2009/02/22

テキサス州教育委員長Don McLeroyがいかにして創造論者となったか by The Texas Observer

テキサス州で米国の主流メディアや州地方紙が取り上げない問題を追い続けるThe Texas Observerが、創造論者である現テキサス州教育委員長を取り上げた。

そのThe Texas Observerによれば、Don McLeroyは普通の創造論者とはかなり違った考え方と経歴を持っている:
McLeroy, as you may be aware, is chairman of the Texas State Board of Education. He is an avowed creationist of the “young Earth" variety, meaning he believes that God created the Earth some 6,000 years ago, in accordance with the biblical account in Genesis. But McLeroy is not a stereotypical true believer. He reads widely on theology and evolutionary biology. He is willing, even eager, to have his views challenged. His favorite evolutionary biologist is fundamentalist atheist Richard Dawkins, author of The God Delusion.

おそらくご存知のように、McLeroyはテキサス州教育委員長である。彼は、聖書の創世記の記述どおりに、神が地球を6000年前に創造したという"若い地球の創造論"を信じていることを明言している。しかし、McLeroyはステレオタイプなビリーバーではない。彼は神学や進化生物学の本を広く読んでいる。彼は自らの見方にチャレンジされることを求めてさえいる。彼のお気に入りの進化生物学者は"The God Delusion"の著者である、原理主義的無神論者Richard Dawkinsである。

Saul Elbein: "The Curious Faith of Don McLeroy -- What inspires the man at the center of the Texas creationism controversy? (2009/02/20) on The Texas Observer]
ちょっと奇妙な創造論者であるDon McLeroyはもともと創造論者ではなく、それどころか敬虔なキリスト教徒でもなかった。
McLeroy didn’t grow up a creationist, or even particularly religious. His family in Dallas belonged to a mainline Methodist church, but they didn’t attend services often. “If I believed in anything,” he says, “I believed in science.” He was “religiously uninvolved” at Texas A&M, where he studied electrical engineering.

McLeroyは創造論者として育ったわけでもなく、特に宗教的でもなかった。彼の一家はDallasのメインラインメソジスト教会に属していたが、礼拝にはあまり出かけていなかった。「何かを信じるとするなら、科学を信じる。」と彼は言う。彼は、電気工学を学んだTexas A&Mで、宗教に関わらなった。
そんなDon McLeroyが創造論を信じるようになったのは、Nan Flemingとの出会いに始まる。創造論を信じる彼女に導かれるように創造論に近づいて行ったDoc McLeroyは次のような考えを持つようになった。
“I was a Christian well before I was a creationist,” he says. “People say you have to be a creationist to be a Christian, but my life is proof of the opposite.”

「私は創造論者である前にキリスト教徒だった。キリスト教徒たるには創造論者たらねばならないと人は言うが、私の人生はその逆であることを証明している。」と彼は言う。

This is a nice point, but it’s also true that McLeroy sees a certain lack of consistency in religious people who advocate evolution. One of his favorite tenets of Christianity, the one that underlies all his policy ideas, is the principle that man is made in the image of God. Take evolution to its logical conclusion, he says, and you destroy that idea.

これは重要な点だが、McLeroyが、進化論を支持する宗教的な人々が一貫性を欠いていると見ていることも事実である。彼が好むキリスト教の巨富義のひとつは、彼のすべてのお方針の基礎をなすものである、人間は神の似姿に創造されたという原則である。「進化論を選択すれば、論理的帰結として、この考え方は破壊される」と彼は言う。

“I mean, if evolution is development of life through unguided natural processes,” he asks, “how can we be made in the image of God? How can humans be worth anything?”

「進化が、導きのない自然の過程[超自然の介入のない過程]で生命が発展してきたというものなら、どうやって神の似姿に我々は創造されたのか? 人間の意義は?」と彼は問う。
...

“I would never say that Miller’s not a real Christian,” he says. “I don’t think you have to be one to be the other. But I don’t think he’s very consistent.
“That’s why I like Dawkins so much. He at least takes evolution to where it has to lead—atheism.”

「私はMiller [Kenneth Miller]を真のキリスト教ではないとは決して言わない。私は、どちらかでなければならないとは考えていない。しかし、私は彼が一貫しているとは思わない。だからこそ、私はDawkinsが好きなのだ。彼は少なくとも進化論をとり、その導かれるところ、無神論に至っているからだ。」
字義どおりに「神の似姿に創造された人間」という教義を受け取るなら、論理的に進化論とはバッティングする。Don McLeroyは、その点では間違っていない。ただし、教義についての立場は様々であり、字義どおりに捉えることが唯一のキリスト教の教義というわけではない。

論理的にキリスト教と進化論が矛盾するという考えに至ったDon McLeroyだが、"若い地球の創造論者"となったのは、現夫人であり、創造論者であるNan Flemingと婚約後のことだった。
Soon after they were engaged, Nan handed him some books explaining geological phenomena from a creationist viewpoint. McLeroy was initially skeptical --“I thought, goodness, I’m engaged to a crazy woman”-- but he read them, and then he started going with her to seminars on creationism. They presented a world different from any he had thought possible, one that -- despite its foreignness -- felt right. He challenged creationist experts with his doubts about the supposed young age of the Earth -- what about the dinosaurs? what about radiometric dating? -- but slowly, calmly, he says, they answered his objections.

彼らが婚約後すぐに、Nan Flemingは彼に創造論者の立場から地質学現象を説明した本を何冊か手渡した。McLeroyは最初は懐疑的だった。「なんてこったい、マジキチと婚約しちまった」と思ったが、彼はそれらの本を読み、彼女とともに創造論者のセミナーに出かけるようになった。彼らは、彼が考えられるものとは異なる世界を提示した。それは見知らぬものだったが、正しいと感じられた。McLeroyはm創造論の専門家たちに、若い地球論についての疑問をぶつけた。恐竜は? 放射性同位元素による年代測定は? それに対して、彼らはゆっくりと穏やかに答えたと、McLeroyは言う。
なんというか、Don McLeroyは、普通にビリーバーたちに引き込まれていく過程をたどったようである。

そして今ではこんなことに...
McLeroy believes that at some point, perhaps in 10 years, perhaps in 50, a new scientific revolution will reveal that “the creationists’ crazy ideas” are actually right -- just as quantum mechanics and relativity overturned the tidy world of classical physics. McLeroy professes a willingness to keep teaching the scientific consensus until the day comes when it jibes with his beliefs. Still, he supports “teaching the controversy” of evolution, though that’s a controversy nearly all scientists say is resolved.

McLeroyは、10年後か50年後かに新たな科学革命がおきて、創造論者のマジキチな考えが実は正しかったことが明らかにされると信じている。量子力学や相対性理論が古典力学をひっくり返したように。科学的コンセンサスが、信じるものと一致する日が来るまでは、現在の科学的コンセンサスを教え続けることを厭わないと、McLeroyは言い切る。しかし、彼は進化論についての「論争を教えろ」を支持する。その論争は、ほぼすべての科学者が解決済みだとしているものだが。
「科学的コンセンサスが、信じるものと一致する日が来るまでは、現在の科学的コンセンサスを教え続けることを厭わない」と言うなら、「Teach the Controvesy」とか「Strength and weakness of evolution」とか「Academic Freedom on Evolution」などと今の時点で言うべきではない。"その日"が来るまで待たなければならない。自らの寿命が尽きるなら、誰かに託してでも。

しかし、Don McLeroyはそうしない。彼はテキサス州教育委員長としての創造論用語を教育内容に持ち込もうとする戦いを始める。だからこそ、Don McLeroyは州教育委員長として相応しくないのだ。


ついでだが、その戦いを復習しておくと....



テキサス州理科教育標準をめぐる、創造論者Don McLeroyが委員長をつとめるテキサス州教育委員会での戦い


タグ:創造論者
posted by Kumicit at 2009/02/22 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | Creationism | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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