2009/02/08

「自閉症とMMRワクチンの関連を示す」論文のデータがフェイクだった by Times

自閉症原因として、おおよそ90%は遺伝だと言われている。ただし、色々複雑に絡まっていて効いている遺伝子は特定されていない[Freitag 2007]。

これに対して、「自閉症の原因はMMRワクチンである」というワクチン否定論が存在する。もちろん、その論は最近も否定されている:
[uneyama: "ワクチンと自閉症:多くの仮説があるが何の相関もない" (2009/02/02) on 食品安全情報blog]

Vaccines and Autism: Many Hypotheses, But No Correlation
2009年1月30日
Clinical Infectious Diseasesの2009年2月15日号に発表されたレビュー。

多くの研究がワクチンと自閉症の関連を否定している
...
The Lancetに1998年に発表されたMMRと自閉症の関連を示唆する論文やエチル水銀含有保存料チメロサール説、そして複数のワクチンを同時に打つと免疫系が弱くなるという仮説まで、いずれも否定されている。
...
しかも、「自閉症の原因はMMRワクチンである」という主張の根拠は、わずか12名の子供を対象とした研究だった:
[uneyama:"理不尽な嫌疑" (2007/06/19) on 食品安全情報blog]

1998年に英国のAndrew Wakefieldらがわずか12人の子どもの事例を根拠にLancetにMMRワクチンと自閉症の関係を示唆すると報告した。その後大々的なメディア報道があり、WakefieldはMMRを三回のワクチンに分けることを主張した。ほとんどの科学団体がこれに激怒し、2004年3月には論文の著者の13人のうち10人が解釈の取り下げを発表した。

しかし英国におけるMMRワクチン摂取率は80%-62%に低下し、麻疹が再び流行し始めた。
ところが、2009年2月8日に英国Timesが、このAndrew Wakefieldの研究がフェイクであることを確認したと報道した。
MMR doctor Andrew Wakefield fixed data on autism
MMRの医師Andrew Wakefieldは自閉症のデータを仕組んだ


The doctor who sparked the scare over the safety of the MMR vaccine for children changed and misreported results in his research, creating the appearance of a possible link with autism, a Sunday Times investigation has found.

Sunday Timesの調査で「子供たちへのMMRワクチンの安全性について恐慌を誘発した医師が、自身の研究で結果を変えて報告し、自閉症との関連性の可能性を創った」ことが明らかになった。

Confidential medical documents and interviews with witnesses have established that Andrew Wakefield manipulated patients’ data, which triggered fears that the MMR triple vaccine to protect against measles, mumps and rubella was linked to the condition.

関係者外秘の医学記録と目撃者のインタビューから、麻疹と流行性耳下腺炎と風疹から保護するMMR3種混合ワクチンが自閉症と関連があるという恐怖を起こしたデータは、Andrew Wakefieldが操作したものであることを確認した。

The research was published in February 1998 in an article in The Lancet medical journal. It claimed that the families of eight out of 12 children attending a routine clinic at the hospital had blamed MMR for their autism, and said that problems came on within days of the jab. The team also claimed to have discovered a new inflammatory bowel disease underlying the children’s conditions.

その研究は、"The Lancet medical journal"に1998年2月に掲載された。その研究は、病院でルーチン的な治療に通っている12人の子供たちうち8人について、その家族が自閉症をMMRによるものと非難しており、問題は注射から数字以内に起きたと言っていた。さらに、研究チームは、子供たちの症状の基礎をなす新しい炎症性腸疾患を発見したと主張した。

However, our investigation, confirmed by evidence presented to the General Medical Council (GMC), reveals that: In most of the 12 cases, the children’s ailments as described in The Lancet were different from their hospital and GP records. Although the research paper claimed that problems came on within days of the jab, in only one case did medical records suggest this was true, and in many of the cases medical concerns had been raised before the children were vaccinated. Hospital pathologists, looking for inflammatory bowel disease, reported in the majority of cases that the gut was normal. This was then reviewed and the Lancet paper showed them as abnormal.

しかし、我々の調査は、General Medical Council (GMC)に提示された証拠で確認され、以下を明らかにした。12の症例の大半では、The Lancet掲載論文が記述した、子供たちの疾患は、病院および一般医の記録と違っていた。研究論文は問題が注射から数日以内に起きたと主張していたが、医療記録で正しいことが示されたのは1例だけだった。多くの医学的懸念は、子供たちが予防接種を受ける前からあった。病院の病理学者は炎症性腸疾患をさがして、大多数が正常な腸だったと報告した。これらの報告はレビューを受け、Lancet掲載論文が異常だとしていたものである。

Despite involving just a dozen children, the 1998 paper’s impact was extraordinary. After its publication, rates of inoculation fell from 92% to below 80%. Populations acquire “herd immunity” from measles when more than 95% of people have been vaccinated.

わずか12人の子供しか扱っていないにもかかわらず、1998年の論文の影響は非常に大きいものだった。論文発表後、予防接種率は92%から80%以下にまで低下した。95%以上の人々が予防接種を受けると、麻疹に対する"郡免疫"を得られる。

Last week official figures showed that 1,348 confirmed cases of measles in England and Wales were reported last year, compared with 56 in 1998. Two children have died of the disease.

先週発表された当局の数字によれば、イングランドおよびウェールズで麻疹の症例が1998年には56だったのが、昨年に1348報告された。そして、2名の子供が死亡していた。

With two professors, John Walker-Smith and Simon Murch, Wakefield is defending himself against allegations of serious professional misconduct brought by the GMC. The charges relate to ethical aspects of the project, not its findings. All three men deny any misconduct.

研究で不正行為を行ったという嫌疑をGeneral Medical Council (GMC)にかけられたことに対して、Andrew WakefieldはJohn Walker-Smith教授およびSimon Murch教授とともに、自らを擁護している。告発は、研究の発見ではなく、倫理面に関するものである。3人は不正行為を否定している。

Through his lawyers, Wakefield this weekend denied the issues raised by our investigation, but declined to comment further.

我々の調査によって明らかになった問題について、Wakefieldは弁護士を通して否定したが、コメントは辞退した。

[Brian Deer: MMR doctor Andrew Wakefield fixed data on autism (2009/02/08) on Times Online
via Bad Astronomy]
おそらく、この件でもワクチン否定論「MMRワクチンは自閉症の原因である」はまったく消えないだろう。この記事を見つけたPhil Plaitは次のようにコメントした:
This may cause a firestorm in the antivax community, but there are two things I will guarantee: the first is that in the end antivaxxers will stick to their beliefs that vaccines cause health problems like autism, because this is not and never has been, for them, about the facts and evidence. It’s a belief system, and like most other belief systems, it is impenetrable to evidence. If you have any doubts, I suggest you read the comments to the post I made the other day about measles being on the rise in the UK. One commenter on that post is saying all manners of outrageous things, and ignores the evidence that I (and a pediatrician) have left in the comments to him.

これで、ワクチン否定論コミュニティは大騒ぎになるかもしれないが、2つ確実に言えることがある。ひとつめは、結局のところ、ワクチン否定論者たちは、ワクチンは自閉症のような健康問題を引き起こすのだという信仰に固執するだろう。それは事実や証拠ではない、かつてそうだったこともない。それは信仰であり、他の信仰と同じく証拠は通用しない。うそだと思うなら、先日、増加する英国の麻疹について書いたエントリのコメントを読んでほしい。エントリのコメンタのひとりは、べらぼうなことを書きまくって、私や小児科医がコメントに書いた証拠を無視した。

Second, and somewhat related, this hardly matters. Many, many independent tests have shown that vaccines are unrelated to the onset of autism. There is vast evidence that vaccines are very safe, and what small risk they pose is massively outweighed by the good they do. Whether Wakefield faked his results or not, he’s still wrong.

ふたつめは、このフェイクは重要ではないこと。あまりに多くの独立した検証で、ワクチンが自閉症の発症と関係がないことが示されている。ワクチンは安全であることを示す膨大な証拠があり、ワクチンがもたらす利点は、彼らが主張する小さなリスクを大きく上回る。Wakefieldが結果を操作しようが、しまいが、Wakefieldの主張は間違っている。

[Phil Plait: "Did the founder of the antivax movement fake autism-vaccine link?" (2009/02/07) on Discovery -- Blogs / Bad Astronomy
via Pharyngula]

人間の精神は、世界はランダムであると考えるよりも、神秘的で目に見えない力が秘かに働いていると信じたがる。そして、あらゆるデータに、人々は誤ったパターンを見出し、株式市場にトレンドを見出し、なじみの人間に陰謀を見出す。コントロールを失うと、たとえそれが空想上の秩序であっても、本能的に秩序を求め、合理的な人々が実際には存在しないパターンを見出すようになる。

==>忘却かの帰還: "人間の心は進化論を理解しにくいようになっている?" (2008/11/30)
==>忘却かの帰還: "When seeing IS believing (2008/10/11)

このような人間の推論傾向を思えば、「たまたま、自分たちの子供が自閉症の遺伝要因を持っていた」と考えるよりも「製薬会社の製造したワクチンによって、自分たちの子供が自閉症になった」と考える方が自然である。なので、決して「MMRワクチンは自閉症の原因である」という主張は消えることはないだろう。

ただし、「MMRワクチンは自閉症の原因である」という主張は、「麻疹による死者」という生贄を伴う。その意味で、これもまた「神に生贄をささげて天国の扉を開こうとする信仰」なのかもしれない。
posted by Kumicit at 2009/02/08 15:52 | Comment(3) | TrackBack(1) | Quackery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
な、なんだってー!
Posted by 名も無き忘却からの帰還者 at 2009/02/09 00:37
製薬会社の回し者
地獄に落ちろ!人間のカス
Posted by 名も無き忘却からの帰還者 at 2010/01/04 10:12
そして、キミは神に生贄を捧げて、天国への扉を開くのさ。
Posted by Kumicit 管理者コメント at 2010/01/05 00:02
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Excerpt: 自閉症ワクチン原因説には大きく二つの説があります。ひとつはMMR (麻疹、おたふくかぜ、風疹の三種混合)ワクチン原因説、もう一つはチロメサール原因説です。前者は主に英国で、後者は主に米国で流布されて..
Weblog: ベムのメモ帳
Tracked: 2009-02-12 15:42