- 統計なんか使っていない能見正比古の血液型性格判断 (2008/11/23)
能見正比古氏は、統計なんか使ってないし、ネット世論調査よりもあやしいアンケート[p.34]すら「補助的な参考資料として併用すべき」だと言う[p.40]。 - 判断がつかない血液型判断クイズはいかが? (2008/11/24)
能見正比古氏による血液型別の特徴の記述[pp.223-226]を並べ替えたら、超難問なクイズになってしまうというネタ。
まだまだ、色んなネタが転がっている「血液型人間学」から、今日は「民族性」について。
なんだか、めちゃくちゃな血液型と民族性
勇猛で愛嬌があり、どこかペーソスの漂うインデアン。このインデアンが血液型人類学からいうと、なかなか貴重な存在なのだ。というのは、かれらの血液型は、O型だけという、世界に類のない民族なのである。カナダのアルバータ州から米国モンタナあたりを居住圏としていたBlackfootは都合が悪いの無視したのか、知らなかったのか...
O型だけといっても近年は混血がいくぶん進んでいる。また北部など地域によってはO型とA型の混じりあう形をとる。だが、奥地へ行くほど、O型の比率が高まるのであって、アメリカの人類学者スナイダーの調査では、純血インデアンでO型92.3%、A型7%、その他の血液型が1%程度という報告もされている。白人侵入以前は恐らく100% O型であったろうと見る人類学者も少なくない。異論もあるようだが、私も、その説をとっている。
[能見正比古: 血液型人間学 p.46 ,1973]
Blackfoot (N. Am. Indian) O=17 A=82 B=0 AB=1白人侵入前のBlackfootの居住圏は...
[RACIAL & ETHNIC DISTRIBUTION of ABO BLOOD TYPES -- Bloodbook.com]
The Blackfoot were fiercely independent and very successful warriors whose territory stretched from the North Saskatchewan River along what is now Edmonton, Alberta in Canada, to the Yellowstone River of Montana, and from the Rocky Mountains and along the Saskatchewan River past Regina.地図に描いてみると、おおよそこんなかんじ:
[wikipedia:Blackfoot"]

Dennis O'Neilによればネイティブ集団のO型遺伝子比率は以下の通り:
Distribution of the O type blood in native populations of the world
(O型遺伝子を持つ人口比率)
[Dennis O'Neil
: "Distribution of Blood Types"]
続いて、O型だけだと部族レベル以上の国家はできないと言う能見正比古氏:
インデアンを見ていると、いたるところでO型気質をまる出しにしているように見える。まず、その集団性の固さである。西部劇を見ていても、ひとり荒野を行くガンマンはあっても、一匹狼や孤独のインデアンというのは、およそ想像しにくい。事実、白人侵攻に対してインデアンの示した驚くべき団結と抵抗は、歴史の記録にも明らかである。小規模ではあるが、Iroquois(イロコイ連邦)というのもあるし、部族間のコミュニケーションもちゃんとできていたようだが:
そのO型としての団結性は、じつは直接的で心情的な団結なのである。抽象的なルールで大きな社会を組織するものではない。だから集団の規模も、おのずと肌で感じとれる範囲にとどまる。
インデアンはアメリカ大陸に住み着いてから一万年以上というが、ついにインデアン統一国家を建設することができなかった。何百という小部族に分れ、ときには、すぐ隣接した部族どうしで言葉が通じなかったりする。
[能見正比古: 血液型人間学 pp.46-47 ,1973]
部族間で言語の違うインディアン社会で、平原のインディアン達は、指を使って会話する「指話法」(手話の一種)を発達させていた。例えば、両手の人差し指を立てて頭に掲げれば「バッファロー」、人差し指と人差し指の先を突き合わせれば「反対の?」といった具合に、これを用いて、何時間でも会話できた。19世紀スー族のアイアン・ホーク酋長は、「大精霊は、白人達には読み書きする力を与え、インディアン達には手と腕で話す力を与えた」と述べている。というか、同様の血液型構成(ほぼ100%がO型)である中南米インディオの
[wikipedia:インディアン]
ここから、行き当たりばったりに、「統一国家を建設することができなかった。何百という小部族に分れ」たアメリカン・インディアンとあまり状況が違っていないアボリジニを持ち出す能見正比古氏:
このOの集団にAが加わってくると、にわかに社会の組織化が進行してくるのだ。アボリジニはといえば:
インデアンについで血液型構成の特異な民族として、オーストラリア原住民があげられる。この民族は、ややO型が多いが、大体O型A型ほぼ半々という構成で、BとABはゼロに近い。
ヨーロッパの白人も、どちらかといえば、この系統で、BとABは例外的な存在だ。早期ヨーロッパ人とされるピレネー山中のバスク人など、やはりOとAだけといっていい。
[能見正比古: 血液型人間学 p.47 ,1973]
オーストラリアの地理的条件から、人種的に他の大陸と隔絶され、それらが混血を繰り返しながらオーストラリア全土に広まる過程で、様々な固有文化が派生したとされ、一括りにアボリジニといっても、言語だけでも250、部族は700を超えていた。今日では言語的な調査から26〜28程の系統に分類されているが、相互の文化的差異は多い。オーストラリア到着以後も、一部の集団ではパプア人やオーストロネシア人との部分的混血が見られる。なにがしたいのかわからない能見正比古氏である。
[wikipedia:アボリジニ]
そして、能見正比古氏のB型についての主張がまた笑わせてくれる:
オーストラリア原住民は、三百年ほど前にイギリスによって見出されたが、濠州大陸に渡来したのは二万年前と言われている。発見された時点で、全く石器時代のレベルの生活をしていた。OとAだけの社会では、どうも技術文明の面で期待できないようである。ご存知の人も多いだろうが例の獲物に当たらないときは手もとに返ってくるというブーメランは、彼らの傑作な発明だが、二万年かかって、技術開発がこれ一つでは、義理にもほめるわけにはいかない。B型のほぼいないインカとかアステカとかマヤとかは? ローマとギリシアとかは? というか中世欧州をなめてるね。
これが、他の文明に接すると、O型は学習性が高く、A型は応用改良にすぐれた才能を持っているので、いっぺんに技術化は進むが、技芸面での創意開発では、どうしてもB型入り社会におくれをとりがちとなる。
ヨーロッパは先進文明国を誇るが、これには多分に西洋史のウソがある。もとをただせば、中近東や北アフリカ、B型の率の高いイスラム世界の文明を輸入したものである。
[能見正比古: 血液型人間学 pp.47-48 ,1973]
能見正比古氏はモンゴルとジブシーを挙げて、遊牧民とB型を結びつけているのだが...
これまで調査された中で、B型が最も多く記録されたのは、モンゴル人及びジプシーで、いずれもB型が、ほぼ40%に達する。しかし同時にA型も20%前後を保ち、O-A民族のように単純な構成とはなっていない。アメリカン・インディアンのうち平原に居住なラコタ族が使っていたティピー(Tipi, Tepee)は移動用住居である。前述のアメリカン・インディアンBlackfootも移動していた。というか、そもそもアメリカ大陸のネイティブは陸続きだったと思われるベーリング海峡を越えて移動してきた人々では?
中国の北部や東北部(満州)あたりも、B型は30%を越えるといわれ、中近東やインドでもB型は多い。一般的にアジアはB型の率が高いと目されるが、これらの地域は、多数の人種が乱立して混在しているので、精密な血液型分布図を作る段階までいっていない。
モンゴル人とジプシーの共通点は。その移動性にある。これはO-A民族の定着性と好対照をなす。ことにジプシーの放浪生活はよく知られ、行動性の大きいB型気質とも符合する。
[能見正比古: 血液型人間学 p.48 ,1973]
一方、北インド起源のロマニ系に由来する移動型民族であるロマ人(旧称ジプシー)は、もとは北インドの軍隊で、紀元1000〜1050年ころに移動を始めたとされる[source]。それまでは放浪の民ではなかったようである。
せいぜいがとこ、例え話
能見正比古氏の血液型と民族性の話は、なんかめちゃくちゃである。真面目に民族性について話しているとは思えない。
思いつきというよりも、(1925年生まれの能見正比古氏にとってファミリアな外国についてのネタを使った)例え話がいいとこか? 記述を逆順にしてみると...
- 「オーストラリア原住民」のように「O型」や「A型」は「技芸面での創意開発では」「B型」に「おくれをとりがちとなる」
- 「モンゴル人とジプシー」のように「B型気質」は「行動性」が「大きい」
- 「インデアン」のように、「O型としての団結性は、じつは直接的で心情的な団結なのである。抽象的なルールで大きな社会を組織するものではない。だから集団の規模も、おのずと肌で感じとれる範囲にとどまる。」
これでも、ろくでもないけどね。
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