽祖父母のひとりがD人間だったというG7D1にしてみよう。
ゲノム検査と家系調査により、キミはG7D1であることが判明した。キミはただちに断種手術を受けた。D人間を絶滅させることはGodの意志にそうものだからである。
Godの勝利・Devilの敗北
Devilは完敗した:
- 見た目で区別がつかない異種生物であるE人間を送り込んだが、G人間たちはE人間の絶滅を決定し、実行した。
- これに関して、G人間の社会に意見対立・抗争は起きなかった。
- G人間個人の心の中にいかなる葛藤も生じなかった。
- 生物種としても同じであるD人間を送り込んだが、G人間たちはD人間の絶滅を決定し、実行した。
- これに関して、G人間の社会に意見対立・抗争は起きなかった。
- G人間個人の心の中にいかなる葛藤も生じなかった。
以上のような想定の元では、「神の似姿で神によって創造された人間という命題によって、人間の尊厳が保証される」は正しそうである。