2009/01/25

能見父子のゴミアンケート

「能見正比古:"血液型人間学"(1973)」を読むと、いかに血液型性格判断がいい加減なものかよくわかる。たとえば...

  • 統計なんか使っていない能見正比古の血液型性格判断 (2008/11/23)
    能見正比古氏は、統計なんか使ってないし、ネット世論調査よりもあやしいアンケート[p.34]すら「補助的な参考資料として併用すべき」だと言う[p.40]。

  • 判断がつかない血液型判断クイズはいかが? (2008/11/24)
    能見正比古氏による血液型別の特徴の記述[pp.223-226]を並べ替えたら、超難問なクイズになってしまうというネタ。

  • 能見正比古の血液型と民族性 (2008/12/20)

    能見正比古氏の血液型と民族性の話は、なんかめちゃくちゃである。真面目に民族性について話しているとは思えない。思いつきというよりも、(1925年生まれの能見正比古氏にとってファミリアな外国についてのネタを使った)例え話がいいところか。


その後のアンケートについて、草野直樹氏によれば、能見俊賢氏が次のように語っている:
サンプルはどんな人々によるカウントなのか。その問いに対する能見俊賢さんの回答は次のようになっています。
---どうやってアンケート調査しているのですか?
能見: 最初に私が出した本の愛読者の中からです。この読者の中で、特に『血液型に興味あり』という人がアンケートにも非常に協力的だろう、という考えで回答を募りました。地域的に言うと、全国から集めっていることになります。
[巨泉のこんなモノいらない!]

能見:二万人に及び気質アンケート調査をして、ここから本格的なデータの裏付けを始めたわけですね。
--- 二万人というのは、どういう形で選ばれたのですか?
能見: 当初は、一番てっとり早く、『血液型でわかる相性』の読者アンケート。普通の読者カードの返りとは較べ物にならないぐらいスゴく返ってくるわけです。そういう読者だから、次の情報を欲しがっていることもあって、こちらがアンケートを頼んでも、自分だけじゃなく家族や友達まで調べて....ある人は、アンケート用紙をコピーして、百枚くらい集めてくれたんですよ」
[血液型の迷路]
[草野直樹:"血液型性格判断の虚実", かもがわ出版, 1995, p.83]
明白に、バイアスかかりまくりなサンプルである。草野直樹氏はこれをバッサリ斬っている:
「本の愛読者」で「次の情報を欲しがって」いる協力者というのは、そのほとんどは能見式「人間学」の肯定者です。そうした人たちから「てっとり早く」「調べて」得られた「情報」などは、いくら「全国」から集めようが、はじめに能見さん父子の所見ありきで解釈する、バイアス(先入観)のかかったデータの拡大生産にしかなりません。サンプルを集めれば集めるほど、錯覚や妄信が積み重なった「調査結果」が出るだけなのです。

[草野直樹:"血液型性格判断の虚実", かもがわ出版, 1995, p.84]
まったく、ただのゴミなアンケートである。

能見俊賢氏の公式な立場と思われる『血液型人間学』 QA&活動報告では、サンプルについて、少し違った記述「最初に行なったアンケートはその発端は読者」をしている:
Q.血液型と性格の関係は科学的に証明されていないといわれていますがどうなんですか?

A.科学的証明とは、どのような形になれば認められたということになるのか?
ということを、まず考えなければならない面があると思います。

しかし、それはさておいても、能見正比古は、血液型と人間に関する数万単位のデータを取ってきました。その中で統計的有意差が認められたのは100件以上にのぼります。
もちろん、科学的統計手法によるデータです。
例えば多くの大学の研究室では数百のデータで、しかも数件の有意差が認められれば証明できたとします。
数値だけ比べても、能見のデータは明らかに証明したということになります。
...
また、読者のアンケート調査は統計データとして認められないと言う方もいます。
しかし、能見が最初に行なったアンケートはその発端は読者ですが、それは5000人の一部でかありません。
それよりも何よりも、各分野の血液型の偏りを調べれば、一目瞭然に血液型の偏りが見られました。[★『血液型人間学』 QA&活動報告★ 2008年01月13日]
ただし、「発端」の説明が書いていあるかと言えば何もない。、サンプルが何者かもわからないのでは、ネット世論調査にも及ばないしろものである。しかも「発端」がバイアスかかりまくりの読者アンケートでは。「発端」の後も「自分だけじゃなく家族や友達まで調べて」とかだったら、バイアスかかりまくり。ただのゴミ。


血液型性格判断信者ABOFAN氏は、能見父子の"統計"がゴミであることは知っている



ちなみに、血液型性格判断信者ABOFAN氏はこの「草野直樹:"血液型性格判断の虚実"」を読んでいる。なので、能見父子の"統計"がバイアスのかかったゴミであることは知っている。

ABOFAN氏は能見父子の統計が読者アンケートの結果であると書いている:
長谷川さんの主張

まず、否定論者の長谷川さんからです。『現代のエスプリ〜血液型と性格』の中で、長谷川さんはこういう主張をしています。(125ページ 『目分量統計の心理と血液型人間「学」』 長谷川芳典)。

標本の無作為抽出

統計的検定の基本は、研究の対象となる集団(母集団)全体から何の作為もなく標本を抜き出し、その標本からもどの集団の特徴を推測することにある。標本の選び方に何らかの偏りがある場合は、いくらたくさんのデータを集めても公正な推測をすることはできない。血液型人間「学」の愛読者アンケートのような形で何万人ものデータを集めていかなる「偏り」を発見したとしても、そこから日本人あるいは人間一般の「血液型と性格」を云々できないことは明白である。
これは、統計学的には「常識的」な主張といってもいいでしょう。確かに、能見さんのサンプリングにはそう言われてもしょうがない部分があります。完全なランダムサンプリングじゃなくて、読者アンケートが主ですからね。(^^;; -- H10.7.1

[ABOFAN: "Sampling"]
同じページの下方には、能見正比古:"血液型愛情学"からの引用があり、愛読者カードがデータソースであることが明記されている:
そこで、能見さんの『血液型愛情学』の記述に当たってみましょう。 -- H10.7.1

1 5,904人が答える50問

殺到した愛読者カード

本書執筆に際し、新しいアンケートを計画したが それを集める方法について頭を悩ませた。

B型の実証性とヤジウマ気質のせいか、私は何でも足で書きたがる傾向がある。まして人間学分野の要求する資料は多く、大量の取材が望まれる。アンケートは、それを補完する有用な一方法である。

拙著『新・血液型人間学』で紹介したアンケートは、時日をかけコツコツ依頼した知人関係、若干の企業の従業員、講演会の聴衆などが対象で、約2千人弱、他に中学校数校に依頼した2千人強、その他というところだった。設問の一貫性も不十分、集めた地域も、おのずから制限される。有益な結果も多く得たが、全体として意に満たないところも多い。

今回は、より統一的で広汎な地域にわたるアンケートを実現したかった。テーマは愛情。といって目下恋愛中の人を探し歩くわけにいかないから、夫婦が中心となり、アンケート用紙はお茶の間に参上せねばならぬ。大きな予算や人員を動員すれば、いろんなプロジェクトも組めよう。しかし、私個人の微力では、予算的にいっても制限がある。

迷っているうちに気がついたのは、前著の愛読者カードだった。本にはハガキがはさみこんであって、読者の感想や購入の動機などをたずねている。この愛読者カードを、異例なほどたくさんいただいた。それも、ハガキがまっ黒に見えるほど、細かく意見、感想をつづって来られる方が多いのである。

私には、この上ない有難い指針である。繰り返し拝読するうち、この読者の方々にアンケートをお願いしようと思いついた。本を買っていただいた上に、アンケートまで頼む。考えてみれば、図々しい話であるのだが……。

アンケートの大量返送

愛読者カードは、今は8千枚にも達しているが、アンケート作成の時点で、手もとにお預かりしていた分が3,500、その半数に依頼するつもりが、結局2,160人の方を選んでお願いすることになった。といって選ぶ基準が大してあるわけはなく、ランダム抽出に近い。

郵送方式で、アンケート用紙と返信用の切手、封筒を同封する。アンケートは用紙の裏表にギッシリ、約50間。必ずしも手軽なアンケートとはいえない。そのうえ住所氏名、生年月日に職業、電話番号までご記入を願う。アンケート調査の経験者ならご存じであろうが、記名の場合の回収率は、一般にうんと低くなる。が、私は前から、あえて記名でお願いを続けている。いろいろ理由もあるが、新しい分野だけに、できるだけ厳密にしたいという意味もある。アンケート用紙は9,500枚発送した。1人平均4.4枚。家族や知人にも記入してもらおうというさらに厚かましい依頼なのである。

私は冷々(ひやひや)しながら結果を待った。何とか3割は返ってほしかった。人に見通しを聞くと「1割も返るかねェ」などと心細い返事をしたりする。1,000人に達しなかったら、出版計画を変更しなければならない。

1週間後、私は呆然とした。予想はとんでもなく狂い、わが家は封書で見る見る山をなしたのである。アンケートを記入、返送してくれた読者が判明分だけで1,538人(どなたの返送か不明のものも数十通ある)。71パーセント強の回収率だ。私は、かつて郵送によるアンケートで、このように高い回収率の例を聞いたことがない。回答者総数は5,430人。予定した枚数をはるかに越えた。“北海道から沖縄まで”を目標にしたが、沖縄から7人の方のアンケートが届き、目標達成である。回答のない県は1つもない。

[ABOFAN: "Sampling"]

この引用をした上で、ABOFAN氏はABOFAN: "Sampling"のページで、「読者アンケート」の正当性について何も書いていない。

「血液型性格判断な本を買い、さらにアンケートに回答しようという人々」が「血液型性格判断」の調査だとわかっているアンケートに回答した結果だけからは、何の結果も得られない。別途、ランダムサンプリングした対象者たちに、「血液型性格判断」の調査だとわからないようにアンケートを取ってみれば、能見父子の"統計"におけるバイアス効果の大きさがわかるかもしれないが。

ちなみに、ABOFAN氏は血液型性格判断以外でのバイアス効果については、わかっていると思われる:
[ABOFAN: "simaさんからのメール その1〜22"]

「『ジャイアンツのファン感謝デーに東京ドームに集まった5万人のプロ野球ファンに好きな野球チームを質問したところ、95パーセントがジャイアンツと答えた』という結果からプロ野球ファンの95パーセントはジャイアンツファンだと主張するようなものです。」とのことですが、全くそのとおりです!
また。読者アンケートが心理学ではゴミとされていることも知っている:
[ABOFAN: "松岡圭祐さん『ブラッドタイプ』"

さらに、松岡さんのケースでは、もう一つ問題があります。それは、「バーナム効果」を証明するためのサンプルが、事実上彼の読者に限られていることです。心理学的には、こんなデータは無効とされています。

...

同じ愛読者のデータでも、松岡さんの場合はいいが、能見さんはダメということは(いくらなんでも?)ないでしょう。どんな否定論者、そして松岡さんも、この点では同意してもらえるものと思います。
心理学的には無効なデータであると書きながら、それに対して読者アンケートの正当性の主張はない:
読者のアンケート結果では、データが信用できないからというのが主な理由ですが、それなら心理学者のデータだって、その多くは心理学の授業に出席した学生のデータなのだから、似たり寄ったりだと思うんですが…。

[]
でも、ABOFAN氏は、そんなデータについて、データ量の多さには圧倒されてみせる:
『血液型人間学』の読者、5,904人に対するアンケートの他に、約5千人の気質アンケート、7千人近い人の血液型資料を ベースにして書き上げられています。その内容は、現在でも決して古くなってはいません。とにかく、データ量の多さには圧倒されます。

[ABOFAN:"[血液型と性格]の原点"]
あわせると、「能見さんの本は心理学的に無効とされるアンケートをベースに書かれている」となる。





タグ:Blood type
posted by Kumicit at 2009/01/25 02:27 | Comment(2) | TrackBack(0) | Others | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
たぶん、初めてのレスだと思います。
血液型性格診断の嘘・デタラメは、「まず結果ありき」の客観性に欠けた所見から来るものであることは、日頃から感じ取っていますが、最初のアンケートからそんな感じだったのですね。
そのデタラメが、拡大再生産されていったといったところでしょうか。
でも、こういうことって、信じている人たちの耳に届かないのがもどかしいですよね。
まぁ信じてるのは「悪魔の証明」を頑なに拒む人たちですから、もともと論破など無理なんですけどね。
Posted by 児斗玉文章 at 2009/01/25 13:51
反血液型性格判断サイト「血液型優生学」にこんなページがありました。

==>http://grabby.web.infoseek.co.jp/type_b/volume7/bst722_celeb.html
(有名人血液型誤統計)
==>http://grabby.web.infoseek.co.jp/type_b/volume7/bst724_nagashima.html
(長嶋茂雄の怪)

これだと、信者たちにも少しくらい効くかも...

Posted by Kumicit 管理者コメント at 2009/01/26 00:25
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