2005/12/31

「猿が念力でモノを動かす」という二重誤認

たまには、百匹目の猿ネタをひとつ。といっても、「猿が念力でモノを動かす」と思い込んだ[誤認1]元ネタは2年前と古い。それに蹴りを入れたブログ記事が、元ネタを今年のものだと思い込んでいた[誤認2]というお話(2005年12月29日付けの「としぼうの雑記帳(msn版)「オノヨーコのクリスマスメッセージ」via 2005年12月31日付けの幻影随想「オノ・ヨーコからのクリスマスメッセージ」)

としぼうの雑記帳(msn版)
2005年12月29日付けの「オノヨーコのクリスマスメッセージ」にて
オノヨーコの発表した今年のクリスマスメッセージですが、気になる点が多い(赤い部分)のでつぶやいてみます。
私は、私たち人類は土壇場になって目を開いたのだと信じています。それは私たち自身と、この惑星を救うためにです。 まず最初の朗報は、二か月前にやってきました。ノースカロライナ州の科学者たちは、猿がモノを念力で動かせることを実証したのです。1匹の猿は100匹の猿に影響をおよぼす、と言われていますが、一匹の猿がモノを念力で動かすことができるのであれば、何百万人もの人々が力を合わせた場合、どのようなモノを動かせるか想像してみてください(私たちは山をも動かすことができるのです!)。軍事関係者達は、すぐにこの実験の意味に気が付きました。「これで我々は念力で敵を殺すことができる」と…。逆に、このパワーを、私たち自身の救済に使ってみてはどうでしょうか。私は、私たちがそうするだろうと信じています。
それからこの念力の実験、ヤフってもググってもソースが見つからないのは、単においらの検索スキルが低下しているからでしょうか?(英文で検索しろなんて無体なこといわないで下さいね。こんなステキな馬鹿ニュースが日本に入ってこないはずがないんだから) 今月のムーあたりで特集組んでいないだろうか。



まず、このメッセージはDream Power"という「ジョン・レノンとオノ・ヨーコ」を扱っているサイトに存在した(ここ)。しかし、このメッセージを引用している別サイトの記事を見ると、これは2003年12月発信の「オノ・ヨーコさんからのクリスマスメッセージ」とされている。従って、発信時期は2003年12月と考えてよいだろう。ただし、発信者が「オノ・ヨーコ」であるかどうかは本人に確認しない限りわからない。

続いて、この「オノ・ヨーコ」のメッセージにある「猿がモノを念力で動かせる」というネタ。メッセージ発信時期からすると、2003年10月に報道されていることになる。ちょっと古いが相当する記事がBBCのサイトに残っていた。記事は2003年10月13日付で:
Monkey brains control robot arms
猿の脳がロボットアームを操作

Rhesus monkeys have been taught to control a robot arm using brain signals alone.
Researchers at Duke University Medical Center in North Carolina said the animals appeared to operate the robot arm as if it were their own limb.

They believe the finding could eventually lead to the development of highly sophisticated false limbs for people who are paralysed.

The technology may also aid people with stroke and spinal cord damage.

The Duke team implanted an array of microelectrodes into the brains of two female rhesus macaque monkeys. They implanted 96 electrodes in one animal and 320 in the other.

They then analysed the signals given off by the electrodes as the animals were taught to use a joystick to both position a cursor over a target on a video screen and to grasp the joystick.

脳信号だけを使ってロボットアームを制御するようにアカゲザルを教育した。ノースカロライナのデューク大学メディカルセンターの研究者は、まるでそれが彼ら自身の手足であるように、ロボットアームを操作するように見えたと言った。

彼らは、この発見が麻痺した人々のための高度に洗練された義手義足の発展につながると信じている。

この技術は、脳卒中と脊髄損害の人々を救えるかもしれない。

デューク大学の研究チームは、多数の微小電極を2匹の雌のアカゲザルの脳に入れた。1匹には96本の電極を、もう1匹には320本の電極を入れた。

ジョイスティックを使ってビデオ画面の上に示されたターゲットの上にカーソルを持っていくことと、ジョイスティックをつかむことを教えた猿の電極からの信号を分析した。

別に念力などとは何の関係もなく、脳に電極を入れて、ロボットアームを操作させるという実験。ただし、この実験そのものがまっとうかどうかは不明。

2003年のクリスマスメッセージを書いた人は、これを念力だと思い込んだようだ。

追記 2006/1/1 03:15
黒影さんご指摘のとおりで、「サルを使った脳によるアーム操作実験」について国内でも報道されていました。
脳の信号で人工腕をコントロールする実験、サルで成功(Hotwired 2004/10/26)(アンドルー・シュウォーツ教授)
「脳でカーソルを動かす」実験、サルで成功(Hotwired 2002/3/13)(ブラウン大学ジョン・ドノヒュー氏)
脳信号でロボットアームを操作(NEDOレポート 2003/11/12) (デューク大学ミゲル・ニコレリス医学博士)
など多数。「NHKスペシャル 立花隆 最前線報告:サイボーグ技術が人類を変える」で扱われたり、「[ EP: end-point 科学に佇む心と身体] サイボーグと脳みそコントローラー (2005/11/7) 」で関連情報がまとめられていたりと、広く取り上げられていました。

とてもまっとうで、有意義な研究です。

追記 2006/1/3

buveryの日記:War Is Over」によれば、オノ・ヨーコの2003年11月27日の感謝祭のメッセージで英文が原文。話の流れの都合で、猿の念力や水伝を使ったらしい。

ちなみにネット上に残されたコピーを見ると
The first good news came two months ago, from North Carolina scientists who successfully made a monkey move an object psychokinetically. One monkey influences 100 monkies, as they say. But if one monkey can move things psychokinetically, imagine what millions of human beings can move together (We can move mountains!).
で、「念力」については原文でも「psychokinetically」となっている。

posted by Kumicit at 2005/12/31 21:01 | Comment(3) | TrackBack(0) | Hundredth Monkey | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
サルの念力ってなんだろうと思いつつ、意味が分からないのでスルーしていましたがこれでしたか。
自分のブログで関連ニュースを取り上げた事があったのに、まったく気付きませんでした。

このネタはWiredNewsに色々関連記事が載ってますよ。
2000年には1000キロの遠隔操作にも成功するなどかなりの成果を納めているので、いずれは義手に技術が生かされる日も来るでしょうね。
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20041028301.html
Posted by 黒影 at 2006/01/01 00:49
 お恥ずかしい限りです。

 おいらの誤認の言い訳としては、今年のクリスマスメッセージとして回ってきた中にヨーコのメッセージが混じっておりまして、今年のものだと疑いもしなかったのです。

 信じるな、疑え、といってるやつが信じてしまったという誠に馬鹿なお話でした。
Posted by としぼう at 2006/01/03 14:28
私も、オノ・ヨーコの英語の原文にはたどりつけませんでした。2003年のクリスマスでもなく、その1ヶ月前の感謝祭の英文メッセージだったとは。
Posted by Kumicit 管理者コメント at 2006/01/03 21:08
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/11202971
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック