2009/06/28

南アフリカのオランダ系の創造論と米国のKen Ham

Ken Hamが主宰する"若い地球の創造論ミニストリ"Answers in Genesisを批判するNo Answers in Genesisによれば、Answers in Genesisがかつて、こんな記事をアップしていた:
An open letter to Christians to awaken them to the seriousness of the threat of the theory of Evolution to the Christian Faith! Our children are being targeted by evolutionists! ...

キリスト教信仰への進化論の脅威の重大性に気づかせる公開書簡。我々の子供たちが進化論者に狙われている。

The following words written to me recently by a mother touched my heart and once again emphasize the need for us in South Africa to take the threat of the theory of evolution to the Christian faith very seriously and for the need for the ministry of CSIS.

ひとりの母親によって、最近、私宛に書かれた手紙が、私の心を打ち、キリスト教信仰に対する進化論の脅威に対抗する必要性を強調した。

"Sadly enough I have a son who was a deeply committed young man in his teens, who after becoming a High School Science teacher and operating among a dedicatedly atheistic staff did a complete turn around and now at the age of 34 is a hostile opponent of Christianity."

「悲しいことに、十代のとき献身的だった私の息子が、高校の理科の先生になって、献身的に無神論者たちのために働き、まったく正反対になり、今では34歳で、キリスト教の敵対者になってしまいました。」
「南アフリカの反進化論」はアパルトヘイト支持とリンクしている場合があるのだが、気がつかなかったらしい。

そして、Ken Hamたちは出版業としての宣伝につなげた。
You can also help by subscribing to our Creation ex Nihilo Magazine if you have not already done so and by encouraging others to subscribe as well. This magazine is a blessing to Christians all over the world including the mother mentioned above. It is the only family magazine where you will find Christian answers to today's increasing evolutionary attacks in an easy to understand format. Please consider giving gift subscriptions to your local schools or public libraries in order to reach our young people who are targeted relentlessly by evolutionists from a very early age.

我々の雑誌"Creation ex Nihilo Magazine"を未購読なら、定期購読することも支援になる。そして、まわりの人々にも定期購読を奨めてほしい。この雑誌は、前述の母親を含む、世界中のキリスト教徒への天の恵みである。そして、進化論の増大する攻撃に対する回答をわかりやすく掲載した唯一の家族向け雑誌である。ほんの小さなときから進化論者に狙われている子供たちに届けるために、地域の学校や公立図書館へのギフト購読も考えてほしい。
雑誌定期購読が収入なので、ひたすら拡販宣伝するKen Hamたち。当然のようにAnswers in Genesisが分裂したときに、定期購読者争奪戦が起きたことからも、お金を払い続けてくれる定期購読者の重要性は明らか。

そして、Ken Hamたちは進化論者たちの攻撃の深刻さを示すべく、南アフリカの考古学学術誌の記事を例として示す。
See enclosed a copy of the article "Evolution, the forbidden word" from the South African Archaeological Bulletin 53: 135-139: 1998.
しかし、その内容は、白人政権時代におけるキリスト教と反進化論と人種差別のリンクを批判するものだった。

米国の創造論者たちは繰り返し「進化論者は人種差別を推進する」「ダーウィンは人種差別主義者」と主張してきたのに、こんなものを例として挙げてしまった:
The concept of 'evolution', be it on a micro-biological scale or in relation to human development was excluded from all curricula formulated under the old Christian National Education (CNE) system in South Africa. The Christian National sentiment that grew out of the Afrikaner Nationalism of the 1930s and 1940s, was formalised for the first time in 1948 and accepted as the basis for National Education from 1967 to 1993 (Enslin 198:139-4: Christie 1991:171-73). Christian National Policy stated, amongst other things, that white children should 'receive a separate education from black children to prepare them for their respective superior and inferior positions in South African social and economic life, and all education should be based on Christian National principles (Christie 1991). ...

かつてのChristian Nationalの教育制度のもとでは、進化論の概念は、微生物学スケールから人間の進化まですべてが公式カリキュラムから排除された。1930年代から1940年代にかけて成長したオランダ系南アフリカ人の雰囲気が公式なものになったのは1948年で、それは1967年から1993年まで国民教育の基礎となった。Christian Nationalの政策は「社会および経済における白人の優位と黒人の劣位を反映して、白人と黒人の子供は別個の教育を受けるべきであり、教育はすべてChristian Nationalの原則に基づくべきだ」と言っていた。

Pupils were indoctrinated by the CN world-view through the formal curriculum, which omitted 'anti-biblical' concepts such as evolution, made Bible education compulsory and presented a version of history that, in the words of Dean and Sieborger (1995:32), "omitted, distorted or vilified the role of blacks, 'coloureds' and Asians in the country's past".

生徒たちは、公式カリキュラムによってChristian Nationalの世界観を注入された。
そして、進化論のような反聖書的概念を排除し、聖書教育を義務化し、この国にかつていた黒人や有色人種やアジア人の役割を過小評価したり中傷した歴史バージョンを提示した。
ここで人種差別の根拠とされたのは創世記9章18-27節である。
創世記 / 9章 18-27節

箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハムはカナンの父である。この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広がったのである。

さて、ノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。
あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。カナンの父ハムは、自分の父の裸を見て、外にいた二人の兄弟に告げた。セムとヤフェトは着物を取って自分たちの肩に掛け、後ろ向きに歩いて行き、父の裸を覆った。二人は顔を背けたままで、父の裸を見なかった。

ノアは酔いからさめると、末の息子がしたことを知り、こう言った。「カナンは呪われよ/奴隷の奴隷となり、兄たちに仕えよ。」
また言った。「セムの神、主をたたえよ。カナンはセムの奴隷となれ。神がヤフェトの土地を広げ(ヤフェト)/セムの天幕に住まわせ/カナンはその奴隷となれ。」

The Drunkenness of Noah by Giovanni Bellini.jpg
Giovanni Bellini(1430–1516): "The Drunkenness of Noah"
ハムとカナンの肌の色について創世記は何も語っていないが、呪いによってカナンは黒人になったと考えられていた。特に南アフリカの白人たちのみの教義ではない。
In the Middle Ages, European scholars of the Bible picked up on the idea of viewing the "sons of Ham" or Hamites as cursed, possibly "blackened" by their sins. Though early arguments to this effect were sporadic, they became increasingly common during the slave trade of the 18th and 19th Centuries.[6]

中世では、欧州の聖書学者たちは、ハムの子孫が呪われ、おそらく罪によって黒くなったという見方を取り上げていた。この論の影響は散発的だったが、18〜19世紀の奴隷貿易の時代にひろまっていった。

[wikipedia:Curse of Ham]
このような立場を、"若い地球の創造論"ミニストリAnswers in Genesisを主宰するKen Hamは否定している:
I just ask them to look up the chapter and verse in the Bible. That’s always the end of that caller, because this narrative says nothing about skin color or race. Nothing.

私はいつも、聖書を見返しみるように言う。聖書には肌の色や人種についての記述がないので、それで論争は終わりになる。

[Ken Ham: "Darwin's Plantation", Chapter 5: One Blood (2009/01/08) on Answers in Genesis]


さて、Ken Hamたちが進化論者たちの攻撃の深刻さの例として提示した引用には、さらに次のような記述がある:
For black children, for example, the issue of whether early humans were black or white was of importance. The concept of a single ancestor was significant. They enjoyed the fact that "blacks and white people are from the same person" (Moira Mabuya, Grade 5), and that skin colour is simply an adaptation to environmental conditions:
黒人の子供たちにとって、たとえば、初期の人類が黒人だったか、白人だったかは重要な問題である。祖先が単一だというコンセプトは非常に重要である。「黒人と白人は同じ人の子孫」という事実を楽しみ[Moira Mabuya 5年生]、肌の色が環境への適応である...
この部分は「肌の色が環境への適応である」も含めて、Ken Hamの主張と何ら違いはない。

これを「進化論者たちの攻撃の深刻さの例」としたために、Ken Hamたちは人種差別主義を支持したことになってしまった。そのことにKen Hamたちが気づいたのは、まさにNo Answers in Genesisの批判記事だった。そして、Ken Hamたちは、この記事を丸ごと削除し、"http://www.archive.org"やgoogle cacheからも削除した。
Note: Some months after I wrote this article, AiG removed "A Wakeup call to Christians" from their web site but not before I'd made a copy of it. The article was, for a time, available on the Internet Archive. Not surprising, AiG has now removed it from the Archive.

私がこの記事を書いてから数か月後、Answers in Genesisは"A Wakeup call to Christians"をサイトから削除したが、その前に私はコピーを取っていた。記事は少しの間はInternet Archiveでは見れていた。驚くこともないが、Answers in GenesisはArchiveからも記事を削除した。

[a href="http://www.noanswersingenesis.org.au/aig_and_racism_response.htm">John Stear: "It's Official! Racism is an Integral Part of Creationist Dogma" on No Answers in Genesis]
これは創造論と人種差別がリンクしている南アフリカの特殊事情を知らなかったKen Hamたちのマヌケな失敗であり、取り立てて問題にすることでもない。しかし、記事削除して逃走するという不誠実さは記憶にとどめておくべきかも。

ちなみに、米国の創造論・インテリジェントデザイン運動では普通はリンクしないはずの主張と、創造論がリンクしている場合が他にもある。たとえば、"Darwin-to-Hitler"という"Reductio ad Hitlerum"詭弁を使っている創造論者およびインテリジェントデザイン運動だが、創造論者の一部には反ユダヤと反進化論がリンクしている地球平板中心説を主張する団体がある。

==>忘却からの帰還: トンデモサイトの反進化論州法案サンプルを持ち上げてしまったテキサス州下院議員 (2007/02/21)




タグ:創造論
posted by Kumicit at 2009/06/28 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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