しかし、インテリジェントデザインの数学担当Dembskiは、それは進化ではなく、もともとデザインされた機能が突然変異で発現しただけと言う。
ナイロンを食べるバクテリアは進化の例である
インテリジェントデザインの数学担当Dr. William A Dembskiは、CSI(Complex Specified Information)は自然法則と偶然では説明できないと主張する。このCSIの定義は、自然法則による必然では説明できなくて、偶然にしては確率が小さすぎ、かつ意味のある情報(エントリ,wiki,Dembski 1998)。
これの反証として、Imaginove社が運営するサイト「LiveScience」のスタッフライターKer Thanの2005年9月23日の記事「Why scientists dismiss "intelligent design"(何故、科学者はインテリジェントデザインを退けるのか)」に、進化の証拠として有名な例であるナイロン問題が紹介されていた:
In 1975, Japanese scientists reported the discovery of bacteria that could break down nylon, the material used to make pantyhose and parachutes. Bacteria are known to ingest all sorts of things, everything from crude oil to sulfur, so the discovery of one that could eat nylon would not have been very remarkable if not for one small detail: nylon is synthetic; it didn't exist anywhere in nature until 1935, when it was invented by an organic chemist at the chemical company Dupont.Ken Thanは"日本の科学者"としか書いてないが、Cite先は:
パンティーストッキングやパラシュートの製造に使われるナイロンを分解するバクテリアの発見を日本の科学者が1975年に報告した。バクテリアは原油から硫黄まであらゆるものを摂取することが知られていたので、ナイロンを食べるバクテリアの発見はただ一つの小さな点がなければ特に注目に値するものではなかった。その一点とはナイロンは合成物だということ。1935年に化学会社デュポンの有機化学者が発明するまで自然界に存在しないものだった。
The discovery of nylon-eating bacteria poses a problem for ID proponents. Where did the CSI for nylonase—the actual protein that the bacteria use to break down the nylon—come from?
ID支持者にとってナイロンを食べるバクテリアの発見は問題である。バクテリアがナイロンぶ分解に使う実際のタンパク質であるナイロナーゼのCSIはどこから来たのか?
There are three possibilities (可能性は3つ):
- The nylonase gene was present in the bacterial genome all along.(ナイロナーゼ遺伝子は昔からバクテリアのゲノムにあった)
- The CSI for nylonase was inserted into the bacteria by a Supreme Being.(ナイロナーゼCSIは、神がバクテリアに仕込んだ)
- The ability to digest nylon arose spontaneously as a result of mutation. Because it allowed the bacteria to take advantage of a new resource, the ability stuck and was eventually passed on to future generations.(ナイロンを分解する能力は突然変異によってできた。新たな資源を使える利点を得たバクテリアは、その能力を備えて、たまたま次の世代に伝わった)
Apart from simply being the most reasonable explanation, there are two other reasons that most scientists prefer the last option, which is an example of Darwinian natural selection.
単に最も理にかなった説明であることはわきに置くとしても、大部分の科学者が最後のオプションを選ぶ理由が2つある。それはダーウィンの自然淘汰の例であること。
First, hauling around a nylonase gene before the invention of nylon is at best useless to the bacteria; at worst, it could be harmful or lethal. Secondly, the nylonase enzyme is less efficient than the precursor protein it's believed to have developed from. Thus, if nylonase really was designed by a Supreme Being, it wasn't done very intelligently.
第1に、ナイロンの発明前には、ナイロナーゼ遺伝子を持っていることは、何の役にもたたないか、最悪それは有害か致命的でありえた。第2にナイロナーゼ酵素は、進化する前のタンパク質よりも効率的ではない。従って、もし神によって本当にデザインされたなら、あまりインテリジェントとは言えない。
Kinoshita, S., Kageyama, S., Iba, K., Yamada, Y. and Okada, H., Utilization of a cyclic dimer and linear oligomers of ε-aminocapronoic acid by Achromobacter guttatus K172, Agric. Biol. Chem., 39, 1219–1223, 1975.
1935年まで存在しなかったナイロンを食べるバクテリアの発見。なかなか面白いところを衝いている。
Dembskiは
Dr.Willam A Dembskiは2日後に、Dembski自らのブログUncommon Descent(非共通祖先)の2005年9月25日付けのエントリ「Why Scientists Should NOT Dismiss Intelligent Design(何故、科学者はインテリジェントデザインを退けてはいけないか)」で反論している。
Actually, the mutation did cause a stop codon; but the stop codon was due not to frame shift but to the sequence introduced by the inserted nucleotide. Simultaneously, the mutation introduced a start codon in a different reading frame, which now encoded an entirely new sequence of amino acids. This is the key aspect of the sequence. It had this special property that it could tolerate any frame shift due to the repetitive nature of the original DNA sequence. Normally in biology, a frame shift causes a stop codon and either truncation of the protein (due to the premature stop codon) or destruction of the abberant mRNA by the nonsense-mediated decay pathway. Nonetheless, the nylonase enzyme, once it arose, had no stop codons so it was able to make a novel, functional protein.
実際のところ、突然変異により停止子ドンが生成された。しかし、停止コドンはフレームシフトではなく、ヌクレオチドの挿入によるものだった。同時に突然変には別のリーディングフレームにスタートコドンを導入した。このフレームはまったく新しいアミノ酸シーケンスをコード化していた。これがシーケンスの鍵となる観点である。それは、オリジナルのDNAシーケンスの繰り返しの性質により、いかなるフレームシフトも許容されるという特別な性質を持っていた。通常の生物では、フレームシフトは停止コドンを引き起こすので、(早めの停止コドンによって)タンパク質が打ち切られるか、意味のない崩壊経路でmRNAが破壊される。しかしながら、ナイロナーゼ酵素は、それがおきても停止コドンにならないので、新しい機能を持つタンパク質を生成できた。
Most proteins cannot do this. For instance, most genes in the nematode have stop codons if they are frame-shifted. This special repetitive nature of protein-coding DNA sequences seems really rare; one biologist with whom I’ve discussed the matter has never seen another example like it. Maybe it’s more common in bacteria. Thus, contrary to Miller, the nylonase enzyme seems “pre-designed” in the sense that the original DNA sequence was preadapted for frame-shift mutations to occur without destroying the protein-coding potential of the original gene. Indeed, this protein sequence seems designed to be specifically adaptable to novel functions.
大部分のタンパク質はこのようなことはできない。たとえば、フレームシフトすれば、線虫の中の大部分の遺伝子は停止コドンとなる。このような、タンパク質コード化DNAシーケンスの特別な繰り返しの性質は非常に稀である。私がこの問題を議論した生物学者はこのような例を他に見たことがないと言っていた。従って、Millerが言うのとは反対に、オリジナルの遺伝子のタンパク質をコード化するポテンシャルを破壊せずにフレームシフト突然変異が可能なように、オリジナルのDNAシーケンスが予め適応していたという意味で、ナイロナーゼ酵素は"予めデザインされていた"ようである。本当に、このタンパク質シーケンスは、新しい機能に特に適応できるように設計されていたようである。
「突然変異しても無意味なコードにならないように予めデザインされていたようだ」というのがDembskiの反論。つまりは、インテリジェントデザイナーはデュポンによるナイロンの発明を想定して、バクテリアのDNAにナイロン分解機能をこっそり組み込んでいたかなあ...ということ。
で、新たに Complex Specified Imformation が加わったのではないから、進化ではないということらしい。
インテリジェントデザイナーが1935年〜1975年のどこかの時点で、バクテリアのDNAを組み替えたと主張してもインテリジェントデザイン理論は壊れないのだが。どうも、直近のデザイナーの介入という主張はしたくないようだ。
なお、なんと、Ken Ham主宰の若い地球の創造論サイトAnswers in Genesis(AiG)は、TJ—in-depth Journal of Creation 2003年12月号の「The adaptation of bacteria to feeding on nylon waste (ナイロン分解で糧を得るように適応したバクテリア)」で対応済み。執筆は Don Batten(Creationist Agricultural Scientist/Australia)である。記事の論旨は「もともと用意されていた機能が、突然変異で発現したものなので、進化ではない。」というもの。
DembskiはAiGと同じことを言ってしまってのであった。