Tikaalikは"首"が曲がるようになった。そして、失業したhyomandibulaは、"耳"で新しい仕事を得たという論文がNatureに掲載された。
Jason P. Downs, Edward B. Daeschler, Farish A. Jenkins & Neil H. Shubin, The cranial endoskeleton of Tiktaalik roseae Nature 455, 925-929 (16 October 2008)
これについて、Carl Zimmerが手頃な解説を書いていたので、紹介する:
[Carl Zimmer: "The Shoulder Bone’s Connected to the Ear Bone…" (2008/10/15) on The Loom]
我々の祖先が約3億6000万年前に岸辺へと移動したとき、海洋を泳ぐ魚から地上を歩く四足歩行へと進化するにあたって、多くの変化を経験した。その一つは、ヒレの代りに脚を必要としたことだ。古生物学者は、海にいた我々の祖先の脚の骨の進化の初期を記述する連続した化石を発見した。そして、長い骨が先に進化し、その後に手首と指のような骨が進化し、最後に十分に発達した脚が進化した過程を示した。しかし、多くの変化が同時に起きて、他の動物にみられない特徴を四足歩行動物にもたらした。たとえば四足歩行動物は、耳の中で振動できる小さな骨のおかげで、大気中の音を聴ける。それらの骨の最も初期に進化したものは鐙骨である。しかし、鐙骨はどこからともなく出現したものではない。
我々の耳の起源の新しい手がかりが、今日発行のNature誌に発表された。そのひとつは、Tiktaalikとして知られる、首や脚のようなヒレを持つ四足歩行の特徴を持つ3億7000万年前の魚類である。2006年にTiktaalikの発見者たちは最初に、四足歩行動物の背中の説明にちて論文発表した。しかし、頭蓋について発見の詳細については、わずかなスペースしか振り向けられなかった。そして今日、彼らはTiktaalikの頭蓋について発表した。
幾つかの点で、Tiktaalikの頭蓋は尚も魚のようだった。頭蓋には、前部と後部の間で曲げられるように中央部にヒンジがあった。四足歩行動物の進化の後の方では、ヒンジは堅くなり、それにより頭蓋を強化した。しかし、頭蓋の他の部分は既に、我々の頭蓋により近い形に進化していた。たとえば、我々に近縁の水生動物では、頭と肩を分離する首はない。その代りに、一連の骨があった。そのひとつであるoperculumと呼ばれる骨はエラをカバーしていた。えらぶたと頭蓋の間に、hyomandibulaと呼ばれるブーメラン形の骨がある。それに接続された幾つかの筋肉は、魚のエラのポンプ機能を助けていた。そして、魚が食べるとき開閉するように頭蓋の骨を強化していた。Tiktaalikでは、えらぶたが失われた。そして、hyomandibulaは結果として肩の部分との接続を失った。
これらの変化は、頭が肩から解放されたことで、Tiktaalikが頭をもっと動かせたことを示している。さらに、それはエラを通して多くの水をポンプでくみ出す機能を失った。進化のこの時点で、四足歩行動物の祖先は酸素を取り入れるのにエラにあまり依存しなくなっていた。浅い近海に生息していたTiktaalikは、空気を呼吸するために、力強い前脚を使って、頭を持ち上げていたのかもしれない。
そして、ひとたび、hyomandibulaが肩から解放されると、新たな役割のために特化するように進化可能になった。その他の化石から明らかなように、hyomandibulaは大気ちゅの振動を伝えることができる、頭蓋と接続された小さな骨へと進化したかもしれない。言い換えるなら、それは鐙骨になった。下図はこの変化の数段階を示す。
我々の耳の進化で、とってもクールなことは、それが数百万年をかけて、他の部品から組み上げられたことだ。Tiktaalikは約3億7000万年前に、どのように鐙骨が進化したのか理解するのの助けとなる。しかし、我々の頭蓋の中で振動を伝導える砧骨と槌骨という耳の中の骨がある。それらは、1億5000万年後に、顎の後ろで幾つかの骨から進化した。それらは古い仕事から解放されて、新たな仕事をすることが可能になった。耳は一夜漬けの作品などではなく、考えられないほど長い進化で調査された産物である。