2008/12/14

創造論者が使ってはいけない論(第24回) -- 失われた太陽ニュートリノは若い太陽の証明 -- [まあまとも]

Answers in Genesisの創造論者が絶対に使ってはいけない論

「失われた太陽ニュートリノは、太陽放射が重力崩壊によるものであることを証明し、若い太陽の証明となる」

これは、太陽からニュートリノが予測された数のわずか3分の1しか見つからないという苛立たしい問題についてである。さらに、認められている素粒子物理理論ではニュートリノの静止質量はゼロだが、それだとひとつのフレーバと別のフレーバーの間で振動することを禁止する。従って、使えるデータから、一部の創造論者たちは太陽は1/3は核反応で、2/3は重力崩壊がエネルギー源になっていると提案した。それによれば、太陽の年齢は45億歳よりもはるかに若くなければならない。

しかし、新たな実験により「失われた」フレーバーを検出できるようになり、振動の証拠が得られている。これは、結局、ニュートリノがわずかながら静止質量をもつことを意味する(実験データは理論よりも優先する)。従って、創造論者たちは失われたニュートリノ問題を持ち出して、核融合が太陽の主たるエネルギー源であることを否定すべきではない。この論点は"若い地球"を示すものとしては使えない。そして古い地球についても。
「太陽放射が重力崩壊によるもの」というラインに橋頭保を築いてしまうと、通常の物理学と敵対することになり、自らの主張が誤りであることが示されれば、ただちに太陽が古くなってしまう。これを避けようとしているようでもある。

言っていることは特に問題なし。


Mark Isaakの創造論者の主張



失われたニュートリノは広く使われる創造論ネタであるようで、創造論者の主張にも項目がある:
Claim CE301:
The number of neutrinos detected coming from the sun is only about a third of what is predicted by standard solar models. This indicates a lack of nuclear fusion in the sun, supporting gravitational collapse theory.

太陽からのニュートリノの検出数は、標準的な太陽モデルによって予測される数の1/3程度である。これは太陽内での核融合が起きていないことを示しており、重力崩壊理論を支持するものである。

Source:
Davies, Keith. 1996. Evidences for a young sun. Impact 276 (June).

Response:

  1. 新しい、感度の高いニュートリノ検出器は、予期されるより少ない数の電子ニュートリノを検出した。しかし、太陽からのニュートリノの数は予測通りだった。これは、ニュートリノが太陽から地球へ来る途中に、量子力学的効果により、フレーバーを変化させたからである。[Ahmad et al. 2002]。

Links:

  1. Johansson, Sverker, 1998. The Solar FAQ.

References:

  1. Ahmad, Q. R. et al. (SNO Collaboration). 2002. Direct evidence for neutrino flavor transformation from neutral-current interactions in the Sudbury Neutrino Observatory. Physical Review Letters 89: 011301.


コメント



Answers in Genesisの記述は、「Mark Isaakの創造論者の主張」と同じであり、まとも。

なお、Answers in Genssi分裂後の豪州側であるCreaion Ministries Internationalの太陽の年齢対策は以下のように"Appearance of Age"である。すなわち、太陽は平衡状態で創造された:
Also, some argue for long ages on the basis that the calculated time for a photon to travel from the [solar] core to the surface (actually by absorption and reradiation) exceeds the biblical time scale. But this is explained if the main purpose of fusion is STABILITY - producing enough energy to balance that lost from the surface, that is, the sun was created in a STEADY STATE CONDITION, with the outward pressure generated by fusion matching the inward gravitational pressure, maintaining a constant temperature profile. This means that it could immediately fulfill its function as the 'greater light,' [Genesis 1:16] and keep shining at a constant rate. It is no different from believing that God created Adam with oxygen in his bloodstream in his extremities, even though it now takes some time for oxygen to diffuse through the alveoli in the lungs, then be transported by the blood.

光子が太陽中心核から太陽表面へ到達するの(実際には吸収と再放射)に要する時間の推定が、聖書的時間を上回ることを、宇宙の年齢が古いことの論拠とする者がいる。しかし、核融合の主たる目的が安定性、すなわち太陽表面から失われるエネルギーをバランスさせることにあるなら、これは次のように説明できる。太陽は外向きの核融合による圧力と内向きの重力がマッチして、一定温度プロファイルを実現する安定状態として創造された。これは、大きな光[創世記1章16節]として創造直後から機能し、一定の輝きを維持したことを意味する。これは、実際には、肺の肺胞を通じ、血液によって運ばれてして酸素が体中に届くまでに、ある程度の時間がかかるが、アダムは血流末端まで酸素がある状態で創造されたと信じるのと同様である。

[Sarfati, J., 2004, Refuting Compromise: A Biblical and Scientific Refutation of "Progressive Creationism" (Billions of Years) as Popularized by Astronomer Hugh Ross, Master Books, Green Forest, Arkansas, USA.
via No Answers in Genesis]
これに従えば、観測上は太陽は50億歳に見えても問題なくなる。

posted by Kumicit at 2008/12/14 09:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | Creationism | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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