2008/11/23

統計なんか使っていない能見正比古の血液型性格判断

能見正比古の「血液型人間学」を読んでみたら、統計なんか使っていなかった。

まずは、能見正比古は心理テストをしてない点:
1 のべ十五万人のアンケート

気質分類調査の科学性

血液型による気質の分類研究が人間科学の一環である以上、その研究方法も当然、一般の科学の研究方法に従っている。私の場合、数十年にわたり、おびただしい人間の行動を観察し、前節のようにそれを裏づける血液型分布の資料を収集し、仮説の組み立てを行なって来たが、実験に相当するものとしては、目下のところはアンケート調査が頼りである。

もちろん、今後は各分野の人々のご協力を得て、各種の行動実験、心理テストなども加えて行かねばならない

[能見正比古: "血液型人間学", サンケイ出版, 1973, p34][強調追加]
アンケートはとってるけど、心理テストはしてないことが明記されている。

そのアンケート調査も参考程度の扱いだと言う:
世論調査なら簡単だが、気質の問題だけに、それを反映する問題の作成が一苦労である。回答者がその質問の意図を知ってしまっても、正直な傾向が出ないこともある。今のところ、気質研究の基本は、やはり根気のいい観察分析、それに血液型分布率のような別の資料の分析を中心とすべきで、アンケート調査はあくまでも、補助的な参考資料として併用すべきであろう。

[能見正比古: "血液型人間学", サンケイ出版, 1973, p40.][強調追加]
何のことはない。能見正比古はアンケート結果すら、主たる材料にしていない。

しかも、そのアンケートはこんなもの:
これまでアンケートに応じていただいた方は成人の男女約二千五百人、高校生四百人、中学生を三年生と限って二千百人、大体五千人である。五千人といっても問題の内容は一定ではなく、三、四問に答えていただいた人から四〇問以上の回答をもらった人まで、さまざまである。問題ごとの回答者の合計、つまり延べ人員を概算すると、十五万人を越える。問題の種類も二百近くになった。

このようなアンケートは、心理学や経営学でも記名式にして集める場合は困難が多いとされている。だが新しい研究分野だけに、私はアンケートには神経質なほど厳密さを守ろうとしている。回答者には、住所氏名、生年月日は必ずご記入願っている。


[能見正比古: "血液型人間学", サンケイ出版, 1973, pp34-35.]
約400問をどういう人々にどれだけ質問したのか明記されていない。アンケート回答者をどうやって調達したかも書かれていない。回答拒否がどれだけあったかもわからない。種々雑多ばらばらなアンケートを、時々で色々聞いてみたという以上の系統性も見られない。

まったく、何をやったかが分からない。これだと、人気投票以上の意味を持たないネットアンケートにも劣る。

そして約400問のうち、"血液型人間学"に載せられた結果はわずかに10問。これだと、タイプ1エラーと言うより、Cherry Picking[論証に有利な事例をならべたてることで、普遍的な真理や政治的な妥当性を導こうとする論理上の誤謬、あるいは詭弁術]と言うべきもの。

さらに、これら10問もネタでやってるとしか思えないシロモノ。

--------------------------------------------------------
p.37 イライラをどういやすか 1642名
p.42 指名手配を受けたら 568名
p.44 おみやげは 642名
p.82 ユーレイをどう思うか 422名
p.133 あなたの寝つきは 1450名
p.139 お料理の腕は 451名
p.150 スキンシップ度 中学三年生1394名
p.181 子供について 未婚女性351名
p.199 胃と腸のどちらが弱いか 高校生150名を含む1589名
p.209 卓球のとくい・不とくい 男女社会人427名
--------------------------------------------------------
しかも、作為性ありありな解釈つき。ひどいのは p.199「第13図: 胃と腸のどちらが弱いか」
Nomi_fig13_1973.png

  1. 胃が弱い
  2. 腸が弱い
  3. どちらも弱い .... 除外
  4. どちらも強い .... 除外
なんと、1と2だけで比率を出して、差を強調している。「4. どちらも強い」が多ければ、そもそも「1. 胃が弱い」と「2.腸が弱い」は少数派の比較になってしまう。また、「1. 2. 3. =おなかが弱い」vs 「4. =おなかが強い」という分け方もできるのだが、それはあっさり無視している。あるいは、中間の1と2を除外して、「3. どちらも弱い」vs「4. =おなかが強い」を比べても構わないだろう。

さらに劣化したのがp.209「第14図: 卓球のとくい・不とくい」
Nomi_fig14_1973.png

  1. とくいなほう
  2. ふつう ........... 除外
  3. 不とくいなほう
ここでも「ふつう」が除外されている。「ふつう」が圧倒的に多ければ、「とくいなほう」と「不とくいな方」は誤差程度のものになる。しかし、「ふつう」がどれだけいたのか記載ない。何か都合が悪い数字だったのかもしれない。


選択肢の恣意的な取扱いもある。たとえば、p.42の例「指名手配を受けたら」:

  1. 各地を転々と逃げまわる
  2. どうともなれとジッとしている
  3. 人里はなれた山の中へ逃げ込む
  4. 親しい人に、かくまってもらう
これは色んな組み合わせで解釈できる。どれか差が大きいものがあれば、いい。たとえば..

  • 「2. 3. 4.=一定の場所で動かない」vs「1. 動き回る」
  • 「2. =諦める」vs「1. 3. 4.=諦めない」
  • 「3. =一人になる」vs「1. 2. 4.=まわりに人がいる」
  • 「4. =親しい人を頼る」vs「1. 2. 3.=頼らない」
  • 「1. 3. =自分を知っている人がいない」vs「2. 4. 自分を知っている人がいる」
能見正比古は、差の目立った「4. =親しい人を頼る vs 1. 2. 3.=頼らない」を後付けで採用している。

さらに、劣化したのがp.37の例「イライラをどういやすか」:

  1. 親しい相手とのたわいないおしゃべり
  2. テレビか音楽鑑賞
  3. あき地、川岸、公園、屋上など人けのない場所で時間をすごす
  4. 犬猫、小鳥、人形などペットを相手
  5. 何かの趣味や手仕事などに打ち込む
  6. 何とか寝てしまおうとする
これは色んな組み合わせで解釈できる。どれか差が大きいものがあれば、いい。たとえば..

  • 「1. =人を相手にする」vs「2. 3. 4. 5. 6.=人を相手にしない」
  • 「1. 4. =しゃべる」vs「2. 3. 5. 6.=しゃべらない」
  • 「6. 寝る」vs「1. 2. 3. 4. 5. 6.=寝ない」
能見正比古は、差の目立った「3. 5.=人けをさける」を後付けで採用している。が、これはかなり無理な解釈だろう。1.以外はすべて「人けをさける」と解釈できるからだ。

こんな例まで持ち出したということは、アンケート調査から明瞭な差異をほとんど見出せなかったのかもしれない。

いずれにせよ、「アンケート調査はあくまでも、補助的な参考資料」という扱いなので、都合のよい数字だけを紹介してるだけなのだろう。実際、「有意差」すら論じていないので、統計として扱う気はなかったことは明らか。


タグ:Blood type
posted by Kumicit at 2008/11/23 00:00 | Comment(3) | TrackBack(1) | Others | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
よりよい人間関係を築くための参考にしていただければ幸いです。願わくば読者の皆さんの観察と考察も充分に加えて活用してくだされば、より一層有意義なものになろうかと存じます。・・・・とまあそのような意思を能見親子一連の著書から僕は感じ取りました。不要と思える部分は読み飛ばしちゃって、なるほど、と思える所だけピックアップするのがよろしいかと。
Posted by 熟れ戯書戸悶 at 2012/01/05 13:10
血液型占いというのは実はもっと怪しい物ですよ。
まずその能見正比古という人も中国出身です。
そしてA型というのは数千年前に中国大陸や朝鮮半島から来た弥生人に多いんです。
そしてB型が多いのが日本古来から住んでいる縄文人、すなわち生粋の日本人なわけです。
つまり、中国からやってきた外来人種に対し良い印象を持たせ、古来からの日本人種の縄文人に悪い印象を植え付ける。
それくらい怪しいものなんですよ血液型占いってのは。
だからマスゴミも肩を入れて異常な程宣伝してたわけです。
Posted by 名も無き忘却からの帰還者 at 2012/07/21 23:41
民族を識別できるほどの血液型の偏りは東アジア・東南アジアには見られない。
そのなかでは、近隣に比べて、日本はA型が多め、B型が少なめ。
O A B AB
Japanese 30 38 22 10
Koreans 28 32 31 10
Chinese-Canton 46 23 25 6
Chinese-Peking 29 27 32 13
Malasians 62 18 20 0
Philippinos 45 22 27 6
Vietnamese 42 22 30 5
[ http://www.bloodbook.com/world-abo.html]


能見正比古はB型(決定版血液型ここまでわかる愛情学, 決定版血液型ピタリとわかる相性, ...などのプロフィール記載)。そこそこ、B型も世下げに書いていたりする。

>これが、他の文明に接すると、O型は学習性が高く、A型は応用改良に
>すぐれた才能を持っているので、いっぺんに技術化は進むが、技芸面
>での創意開発では、どうしてもB型入り社会におくれをとりがちとなる。
>
>ヨーロッパは先進文明国を誇るが、これには多分に西洋史のウソがある。
>もとをただせば、中近東や北アフリカ、B型の率の高いイスラム世界の
>文明を輸入したものである。
>
>[能見正比古: 血液型人間学 pp.47-48 ,1973]
Posted by Kumicit 管理者コメント at 2012/07/30 09:16
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