==>19世紀末から20世紀初頭の発明家Elmer Gatesの怪しいネタ(2009/07/09)
このネタを日本国内に広めたと思われる笠巻勝利氏の「眼からウロコが落ちる本 (1999/09)」には、他にも魅力的な都市伝説が掲載されている...
都市伝説「ブアメードの血」
この笠巻勝利バージョンそのまま(ただし出典なし)あるいは、表現改変(ただし出典なし)がそれなりにネット内に出回っている。たとえば...
[笠巻勝利: "眼からウロコが落ちる本"(1999/09) (PHP文庫), pp.46-47]
1883年、オランダにおいてブアメードという国事犯を使って一つの実験が行なわれた。表面上、一人の人間からどれだけ血液をとったら人間は死ぬものかというものである。
医師団はブアメードをベッドの上にしばりつけておいて、その周りで話し合いをする。「三分の一の血液を失ったら人間は死ぬでしょう」という結論に達した。
医師団は、「これから実験をはじめます」といって、ブアメードの足の親ユビにメスを入れた。用意してある容器に血液がポタポタとしたたり落ちはじめた。
数時間が過ぎた。医師団は「どれぐらいになりましたか?」「まもなく三分の一になります」と会話する。それを聞いたブアメードは静かに息を引きとったという。
実は、医師団は心理実験をしていたのであった。ブアメードの足にメスを入れるといって痛みだけを与えたのである。ブアメードはメスで切られるといわれれば、それこそ、ちょっとした痛さでも、メスで足を切られたと思うだろう。
容器に用意しておいた水滴をたらしていたのであった。
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これらとは別バージョンが遅くとも2000年9月に出現している。
[痛みを長引かせる医師の呪いと条件づけ (archive on 2005/03/31)]時代が1883年から第二次世界大戦前に、オランダがヨーロッパのある国に変わっている。
第二次世界大戦前のヨーロッパで次のような実験が行われたそうです。
ヨーロッパのある国にブアメードという名の死刑囚がいました。彼はある医師から医学の進歩のために危険な実験に協力して欲しいと頼まれました。人間の全血液量は体重の10パーセントが定説になっているが、我々は10パーセントを上回ると考えているので、それを証明したいというのです。彼はその申し入れを受け入れ、まもなく実験が開始されることになりました。
目隠しをされてベットに横になったブアメードは血液を抜き取るために足の全指先を小さく切開されました。足元には容器が用意され、血液が滴り落ちる音が実験室に響き渡ります。ブアメードには一時間ごとに累積出血量が告げられました。やがて実験開始から5時間がたち、総出血量が体重の10パーセントを越えたと医師が大喜びしたとき、哀れ、この死刑囚はもう死んでいました。
ところがこの実験血液など抜いていなかったのです。彼にはただ水滴の音を聞かせ、体内の血液が失われていると思い込ませただけでした。これが最近注目を集めている「ヴードゥー死」あるいは「ノーシーボ」と呼ばれる現象です
この改変はこのサイト主ではなく、このサイトがリンクしているTMS JAPANのパブリシティにある「長谷川淳史: "腰痛は<怒り>である" (2002/05/01)(初出は2000/09)」と思われる。
同じ「第二次世界大戦前のヨーロッパで次のような実験」を書いているページ「言葉で人を殺す方法 」に以下のような記述があった:
「腰痛は怒りである」という本の一節でこんな恐ろしい実験を紹介していました。年代からすると、笠巻勝利氏がオリジナル(創作)で、長谷川淳史氏が改変のようである(あるいは既に1990年代後半に流布されていた都市伝説だったのかもしれないが)。
第二次世界大戦前のヨーロッパでの実験です。ヨーロッパのある国にブアメードという名の死刑囚がいました。彼はある医師から医学に進歩のために危険な実験に協力してもらえないかともちかけられました。..
この「ブアメードの血」を「execution breeding dutch holland psychological experiment bourmade」などのキーワードの組み合わせで英語情報を見つけようとしても、まったくヒットしない。おそらく日本国内に限定された都市伝説だと思われる。
さらに、この「ブアメードの血」と同じパターンの都市伝説が存在する。そのネタとは遅くとも1986年には存在していた「Lethal Indirection」である:
A group of Birmingham students were discussing the question of hypnosis. They decided to try an experiment and invited into the lecture room a laboratory assistant who was always causing them problems and getting them into trouble.これを掲載している"snopes.com"によればPaul Smithは1800年代に別バージョンが存在していたと主張している。
They explained to him that no one could be made to do anything under hypnosis that they would not do when fully awake. They said that a student had been hypnotised, told to execute someone and they wanted the laboratory assistant to help them prove the student would not go through with it.
They asked the assistant to kneel down with his head bent as if ready to have his head chopped off. The 'hypnotised' student was then brought in and with a suitable build-up he gently dropped a wet towel across the back of the victim's neck. Unfortunately, the assistant was of a nervous disposition and the shock brought on a heart attack which killed him.
バーミンガムの学生のグループが催眠の問題を議論していた。彼らは実験をすることを決めて、いつも彼らに問題をもたらし、トラブルに巻き込んでいた実験助手を講義室に招き入れた。
彼らは助手に、起きていることにできないことは催眠状態でも実行できないと説明した。そして彼らは学生の一人が"催眠術にかけられ"、誰かを処刑するように言われており、実験助手に、その学生が処刑を実行できないことを証明するのを手伝ってほしいと言った。
そして彼らは実験助手に、頭を切り落とされる準備ができてるかのように、頭を傾けて跪くように頼んだ。そして、"催眠術にかけられた"学生が講義室に引き入れられた。彼は、適度な硬さにした湿ったタオルを実験助手の首の後ろにゆっくりと落した。不幸なことに、実験助手は神経質な性格で、そのショックで心臓発作を起こして死亡した。
[Smith, Paul: "The Book of Nastier Legends", London: Routledge & Kegan Paul, 1986] via [Lethal Indirection -- snopes.com]
都市伝説「電源の入っていない冷凍車で凍死する作業員」
「ブアメードの血」と同様のネタを笠巻勝利氏は、「ブアメードの血」のすぐ後で紹介している:
[笠巻勝利: "眼からウロコが落ちる本" p.46]とても簡略化されているが、これは遅くとも1988年には存在していた都市伝説である:
日本占術協会の会長である浅野八郎さんは、こんな話をしていた。アメリカのある鉄道会社の作業員が、冷凍車の中に入って作業をしていた。ところが、中に誰か入っているとは思わず、外から扉を閉めて鍵をかけてしまった人がいた。
それから一日が過ぎた。作業員は発見されたが、凍死していたという。しかし冷凍車の電源は切られていたのである。
[都市伝説(英日)のページ -- Deadly Imaginings(恐怖の妄想), Deadly Imaginings ]とても魅力的なネタ、とくに「生き方」について本や「ビジネス」書で使いたくなるネタである。なので、2006年に出版されたビジネス書に使われていたりする:
[Van Ekeren, 1988]
The expression "worried to death" has more truth to it than you might think.
There is a story about Nick Sitzman, a strong, young bull-of-a-man, who worked on a train crew. It seemed Nick had everything: a strong healthy body, ambition, a wife and two children, and many friends. However, Nick had one fault. He was a notorious worrier. He worried about everything and usually feared the worst.
One midsummer day, the train crew were informed that they could quit an hour early in honor of the foreman's birthday. Accidentally, Nick was locked in a refrigerator boxcar, and the rest of the workmen left the site. Nice panicked.
He banged and shouted until his fists were bloody and his voice was hoarse. No one heard him. "If I can't get out, I'll freeze to death in here," he thought. Wanting to let his wife and family know exactly what had happened to him, Nick found a knife and began to etch words on the wooden floor. He wrote, "It's so cold, my body is getting numb. If I could just go to sleep. These may be my last words."
The next morning the crew slid open the heavy doors of the boxcar and found Nick dead. An autopsy revealed that every physical sign of his body indicated he had frozen to death. And yet the refrigeration unit of the car was inoperative, and the temperature inside indicated fifty-five degrees. Nick had killed himself by the power of worry.
「死ぬほど心配性」とは、思った以上に深刻であるお話
これは鉄道員として働くニック・シッツマンというたくましい若者の話です。ニックは、強靭で健康な身体、大志、妻と2人の子供、そして多くの友達と全てのものを兼ね備えているようであった。ただニックには唯一の欠点があった。それは誰もが認める心配性であったことである。ニックは全てのことについて心配し、いつも最悪のケースばかりを思い悩んでいた。
ある真夏の日、その日の現場監督の誕生日を記念し、鉄道員はいつもより一時間早く上がっても良いという通知が出ていた。ところがニックは、誤って冷凍車に閉じ込められ、他の作業員はその場を離れてしまった。ニックはパニックになった。
ニックは、声がかれるまで叫び、拳に血がにじむまでドアを叩いたが、誰も彼の存在を知ることはなかった。「もしここから出なければ、凍死は間違いない」と思った。彼は今ここで起こっていること全てを妻や家族に知らせようと思い、近くにあったナイフを見つけ、木製の床に文字を刻み始めた。「ここは寒い、身体の感覚が無くなりつつある。もしここで眠ってしまうと、それが俺の最後の言葉となると思う。」と書いた。
次の朝、作業員がその車両の重い扉を引きあけた時、ニックが死んでいるのを発見した。検死の結果、全ての理学的徴候から、彼が凍死したことが明らかとなった。ところが、その車両の冷凍機能は正常に動作しておらず、内部の温度は華氏55度(摂氏12度)を示していた。ニックは自分が持つその恐怖の力で、自分自身を死に追い詰めたのだった。
[Van Ekeren, Glenn: "The Speaker's Sourcebook, 1988. (pp.390-391)]
[Russ Lombardo: "Cybeselling" , Chapter VII Initial Contact (2006/12/11)]もとの都市伝説とほぼ同じだが、舞台が旧ソ連に改変されている。また、通気性が良く窒息の可能性もなかったという情報が追加されている。
Years ago, before the Soviet Unionwas separated into individual state, there was a mechanic working inside a railroad refrigerator car doing some repairs. Witouht warning, the door suddenly slammed shut with the mechanic inside. The only way to open the door was from the outside. So the mechanic began banging on the door for help. Unfortunately, it was late in the workday and nealy everyone was gone for the day, so no one heard him. After what seemed like an eternity banging and yelling for help, the michanic resolved himself to the fact that he would be spending the night in that railroad refrigerator car.
The next day when the other workers returned to th work site, sadly they opened the refrigerator car door only to find their colleague dead on the floor. They noticed writing on the wall -- writing from their deceased co-worker. There were 4 lines written. They read:
- It's starting to get very cold
- It'sgetting difficult to breath
- I realize that I am going to die here
- There wil be my last words
These words, and the resulting death of their friend, perplexed the workers. You see, due to an electrical problem in the cooling system, the refrigeration unit was not operational and the temperature inside the car that night never went low enough to even remotely approach freezing. So he couldn't have been frozen to death. Also, the car was not airtigtht and there was plenty of oxygen inside the car. So he couldn't have suffocated. Therefor, their only conclusion was that their poor colleague actually willed himself to death.
Positive thinking yields positive results. Negative thinking yileds negative results. Don't get caught thinking negatively. The results are almost always predictable and ofen devastating.
(pp/99-100)
他にも怪しいネタが...
これら以外にも、笠巻勝利氏は怪しいネタを「眼からウロコが落ちる本」に収録している。ほぼトンデモなこれとか...
事実に基づくネタだが、あちこち欠落・変形しているこれとか...
こんな調子なので、おそらく、収録されたネタのすべてが怪しいと思われる。
【Othersの最新記事】
生長の家関連で学校?で生徒が用務員にイタズラしたら心の力で死んじゃったというはなしをきいたことがあるが根拠は怪しいね。3代目はどうするやら。
切ったふりして暗示で出血多量だと思わされた人が死んだとか、
熱いと言って押し当てられた電源の入ってないアイロンでアイロン型の火傷が出来たとか、
そんな話はよく聞くので、こちらを読むまで疑ってもいませんでした。
アホだな、私。
きっとまだまだ沢山あるのだろうと思います。
事実と信じている都市伝説。
でも、何がそうなのかなかなか自分では気が付かないから難しいですね。
成功法則系マルチに騙される下敷きみたいなものなのに。
あ〜、ヤダヤダ。
ローズマリーrosemaryさんによれば、生長の家の「生命の実相」2巻(1962)に、Flammarionの引用として記述があるとのこと。
Flammarionの英訳バージョンの記述(原書はフランス語)は...
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An idea, an impression, a mental commotion, while entirely internal, can produce in another direction physiological effects more or less intense, and is even capable of causing death. Examples are not wanting of persons dying suddenly in consequence of emotion. The power which imagination is capable of exercising over life itself has long been established. The experiment performed in the last century in England on a man condemned to death, who was made the subject of a study of this kind by medical men, is well known. The subject of the experiment was fastened securely to a table with strong straps, his eyes were bandaged, and he was then told that he was to be bled from the neck until every drop of his blood had been drained. After this an insignificant puncture was made in his skin with the point of a needle, and a siphon arranged near his head in such a manner as to allow a continuous stream of water to flow over his neck and fall with a slight sound into a basin placed on the floor. At the end of six minutes the condemned man, believing that he had lost at least seven or eight quarts of blood, died of terror.
ひとつの考え、ひとつの印象、そしてひとつの精神的動揺が、内的ではあっても、別の方向の生理現象を大なり小なり引き起こし、ときには死に至らしめることもある。感情の帰結として突然死した人々の例には事欠かない。生命さえも奪ってしまう想像の力の存在は確立された事実である。前世紀に英国で、医師たちによる、この種の研究の被験者となった死刑囚に対して行われた実験はよく知られている。実験の被験者は丈夫なベルトで台に縛り付けられ、包帯で目隠しされて、血液を首から最後の一滴まで流出させると告げられた。そのあと、男の皮膚の針を刺して目立たない音を立てた。そして、男の首をつたって水が流れ、床に落ちて目立った音を立てるように、サイフォンが配置された。6分後に、少なくとも7〜8クォートの血液を失ったと信じた死刑囚は、恐怖で死亡した。
http://archive.org/stream/linconnuunknown00flam/linconnuunknown00flam_djvu.txt
Camil Flammarion: L'inconnu= The unknown, 1990, p.236
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