2009/09/14

ホメオパスたちは自らホメオパシーの未来を閉ざす(2)

昨日に引き続き、The Guardianにも連載を持つBad ScienceのBen Goldacreによるホメオパシーについての2007年9月15日の記述を取り上げる。

このエントリは昨日取り上げたLancet掲載記事の元となった記事のようで、一部内容が重複する。要点は:

  • 口から出まかせはホメオパスの仕事だ。そして、通常医療を攻撃することはホメオパスたちのマーケティング手段だ。
  • それら2つのリスクをホメオパスたちが確実に管理できるのであれば、ホメオパシーはおそらく無害で、有益である。
  • しかし、ホメオパスたちには自己批判の兆しがみられない

ここで、Ben Goldacreは、ひとつの例として英国ホメオパシー協会(The Society of Homeopaths)が2007年に主催したコンファレンスの講演者Harry van der Zeeによる、ホメオパスPeter ChappellによるAIDSを治療するPCレメディの講演を取り上げている。

[Ben Goldacre: "Homeopathy gives you Aids" (2007/09/15) on Bad Science]

砂糖錠剤を与えるというホメオパスの考えは何も間違っていはいない。砂糖錠剤ではなく、治療の文化的な意味から、プラセボ効果は非常に強力だ。そのことは、1日4錠のプラセボ砂糖錠剤を与えた場合、2錠の場合よりも胃潰瘍の治療に効果的であるという研究からもわかる。この効果は主観的なものではなく、胃カメラによる測定結果である。塩水注射が砂糖錠剤よりも痛みの治療に有効であるのは、注射された塩水に医療効果があるからではない。注射がよりドラマティックな治療行為だからだ。緑色の砂糖錠剤が赤色よりも鎮静効果が大きいのは、錠剤の染料の生科学的な効果ではなく、緑と赤という色の文化的意味合いの効果によるものだ。そして、錠剤の包装そのものにも有益な治療効果があることがわかっている。

同様に、砂糖錠剤には身体への副作用がないことも分かっている。多くの背中の痛みや医学的に説明できない疲労や大半の風邪など、生医学的治療法があまりない患者たちがいるので、これは大きい。医学的治療を通過して、本に載っている薬品をすべて試しても、副作用を誘発するだけだ。なので、砂糖錠剤は立派な薬剤なのだ。19世紀のロンドンでのコレラの流行のとき、結果として、ホメオパシー病院での生存率は、通常医療の病院での生存率を上回った。これはホメオパスがコレラを治療したからではない。誰もコレラを治療できなかったのだ。当時は瀉血のようなリスクを伴う有効でない医学治療が行われていたが、砂糖錠剤には少なくとも害はなかった。

AIDSやマラリアやMMRのような重大な病気について口をつぐんでいられれば、ホメオパスたちは結構なものなのだが。


私は今週(2007/09)、英国最大のホメオパス職業団体である(職業的ホメオパスを代表する)ホメオパス協会(the Society of Homeopaths)が主催するコンファレンスについて「HIV/ADIS治療におけるホメオパシーの役割についての魅力的な洞察について、ロンドンでの1日シンポジウムに参加しよう」と書かれたフライヤーを受け取った。

これはとても魅力的なフライヤーだ。「アフリカに蔓延するAIDSを治療する有効なレメディを探求した、英国のホメオパスPeter Chappellが病気全体にフィットしたレメディをデザインする方法を発見した。これらのレメディとは今はPC-remediesとして知られるものだ」 どうやってレメディを作るとか知りたければ、Peter Chappellのサイトを見ればいい。「非公開な特別のプロセスを使って病気に合わせて、ホリスティック・ミラー・エネルギー/情報を創る」と書かれている。

さらにPeter ChappellはiTunesでエナジーウェーブパターンを売っている。私は今Aids用のパターンを聞いているのだが、それはジャズのような感じである。しかし、これは「キャリア」であって、この上に「ヒーリングレゾナンス」が「のせられる(engraft)」。彼は「現代量子物理学は、あらゆるレベルの存在にレゾナンスが働くことを確認した」と言う。

ホメオパス協会のコンファレンス資料は、まくしたてている。「彼[講演者]は、ほんの数日か数週間で患者の症状が消えて、職場や学校に復帰し、あるいは子供たちの世話ができるようになるのを観察した。Harryは信じている。PC1レメディを使えば、AIDSの蔓延を解消することができると。そして、それができるのはホメオパスたちだと。」Harry自身のサイトではもっと直接的に表現している。「PC1 for HIV/AIDS works」と。どのくらいうまくいくかって?「あらゆる症例に」

プラセボは偉大だが、あまりに激しくおだてられば、人は我を忘れる。ホメオパシーには、これの悪しき前例がある。Newsnightの秘密調査で、10人のホメオパスが、マラリアの高リスク地域へ旅行する人々に、有効性のないホメオパシーのマラリア予防を使うことを推奨し、もともな助言をしていないことがわかった。(これに対する苦情にホメオパシー協会が答えた例はない)公表された秘密調査では、調査員がワクチンについて助言を求める母親のふりをして77名のホメオパスを調査した。この調査おいて、ひとりのホメオパスもMMRワクチンの接種を奨めず、1/3のホメオパスがMMRワクチンを接種させないように助言した。

一方、開会中の議会ではホメオパシーとそのNHS病院を擁護する動議(EDM)が200名の署名を集めた。署名者にはFrank Dobson(労働党議員)、Glenda Jackson(労働党議員)、Simon Hughes(自民党議員)、Diane Abbott(労働党議員)、Lembit Opik(労働党議員)、Ann Widdecombe(保守党議員)、Malcolm Rifkind(保守党議員)が含まれる。口から出まかせはホメオパスの仕事だ。そして、通常医療を攻撃することはホメオパスたちのマーケティング手段だ。それら2つのリスクをホメオパスたちが確実に管理できるのであれば、ホメオパシーは無害で、おそらく有益である。しかし、職業的ホメオパスたちに自己批判の兆しは見られない。

References:

  1. Schmidt and Ernst: "MMR vaccination advice over the Internet"
  2. Aspects of MMR , BMJ 2002;325:597
  3. The ridiculous flier
  4. Is your MP on the Early Day Motion?
  5. Listen to the healing waves .. FreeDownload, FAWQ
  6. Newsnight malaria sting transcripts
  7. Sandra Hempel: "The Medical Detective: John Snow, Cholera and the Mystery of the Broad Street Pump"
  8. Daniel E. Moerman: "Meaning, Medicine and the 'Placebo Effect' "
このエントリで、Ben Goldacreが取り上げたフライヤーはこれ:
HIVAIDShomeopaths.png

これを見て、ただちに思いつくのが、サハラ以南のHIV/AIDSの状況。特に成人5人のうち1人がHIV感染者で、毎日1000人以上がAIDSで死亡し、少なくとも片親がAIDSで死亡した、0〜17歳の子供は140万人いる南アフリカ。この南アフリカでは1990年からHIV感染が拡大し、Nelson Mandela政権のときに妊婦のHIV感染率が20%を超えた。後を継いだThabo Mbeki大統領はHIV否定論を信じ、抗レトロウィルス剤によるAIDS対策に消極的で、レモン・ガーリック・テービルビートの効用を主張するManto Tshabalala-Msimangを厚生相にした。これによりHIV/AIDS対策が遅滞し、33万人が余計に死亡したと推定されている(AIDSによる200万人以上の死者のうち)。2008年のThabo Mbeki辞任により、HIV/AIDS対策は立ち直りつつあるが、今も南アフリカでは短寿命化しており、若い世代の死亡率の増加は社会機能の維持に大きなインパクトをもたらすと危惧されている。

この南アフリカに、「ほとんど病気はビタミンCとリジンの不足で起こり、AIDS治療には抗レトロウィルス薬よりビタミン剤が有効だ。抗レトロウィルス剤を有害だ」と宣伝するMatthias Rathが登場している(2008年6月に退場)。Peter Chappellたちは、このMatthias Rathと何ら違わない。

Peter Chappellを継続的に取り上げているgimpyによれば、Peter Chappellは英国ホメオパス協会(the Society of Homeopaths)の資金援助で、アフリカで活動している:
The Homeopathic Action Trust (HAT), the homeopathy charity controlled by the Society of Homeophs (SoH) and funders of Jeremy Sherr have had the ethical issues associated with funding amateur trials of AIDS patients in the developing world pointed out to them. This did not stop them funding Jeremy Sherr and it has not stopped them continuing to fund extremely dubious projects in Africa.

th Society of Homeopaths(英国ホメオパス協会)とJeremy Sherrの資金提供者によってコントロールされるホメオパシー慈善団体The Homeopathic Action Trust(ホメオパシー活動トラスト=HAT)は、発展途上国でのAIDS患者を対象とするアマチュア実験に資金援助している件について倫理的問題をかかえている。このことでJeremy Sherrへの資金提供は止まらず、アフリカでの非常に怪しいプロジェクトへの資金援助は続いている。

Peter Chappell and Harry van der Zee’s Amma Resonance Healing Foundation (ARHF) has been criticised by many bloggers, Sense About Science and newspapers columnists for claims such as that AIDS patients using his remedies ” do better or sometimes much better than on ARVs alone.”. There is no evidence for this despite the recruitment of Professor Harald Walach of Northampton University to oversee research. Chappell’s remedies are not physical substances, but vibrations of atoms and molecules, what we call ’sounds’. Chappell believes sound can cure AIDS, the trauma of rape and the side effects of ARVs. So convinced is he of his products success that he is actively pushing it to healthcare workers in the developing world. Chappell’s work is funded in part by HAT, who take donations on behalf of ARHF

Peter ChappellとHarry van der ZeeのAmma Resonance Healing Foundation(アムマ・レゾナンスヒーリング財団=ARHF)は、多くのブロガーや英国Sence About Science財団や新聞のコラムニストたちから、彼のレメディを使うと「AIDSをARVsよりもうまく治療できる」といった主張を批判されてきた。海外研究にNorthampton UniversityのHarald Walach教授を充てたが、その主張には証拠がない。Chappellのレメディは物質ではなく、我々が"音"と呼ぶ原子と分子の振動であり、Chappellは音がAIDSやレイプのトラウマやARVの副作用を治療できると信じている。Chappellは自ら作ったものの成功を深く信じていて、それを発展途上世界の医療関係者に売り込んでいる。Chappellの仕事はHATからの資金援助を受けており、HATはATHFに代わって寄付を集めている。

[gimpy: "Homeopathic Action Trust still funding unethical AIDS trials" (2009/07/20) on gimpy's blog]
Ben Goldacreが2007年に指摘した状況が、2009年でも何ら変わることなく続いていることがわかる。


posted by Kumicit at 2009/09/14 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | Quackery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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