2008/09/13

インテリジェントデザイン支持者の言うことを知らないかもしれない、インテリジェントデザインの父

インテリジェントデザインの父たるPhillip Johnsonは、2インテリジェントデザインはGod of the gaps詭弁であるという主張に対抗する記事を2008年5月に書いた。その中で、神の介入を神の職人としての力量の低さと見る人々に対して、次のような対抗議論を持ち出した:
The need to interfere, according to theological naturalism, is an indication of an incompetent designer -- as when, for example, an automobile has to be recalled by the manufacturer. By this standard, I suppose that the need for the incarnation of God in Jesus is evidence of a blunder of the worst kind, compared to which the need to provide the information stored in DNA is a trivial matter.

神学的自然主義によれば、たとえば、自動車がメーカーによってリコールになったら、それは設計者の無能を意味することで、それが解決すべき矛盾である。この基準にしたがえば、神の化身たるイエスの必要性は、最悪の種類の大失敗の証拠になり、これに比べれば、DNAに格納される情報を供給する必要性など些細なものになるだろう。

[Phillip Johnson: "Science Futures" (2008/05) on Touch Stone]
Phillip Johnsonはキリスト教徒として素晴らしい攻撃を思いついたと思ったかもしれないが、これは創造論者たちによって撃墜される。

"若い地球の創造論者"たちは創造6日間で、神の創造行為は打ち止めだと主張している。また、"古い地球の創造論者"たちは、アダムとイブの創造を以って、神の創造行為は打ち止めだと主張している。インテリジェントデザイン支持者たちも、ホモサピエンスサピエンスの登場以降のデザインイベントを認めていない。いずれも、キリストにまつわる奇跡群と、生物進化あるいは創造に関する神の介入は別物として扱っている。したがって、このPhillip Johnsonの主張は自爆攻撃になる。

==>忘却からぼ帰還:追加創造 Again (2008/07/25)
==>忘却からぼ帰還:追加創造を否定する者たち (2006/02/24)

Phillip Johnsonは創造論者やインテリジェントデザイン支持者たちの主張をあまり知っているわけではないようだ。


さらに神の介入を否定する有神論的進化論者の動機について、Phillip Johnsonは次のように述べる:
Another motive for adhering to theological naturalism is a desire to protect God from having to take responsibility for the nasty things in nature. It is all very well to give God credit for designing the beautiful things, but what kind of God would have designed the mosquito? I fail to see, however, how theological naturalism protects God from responsibility for everything that exists. Granted that God created by natural laws, should he not have designed the laws so that mosquitoes would not come into existence?

神学的自然主義に固執するもう一つの動機は、神を自然で汚いものに対する責任から守りたいという願望である。神に美しいものを設計したとするのは良いことだが、神はどんな種類の蚊を設計しただろうか? しかし、私は神学的自然主義によって、神を存在するすべてのものいついての責任から守るとは思えない。仮に神が自然法則よって創造したとするなら、神は蚊が存在えないように自然法則を設計すべきではなかったか?

[Phillip Johnson: "Science Futures" (2008/05) on Touch Stone]
しかし、これはインテリジェントデザイン支持者に対する批判にしかなっていない。

たとえば、インテリジェントデザイン理論家Dr. William Dembskiはデザイナーが馬鹿である例としても有名なパンダの親指について、デザイナーが馬鹿なのではなく、それは突然変異によるものでデザインされたものではないと言う:
The first question that needs to be answered about the panda's thumb is whether it displays the clear marks of intelligence. The design theorist is not committed to every biological structure being designed. Mutation and section do operate in natural history to adapt organisms to their environments. Perhaps the panda's thumb is such an adaptation. Nonetheless, mutation and selection are incapable of generating highly specific, information-rich structures that pervade biology.

パンダの親指について、それがインテリジェンスの明確な徴であるかどうかにかかわらず、まず応えねばならない問題だろう。デザイン理論家はあらゆる生物構造がデザインされたと言うわけではない。自然の歴史において突然変異と淘汰が働いて、器官を環境に適応させる。おそらくパンダの親指はそのような適応のなのだ。しかしながら、突然変異と淘汰によっては、生物学に広がる高度に意味のある、情報に富んだ構造を生み出しえない。

[William Dembski: "Intelligent Design is not Optimal Design"]
デザイナーが馬鹿だと言われる生物の構造は、"デザイン"ではなく"突然変異と淘汰"という進化によるものだそうである。Phillip Johnsonはまず、インテリジェントデザイン支持者と有神論的進化論者の主張の差異をちゃんと見ておくべきだろう。

ちなみに"パンダの親指"とは、グールドが広めたネタで:
エンジニアの考え出す最良の考案も、歴史というものにはかなわない。パンダの真の親指は他の役割を振り当てられて別の機能をもつように特殊化しすぎていたから、物をつかめるような対向可能な指に変わることはできなくなっていた。それでパンダは手持ちの部品を使わねばならず、拡大した手首の骨で間にあわせるという、少々不体裁でもひとまず役に立つ解決方法で満足しなければならない始末になった。種子骨親指は技術者たちの競技で賞をとるようなものではない。マイケル・ギゼリンのことばを借りれば、それは間に合わせの工夫であって、すてきな新発明ではない。だがそれは立派に仕事をしているし、上記のような思いもよらない基盤から成り立ってものだからこそ、われわれの想像をいっそうかきたてるのだ。[グールド「パンダの親指」(訳本版)1986 P29]
タグ:id理論
posted by Kumicit at 2008/09/13 14:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック