この「創造論者が使ってはいけない論」はAnswers in Genesis(分裂前)がどう屁理屈をこねても維持不可能になって放棄した主張や、もともと採用していない主張をまとめたものである。ただし、基本的に"若い地球の創造論"を維持することが大前提であるため、「創造論者が使ってはいけない論」もまた、科学的に変なものも多い。振り返ってみると...
復習
ひとつの特徴は、"若い地球の創造論"の証拠だと主張されたが、既に否定されてしまったネタを挙げていること。特に有名なPaluxyの足跡化石や地層を貫く人間の化石など、多くの創造論者が語ったネタも放棄していている:
- Paluxyの人間と恐竜の足跡化石
- 古い"地層に残されたカステネードロとカラベラスの人間の化石
- 日本のトロール漁船ずいよう丸がプレシオサウルスの死体を捕えた
- ウーリーマンモスは、ノアの大洪水で瞬時に凍った
- 月の塵の厚さは若い月を証明する
- 失われた太陽ニュートリノは若い太陽の証明
- NASAはヨシュアの長い日を証明した
続いて、「地球も宇宙も6000歳」や「ノアの洪水」を成り立たせるために考え出された屁理屈のいくつかを放棄している。特に創造科学の父たる今は亡きDr. Henry M. MorrisのVapor Canopyも、地上を焦熱化させるという問題を認めて放棄:
また、歴史改変な主張も放棄している:
そして、わりと名品なのが、「進化論に対する誤解」を正している項目。「自然選択による種形成」をAnswers in Genesisは創造論に取り込んでいるため、古典的な反進化論な主張を斬り捨てている:
一方で、"若い地球の創造論"を正しいと主張する前の防衛ラインは決してゆずらない:
- 有益な突然変異はない(稀にあるが、それは情報喪失だ)
- 新しい種が生まれたことがない(新しい種はあるが、それは"kind"の範囲内)
- 中間形態の化石は存在しない (とされるものは存在するが、それは両サイドのどっちかだ)
- 始祖鳥は捏造(本物の化石だが鳥類だ)
- 創造論者は小進化を信じるが、大進化を信じない
また、Vapor Canopyを放棄しても、ノアの洪水のメカニズムとして、アフォな主張(秒速数メートルで大陸が移動した)を持ち出す:
もちろん、地球も宇宙も6000歳という主張の根拠を聖書に置き続ける:
商売敵に対する名指しの批判は、今は亡きRon Wyattのみ:
その他、どうでもいいものが8つ:
- 熱力学第2法則は楽園追放後に始まった
- 女性は男性より肋骨が1本多い
- イエスはマリアから遺伝形質を受け継いだはずがない
- 地球中心説は聖書で教えられていて、太陽中心説は聖書に反する
- 驚くべき現代科学の展望が聖書に記されている
- 黄金の鎖が石炭の中から発見された
- 福音は星々にある
- 不当にも知識と呼ばれている科学とは進化のことを指している
情報喪失
Answers in GenesisとCreation Ministries Internatinalに分裂後も、ほとんどコンテンツは両サイトに掲載され続けている。この「創造論者が使ってはいけない論」も両方にある:
- Answers in Genesis - Arguments we think creationists should NOT use
- Creation Ministries International - Arguments we think creationists should NOT use
これらには差異があり、Creation Ministries Internationalにあって、Answers in Genesisにないものが4つある:
- NASA faked the moon landings. (NASAは月着陸を捏造した)
- Light was created in transit (恒星からの経路上の光も神は創造した)
- Laminin: an amazing look at how Jesus is holding each of us together
- Many of Carl Baugh’s creation ‘evidences' (Carl Baughの主張する創造論の証拠)
さらに、「創造論者が使ってはいけない論」に絡んだ創造論者Kent Hovind(脱税で有罪となり服役中)への反論記事もAnswers in Genesisから失われ、Creation Ministries Internationalに残っている。
これらAnswers in Genesisに起きた情報喪失について、そのうち、少し追いかけてみたい。
Institute for Creation Researchの主張との関係
"若い地球の創造論"は水利工学者Dr. Henry M. Morrisによって始まったと言っていいだろう。このDr. Henry M. Morrisが設立した"若い地球の創造論"ミニストリが、Institute for Creation Researchである。その主張は1974年初版の"Scietific Creationism"にまとめられている。
30年以上前のネタなので、今となっては古色蒼然たるものになり、「創造論者が使ってはいけない論」が、その主張のいくつかを否定している:
- 上空蒸気層(Vapor Canopy)
- ノアの洪水前は雨は降らなかった
- 恒星からの経路上の光も神は創造した[Creation Ministry International版のみ]
どうも、Answers in GenesisはInstitute for Creation Researchへの攻撃を抑制しているようだ。このあたりも、そのうち、もう少し詳しくて見ておきたい。
というわけで、もう少し、つづく...
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