2009/09/28

ID理論家の習性についてのID理論

インテリジェントデザインの本山たるDiscovery Instituteのスタッフで、修士課程まで地球科学で、その後は法律に転じたCasey Luskinがこんなものをサイトに掲載した。

==>The College Student's Back to School Guide to Intelligent Design

記述内容は著者名をみなくてもCasey Luskinが書いたとわかるくらいに、Casey Luskinな文章である。ちょっと長いめだが、中味を見ていくことにする。

まずは、インテリジェントデザイン運動にあって、Casey Luskinだけが書いている特徴的な内容から。これはインテリジェントデザインが「観察・仮説・実験・結論」という科学の形式に則っているという「形式的」主張で、Casey Luskinが大学時代から書いている内容[ie >a href="http://www.ideacenter.org/contentmgr/showdetails.php/id/1154">IDEA FAQ]である:

Objection #1: Intelligent Design Is Not Science



The Short Rebuttal: Intelligent design is science because it uses the scientific method to make its claims. Specifically, it detects design by using empirical data to test its positive predictions. ID is based upon empirical data and uses well‐accepted scientific methods of the historical sciences in order to detect in nature the types of complexity which we understand, from present‐day observations, are derived from intelligent causes. One can disagree with ID, but one cannot characterize it fairly as a “faith‐based” argument.

インテリジェントデザインは、その主張を科学的方法を使って作っているので、科学えだる。特に、ポジティブな予想の検証に経験的データを使って、デザインを検出している。インテリジェントデザインは経験的データに基づき、これをうまく使っている。現在の観測から我々がインテリジェントな原因であると理解するタイプの複雑さを自然界に検出するために、歴史的科学の認められた科学的方法を使っている。インテリジェントデザインに不同意であったとしても、インテリジェントデザインを公正に「信仰に基づく論」だとは特徴づけられない。

The Long Rebuttal: Intelligent design uses the scientific method to make its claims. The scientific method is commonly described as a four‐step process involving observations, hypothesis, experiments, and conclusion.

インテリジェントデザインは科学的方法を使って主張を作る。科学的方法は一般には、観察と仮説と実験と結論という4つの段階として記述される。
Luskinの話の展開が妙なのは、「インテリジェントデザインは科学の方法論を使っている」というネタを、「インテリジェントデザインは宗教ではなく科学である」の答えに持ってきたことによる。

まあ、それはさておき、その後のLuskin定番の「仮説・検証・観察・結論」へと進もう。
1. Observations: ID begins with the observation that intelligent agents produce specified complexity (also called complex and specified information, or “CSI”). ID theorist Stephen C. Meyer observes that, “Our experience‐based knowledge of information‐flow confirms that systems with large amounts of specified complexity (especially codes and languages) invariably originate from an intelligent source from a mind or personal agent.”14

観察: インテリジェントデザインはインテリジェントエージェントが指定された複雑な情報(あるいは複雑で指定された情報あるいはCSI)を作るという観察から始める。インテリジェントデザイン理論家Stephen C. Meyerは「我々の情報の流れの経験的知識は、大量の指定された複雑な情報、特にコードと言語は、常に心や個人的エージェントのインテリジェントなソースから始まる」と観察している。[14]

[14] Stephen C. Meyer, “The origin of biological information and the higher taxonomic categories,” Proceedings of the Biological Society of Washington, Vol. 117(2):213-239 (2004).
Index to Creationist Claims, edited by Mark Isaakでは、大枠としては、以下が対応する項目:


ここでは、おそらく重要なインチキは:
あたり。もちろん、このへんも:

そして、実はこれが論の本体で、記述自体は正しい:
2. Hypothesis: ID theorists hypothesize that if a natural object was designed, it will contain high levels of CSI.

仮説: 自然物がデザインされていたら、高度な水準のCSIが含まれているはずだという仮説をつくる。
定義不明なCSIではあるが、それを許容すれば、この記述は間違いではない。人間による遺伝子操作生物にはスペシャルな機能が組み込まれているわけで、まさにこの仮説の記述の例である。

問題は、この仮説が"証明"されても、「高度な水準のCSIが含まれていれば、その自然物はデザイされた」という逆命題の正しさとは何の関係もないこと。

そこで、補助仮説「定義されざるCSIは、還元不可能な複雑さである」+「還元不可能な複雑さは進化では生まれない」をさりげなく追加する:
3. Experiment: Scientists then perform experimental tests upon natural objects to determine if they contain CSI. One easily testable form of CSI is irreducible complexity (IC), which exists in systems composed of “several interacting parts that contribute to the basic function, and where the removal of any one of the parts causes the system to effectively cease functioning.”15 IC can be experimentally tested by reverse‐engineering biological structures to see if they require all of their parts to function.

実験: 科学者は自然物に対して実験して、それがCSIを含んでいるか決定する。容易に検証可能なCSIは還元不可能な複雑さ(IC)である。これは複数の部品から構成されるシステムで、それらは相互作用して基本的な機能を実現していて、ひとつでも部品を取り去ると有効な機能を失うというものである[15]。還元不可能な複雑さ(IC)は生物学的構造をリバースエンジニアリングして、全部品が機能に必要か確かめることで経験的に検証できる。

4. Conclusion: Irreducibly complex systems would be unlikely to evolve through a Darwinian process because there exists no evolutionary pathway wherein they could remain functional during each small evolutionary step.16 IC is a reliable indicator of design because “[i]n all irreducibly complex systems in which the cause of the system is known by experience or observation, intelligent design or engineering played a role the origin of the system.”17 When ID researchers find IC in biology, they conclude that such structures were designed.

結論: 還元不可能に複雑なシステムはダーウィンの過程では進化しそうにない。というのは、各進化ステップを通して機能を残す進化経路が存在しないからだ[16]。還元不可能な複雑さはデザインの信頼できる指標である。というのは、経験また観測によって、システムの起源がわかっている、あらゆる還元不可能に複雑なシステムは、システムの起源にインテリジェントデザインあるいはエンジニアが役割を演じていからだ[17]。インテリジェントデザイン研究者が、生物に還元不可能な複雑さを見つけたら、彼らはそのような構造はデザインされたと結論する。

[15] Michael J. Behe, Molecular Machines: Experimental Support for the Design Inference, in Intelligent Design Creationism, in Intelligent Design Creationism and Its Critics: Philosophical, Theological, and Scientific Perspectives, pg. 247 (Robert T. Pennock ed., MIT Press 2001).
[16] As Darwin wrote in Origin of Species, “If it could be demonstrated that any complex organ existed which could not possibly have been formed by numerous, successive, slight modifications, my theory would absolutely break down.”)
[17] Scott A. Minnich & Stephen C. Meyer, Genetic Analysis of Coordinate Flagellar and Type III Regulatory Circuits in Pathogenic Bacteria, in Proceedings of the Second International Conference on Design & Nature, Rhodes Greece, pg. 8, at http://www.discovery.org/scripts/viewDB/filesDB-download.php?id=389
仮説「還元不可能な複雑さは進化では生まれない」が正しければ、この結論は正しくなるかというと、そうではない。「還元不可能な複雑さはデザイン以外では生まれない」が正しくないと、「見つかった還元不可能な複雑さは進化以外の何かによって生じた」より前へは進めない。

ところで、「還元不可能に複雑なシステム」は進化経路としては"前適応"に相当するネタ。有名な「還元不可能に複雑なシステム」は当然、研究ネタになっていて、おおよそ始末がついているもよう:このため、3.と4.は既に過去の遺物化している。

とはいえ、よく読むとLuskinの記述は、ある意味正しいかもしれない。なぜなら、「還元不可能な複雑さはデザインの証拠」ではなく、「インテリジェントデザイン研究者が、生物に還元不可能な複雑さを見つけたら、彼らはそのような構造はデザインされたと結論する。」と書いてあるから。

つまり、インテリジェントデザイン"理論"がインテリジェントデザイン理論家の習性に対する論であるなら、Luskinの仮説・予測・観察・結論はまったく正しい。

ところで、Luskinの文章には、さらに続きがある:
ID is an historical science, meaning it employs the principle of uniformitarianism, which holds that the “present is the key to the past.” ID thus begins with present‐day observations of the products of human or animal intelligence and notes the types of information that result. ID theorists then examine the historical record to determine if those same informational properties exist in nature and therefore warrant explanation by design. Design proponents thus use standard uniformitarian reasoning to apply an empirically‐derived cause‐and‐effect relationship between intelligence and certain types of informational patterns to the historical scientific record in order to account for the origin of various natural phenomena.

インテリジェントデザインは歴史的科学である。これは「現在は過去のキーとなる」という斉一説の原則を採用している。したがって、インテリジェントデザインは現在の人間や動物のインテリジェンスの産物の観察から始め、そこから生じる情報のパターンに注意する。インテリジェントデザイン理論家は、歴史記録を調べて、自然界に同様な情報特性をもつものが存在し、したがってデザインの説明を保証するかを決める。デザイン支持者は、したがって、標準的な斉一説の推論をつあって、、インテリジェンスとある種の情報パターンの間に、経験から導かれる原因と結果の関係を、さまざまな自然現象の起源を説明するために歴史的科学的記録に適用する。

ID is not a “faith‐based” argument. It is an empirically‐based argument that seeks to detect in nature the types of complexity which we know derive from intelligent causes. One can disagree with the conclusions of ID, but one cannot reasonably claim that it is an argument based upon religion, faith, or divine revelation.

インテリジェントデザインは、信仰に基づく論ではない。これは経験に基づく論であって、我々がインテリジェントな原因によるものだと知っているタイプの複雑さを自然界に検出しようとするものである。インテリジェントデザインに不同意であったとしても、インテリジェントデザインを合理的に「宗教や信仰や神の啓示に基づく論」だとは特徴づけられない。
タイトルは「Objection #1: Intelligent Design Is Not Science (「インテリジェントデザインは科学ではない」への反論)」だったが、いつのまにか「インテリジェントデザインは宗教だ」への反論になっている。まあ、それはどうでもいいことだが。




posted by Kumicit at 2009/09/28 23:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | DiscoveryInstitute | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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