2006/01/15

インテリジェントデザインと"若い地球の創造論"は耐性菌について同じことを言う

"若い地球の創造論"はウィルスの変化は進化ではないと言う(エントリ)。そして、耐性菌について、自然淘汰であるが進化ではないと主張する。
で、インテリジェントデザインはどう言うかというと、実は同じ。"若い地球の創造論"ほどムキになっていないところが違うくらい。


耐性菌の変化は進化ではない"若い地球の創造論"

まずは、毎度おなじみの"若い地球の創造論"サイトAnswers in Genesis(AiG)の主張から。

Natural selection: the drugs wipe out all the non-resistant germs, so the most resistant germs survive and multiply. This leads to a whole population that’s resistant to antibiotics. This is not evolution because the resistance already existed in the population.

自然淘汰:薬は抵抗性のない細菌を一掃するので、最も抵抗力のある細菌は生き残って、増加する。これにより、存在する細菌はすべて、抗生物質に抵抗できるものになる。抵抗力がある最近はすでに細菌集団の中に存在していたのであって、進化したのではない。

...
Sometimes bacteria can pass on information to other bacteria, via loops of DNA called plasmids. Sometimes plasmids contain information for antibiotic resistance. But here too, the information already existed, so this is not evolution.

ときどき、細菌はプラスミドと呼ばれるDNAのループを使って、情報を別の細菌に渡すことがある。ときどき、プラスミドは抗生物質に対する抵抗力についての情報を含んでいることがある。しかし、ここにあるのも既存の情報であり、従ってこれは進化ではない。

....
Information-losing mutations can confer resistance. Such mutations are often harmful in an ‘ordinary’ environment without antibiotics. It is well documented that many ‘superbugs’ are really ‘superwimps’ for this reason—see Superbugs not super after all. Also, some sorts of information-losing mutations evidently cause HIV resistance to antivirals, because the ‘wild’ types easily out-compete the resistant types when the drugs are removed.

情報を失う突然変異によって抵抗力を得ることがある。そのような突然変異は、多くの場合、抗生物質がない普通の環境では生存に不利である。多くの"スーパー細菌"は実際にはこのような理由で"スーパー弱虫"であり、"スーパー細菌"は結局のところ"スーパー"ではない。実際に、抗ウィルス物質への抵抗性を持つHIVも情報を失う突然変異によって生じている。というのは、"野生"型HIVは、薬がなくなれば、抵抗型HIVを容易に駆逐してしまうからだ。

(Dr Jonathan Sarfati: "Anthrax and antibiotics: Is evolution relevant?", 2001/11/15, 2005/4/8改訂)


主張は

  • 抵抗性細菌は、既存の機能を持つものが増えたので進化ではない
  • 情報を失う突然変異は、進化ではない
  • そもそも抗生物質がない環境では敗者になるのだから進化ではない

といったところ。なお、ほぼ同じようなAiGの記事「Dr. Robert “Tommy” Mitchell: "Evolution and medicine"」が2005年11月22日付けでも出ている。

抗生物質があるという新しい環境に適応した細菌が生き残るというのは普通の自然淘汰。そして、たまたま突然変異によって新たな環境に適応してしまった細菌が出現して、そうでない細菌が一掃されれば、それは進化という他ない。

でも、"情報を失う"のは"進化"ではないという言葉の定義によって、細菌は進化したわけではないという、いつもの"若い地球の創造論"の主張だ。ここまでくると、進化論と戦うというよりは、"進化はない"と信者の心を安らかにさせるという目的しかないように思える。


インテリジェントデザインも似たようなもの

で、インテリジェントデザインはどうかといえば、あまり違っていない。インテリジェントデザインの生化学担当Dr. Michael Beheは1996年10月29日付けのニューヨークタイムズに「Darwin Under the Microscope(顕微鏡の下のダーウィン)」という記事(Discovery Instituteのコピー)を書いている。
Darwinian theory successfully accounts for a variety of modern changes. Scientists have shown that the average beak size of Galapagos finches changed in response to altered weather patterns. Likewise, the ratio of dark- to light-colored moths in England shifted when pollution made light-colored moths more visible to predators. Mutant bacteria survive when they become resistant to antibiotics. These are all clear examples of natural selection in action.

ダーウィン進化論は、うまくいろいろな現代の変化を説明する。科学者は、ガラパゴス・フィンチのくちばしの平均サイズが天候パターンに応じて経化することを示した。同様に、同様に、汚染により、明るい色の蛾がより捕食者の目に見えるようになったとき、イングランドの明るい色の蛾と暗い色の蛾の比率は変化した。抗生物質に抵抗できるようになった変異バクテリアは生き残る。現に信仰する自然淘汰の明白な例である

But these examples involve only one or a few mutations, and the mutant organism is not much different from its ancestor. Yet to account for all of life, a series of mutations would have to produce very different types of creatures. That has not yet been demonstrated.

しかし、これらの例はひとつか数個の突然変異しか起きていない。そして、変異体はその祖先とそれほど違っていない。それでも、すべての生物についての説明のためには、一連の突然変異によって全く異なる生物が生まれなければならない。しかし、それは証明されていい。


なお、2004年12月10日付けのSan Fancisco ChronicleにRobert M. Sapolskyが「Regardless of how it works, evolution is for real」(Answers in Genesis(AiG)が、ウィルスの出現のたびに「進化していない」と主張する記事を書きまくるのに対して、インテリジェントデザインの本山たるDiscovery Instituteはそこまでの対応をしていない。

しかし、インテリジェントデザインの主要サイトのひとつIDEA CENTERだと、
One oft-cited example of a rare “beneficial” mutation is antibiotic resistance in bacteria. Yet antibiotic resistance does not create new information in the genome. This sort of evolution is microevolution because it involves only minor change “within a species” and does not add information. Antibiotic resistance is different from macroevolution and does not explain how new biological structures arise. Interestingly, resistant bacteria face a net “fitness cost” and are weakened by the very mutation that made them drug-resistant.

まれにも"有益な"突然変異の例としてたびたび挙げられる例は細菌の抗生抵抗である。しかし、抗生抵抗はゲノムに新しい情報を創りだしたわけではない。このような変化は種の枠内にとどまる小さな変化であり、情報を加えるものではないので、このような進化は小進化である。抗生抵抗は大進化とは違い、新たな生物構造の出現を説明するものではない。興味深いことに、抗生抵抗のある最近は、差し引きの"適合コスト"に直面しており、その薬物への抵抗性をつけた突然変異そのものによって、弱くなっているのだ。

(Primer: Mutations in a Nutshell)

と、"若い地球の創造論"とまったく同じことを言っている。
posted by Kumicit at 2006/01/15 01:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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