[Dr Alicia White: "How to read articles about health and healthcare" via Bad Science]とてもいい解説だ。おおよそこのような観点で、NHS Choicesは研究内容の正否ではなく、記事が報道する研究について整理した記事を日々アップしている。
朝のコーヒーを吹き出しそうな見出しの健康関連の記事を読んだら(「コーヒーを飲むと癌になる」というのは、いつものトリックと書いてあれば十分だ))、空襲の標語「落ち着いて行動せよ」にしたがうのがベストだ。読み進めれば、記事の見出しが何か重要なものを無視していることがわかる。たとえば「本当に高濃度に濃縮したコーヒー溶液を5匹のラットに注射したら、最終的に腫瘍になるかもしれない変化が細胞に見られた」とか。そして、研究が紅茶マーケティング協会の資金援助を受けていたりとか)
覚えておくべき最も重要なルールは「見出しをそのまま信じないこと。」見出しは、キミを引きつけて新聞を買わせて、記事を読ませるためにある。「コーヒーが癌を引き起こす可能性はほとんどないが、キミはそのことを知らない」とかだったら、読む気にならないだろう。
新聞にコーヒーを吹き出す前に、報道されている研究について記事が何を言っているのか調べる必要がある。私が働いている会社BazianはNHS ChoicesのBehind The Headlinesのために何百もの記事を調べた。そして、どの記事を信じて、どの記事を信じないか判断するための質問を作り上げた。記事の主張は科学的研究に支持されているか?
治療法や病気を予防する、あるいは起こすと思われるライフスタイルを宣伝している記事が、その背後にある科学的研究についての情報を載せていないか、未発表の研究を参照している場合は、用心した方がいい。そう、記事を丸めて、リサイクルごみ箱に投げ込むくらい用心したほうがいい。記事は学会予稿に基づくものか?
別の警告で、新聞記事が学会予稿に基づくものかどうか。学会での研究の発表は初期段階のものであることが多く、その分野の専門家によって詳細に調べらていない。また、学会予稿は研究方法について詳細に書かれていることはなく、研究がどれだけまともに行われたか判断するのがむつかしい。これらの理由により、学会予稿に基づく記事は警報ではない。あわてずないように。あるいは主治医にかけ込まないように。その研究は人間についてのものか?
見出しにある「奇跡に治療法」は多くの場合、実験室内の細胞あるいは動物について検証されたものだ。このような記事には、多くの場合、人間の写真がつけられていて、「奇跡の治療法」が人間についての研究の成果であるかのようなイリュージョンを創りだしている。細胞や動物の研究は重要な第1歩であり、軽視してはいけない。しかし、実験室の細胞で有望な結果を出した多くの薬剤は動物では働かない。そして動物において有望な結果を出した薬剤の多くは、人間ではうまく働かない。ラットを治療する薬剤や食品についての見出しを読んだとして、それは将来に人間を治療することがあるかもしれないが、残念ながら、その可能性はほとんどない。記事で取り上げられた「驚異の食品」を大量に食べ始める必要はない。その研究はどれだけの人間が参加したか?
一般的に、研究規模が大きいほど、その結果はより信頼できる。小規模な研究は統計的な「力」を欠いており、重要な違いを見落とすかもしれない。また小規模な研究では、間違いを含め、発見が純粋に偶然に左右される。このことはコイン投げを考えればよくわかる。我々はコイン投げをしたら、表が出る確率は裏が出るか率と同じである、すなわち50/50であることを知っている。しかし、もし我々がそのことを知らないとして、コインを4回投げてみて、3回表が出たら、表が出やすいと結論してしまうかもしれない。しかし、この偶然の発見は誤りだ。もしコインを500回投げて、実験に統計的な"力"を与えれば、我々が裏と表の回数が同じくらいになり、正しいオッズについて、より正確な考えを持つことができる。なので、ほんの数人を対象とする研究なら、用心しておくべき。その研究に対照群があるか?
研究には様々な種類があり、異なる種類の問題に答えるために適切な方法がある。治療法や何かの作用の効果があるかどうか調べる研究なら、対照群が必要だ。対照群を使うことで、治療や作用を受けた人々に何が起きたかと、治療や作用を受けなかった人々に何が起きたかを比べるられる。対照群がなければ、治療や作用の結果かどうかについて、確からしいことは何も言えない。
さらに、対照群の人々が、治療や作用を受けた実験群の人々と、可能な限り、ほぼ同様な条件の人々であることが重要である。これを実現する最もよい方法は、ランダムに治療・作用を受ける群と対照群に人々を分けることである。これが、治療や作用の効果を検証する鉄則な方法であるランダム対照化実験である。なので、効果があるという薬剤や食品や治療法についての記事を読むとき、対照群があることの証拠、理想的にはランダム対照化実験が行われた証拠があるかを、さがしてみてほしい。もしなければ、研究結果に疑いを持っておいた方がいい。研究内容は実際に見出しに書かれていることを検証したものか?
これは、「代理結果」について詳しく触れずに説明するには、ちょっと慎重にならないといけない。ここでは詳しく説明する代わりに、カギとなる考え方を述べておく。すなわち、見出しや記事が言っていることを、研究が検証しているかどうか(注意しておくと、必ずしも、これがあてはまるわけではない)。たとえば、「トマトは心臓発作のリスクを低減する」という見出しを読んだとしよう。そのときやるべきは、実際に研究が心臓発作を対象とした証拠をさがすことだ。記事には、トマトは血圧を下げると書いてあるかもしれない。これは、「高血圧は心臓発作のリスクがあるので、トマトは心臓発作にも高があるはずだ」と、誰かが推定したことを意味する。このような推定は正しいこともあるが、そうでないこともある。新聞記事が、研究結果が検証していない健康への効果を扱っていたら、真に受けてはいけない。研究資金の出所はどこか?
これはちょっとシニカルなポイントだが、考える意味がある。今日の実験の多くは、検証対象となる薬剤やビタミンクリームや食品材料などの製品の製造業者の資金で実施される。これは製造業者が実験結果に利害関係があり、このことが意識的あるいは無意識的に研究が発見し報告する内容に影響を与える可能性があることを意味する。これは製造業者の資金による研究が信頼できないというのではない。多くはちゃんとしたものだ。しかし、利益相反の可能性ががないか見るには、資金提供者が誰であるか知っておく必要がある。報道したメディアが悪いのか?
ときにはジャーナリストたちは、ある研究を取り上げて、歪曲して報道し、科学者たちが言ってもいない主張をつくりあげる。あるいは、科学者たちや、科学者たちが所属する研究機関が過大な推定をして、研究が支持できない主張をつくりあげこともある。そして、これらの主張はジャーナリストたちによって、繰り返される。誤った主張は、色々なところで発生する。ただちにジャーナリストが悪いと決めつけるべきではない。もっと知るには?
短い記事で、研究について問う必要がある項目をすべてカバーするには無理だが、重要なものの一部はカバーした。メディアの健康関連報道の日々の解説は、NHS ChoicesのBehind the Headlinesを見てほしい。
==>Behind the Headlines on NHS Choices
("Coffee causes cancer" usually does the trick)
の部分なのですが、
do the trickには「功を奏す、目的を達成する」といった意味があるので
朝のコーヒーを吐き出したくなるような記事(たいていは"コーヒーを飲めば癌になる"と書いてあれば十分だ)
に出会ったら、空襲の標語〜
といった感じではないでしょうか。
大半のエントリがソースは英語なので、けっこう色々やっちゃっている気もしてます。