2009/05/19

トンデモは連鎖するのは"自然"な成り行きかも


科学が信頼できないと神を...



「たとえそれが空想上の秩序であっても、本能的に秩序を求める」と似たような話に「科学が信頼できないと神を信じる」というものがある:
[Jesse Preston and Nicholas Epley: "Science and God: An automatic opposition between ultimate explanations", J. Experimental Soc. Psychology, 45, 238–241, 2009.]

Science and religion have come into conflict repeatedly throughout history, and one simple reason for this is the two offer competing explanations for many of the same phenomena. We present evidence that the conflict between these two concepts can occur automatically, such that increasing the perceived value of one decreases the automatic evaluation of the other. In Experiment 1, scientific theories described as poor explanations decreased automatic evaluations of science, but simultaneously increased automatic evaluations of God. In Experiment 2, using God as an explanation increased automatic evaluations of God, but decreased automatic evaluations of science. Religion and science both have the potential to be ultimate explanations, and these findings suggest that this competition for explanatory space can create an automatic opposition in evaluations.

科学と宗教は歴史を通して繰り返し衝突してきた。その理由の一つは、科学と宗教が同一の現象について対立する説明を提示してきたことによる。我々はこの対立が自動的に起きることを示す証拠を提示する。証拠は、一方が認められた価値を増すと、他方の評価自動的に下がる。実験1では、科学理論が貧弱な説明だと言われると、科学への評価を自動的に下げたが、同時に神への評価を自動的に高めた。実験2では、説明として神を使うことは、神の評価を自動的に高めたが、同時に科学への評価を自動的に下げた。宗教と科学には最終的な説明である可能性があり、これらの調査結果は、説明の座をめぐる競争で、自動的に他方の評価を下げることを示唆している。
ちなみに、実験1は次のように被験者を誘導したもの:
Participants read two passages that briefly described the Big Bang Theory and the Primordial Soup Hypothesis. In the Strong Explanation condition, each passage concluded with a statement that ‘‘this was the best scientific theory on the subject to date, and does much to account for the known data and observations." In the Weak Explanation condition, each passage concluded with a statement that ‘‘this was the best scientific theory on the subject to date, but it does not account for the other data and observations very well, and raises more questions than it answers."

被験者はビッグバン理論と生命のスープ仮説についての簡単な記述を読む。強い説明条件の被験者が読む記述は「これは現時点での最善の科学理論であり、既知のデータと観測を説明する」で終わっている。弱い説明条件の被験者が読む記述は「これは現時点での最善の科学理論であるが、他のデータや観測をうまく説明できず、答えよりも問題が多く出た」で終わっている。
Preston and Epley[2009]では、「科学vs神」を調査対象としているが、「神」ではなく別なものを置いても、同様な自動的な評価が起きる可能性があると思われる。

キリスト教がらみではあるが、インテリジェントデザイン=反進化論は、温暖化否定論およびHIV否定論と連鎖している。
通常科学と一局面で敵対すると、さらに別の分野でも敵対するようだ。それは、自らの主張の信憑性を落とす行為だが、気にならないようだ。

これはキリスト教の特徴というわけではなさそうだ。キリスト教信仰とは関係なさそうなネタでも、同様にトンデモは連鎖する:
[ニセ科学の総合商社としてのEM (2008/10/28) on 幻影随想]

トンデモは連鎖する

これは数多のトンデモ、疑似科学を観測した上での経験則に過ぎないが、自分の論理に不誠実な主張者ほど、節操無く自分の主張のつっかえ棒となる何かを手当たり次第に取り込もうとする傾向がある。まるで拾った羽で自分を飾り立てた童話のカラスのように。
#もちろん取り込むものがアレなので、ニセブランドで全身固める様な滑稽な結果にしかならない訳だが

[2008-03-21 911陰謀論と千島学説の関係は? (2008/03/21) on NATROMの日記]

まとめると、千島学説―ケルヴランの生物学的元素転換―常温核融合―純粋水爆―WTCビル崩壊自作自演説というわけ。千島学説―現代医学否定―ユダヤ陰謀論―WTCビル崩壊自作自演説という連鎖もあるので、輪が閉じて一周する。美しい。
これは、一局面であっても通常科学を否定すると、自動的にあらゆるトンデモへの評価を高めてしまっていて、次々と受け入れてしまっていると見てよいかもしれない。

posted by Kumicit at 2009/05/19 23:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | Skeptic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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