2009/10/06

悪の遺伝子 vs "Evil Genes"

原著にある序文・前書き・注釈・参考文献・索引・後書きなどが、翻訳本では、訳者あとがきなどの但し書きつきで削除あるいは、断りなく削除されることがあるようだ。

索引はめんどくさいとしても、参考文献(References, Endonotes, Notes)が削除されると、ソース不明なテキストになってしまうのは困りもの。

「悪の遺伝子」も、そんな翻訳本のひとつだ。

「悪の遺伝子」にはどこにも書かれていないが、索引や参考文献(42ページ)などの他に、本文も1/3以上カットされている。"Evil Genes"の目次は:
Foreword (by David Sloan Wilson)
Preface (by Jim Phelps)
Introduction
Chap.1: In Search of Machiavelli
Chap.2: Psychopathy
Chap.3: Evil Genes
Chap.4: Using Medical Imaging to Understand Psychopaths
Chap.5: Insights From My Sister's Love Letters
Chap.6: The Connection Between Machiavellianism and Personality Disorders
Chap.7: Slobdan Milosevic: the Butcher of the Balkans
Chap.8: Lenses, Frames and How Broken Brains Work
Chap.9: The Perfect "Borderpath": Chairman Mao
Chap10: Evolution and Machiavellianism
Chap11: Shades of Gray
Chap12: The Sun Also Shines on the Wicked
Afterword (by Randi Kerger)
For Pondering
Acknowledgements
Text Credits
Illustration Credits
Endnotes
Glossary
Index
これらのうち、翻訳されている部分は、これだけ:

0章 呪われたDNA ................. Introduction
1章 姉はこうして狂っていった ..... Chap.5
2章 「邪悪な成功者」の正体 ....... Chap.1
3章 人の性は善か、悪か ........... Chap.2
4章 気まぐれな遺伝子 ............. Chap.3
5章 共感しない脳 ................. Chap.4
6章 脳が私に嘘をつかせる ......... Chap.6
7章 悪魔に魅入られた男(毛沢東) ... Chap.9
ScienceBlogsを見ていても、評価の大きく分かれる(Bad: Steinn Sigurðsson, ... Good: Greg Laden)本である。それを、論拠不明(EndoNote削除)で、投げっぱなし(後半削除)な翻訳にしてしまったら、評価不可能になってしまう。そもそも、著者も出版社もControversialな本であることがわかっているので、ForewordをDavid Sloan Wilsonに書かせているというのに。

それは、さておき、この「悪の遺伝子」には、ありがちな索引・参考文献・本文削除以外に、ちょっと面白い特徴がある。"Evil Genes"はChapter先頭に、それらしい一文の引用をつけてから、本文に入るという、よくある形式をとっている。その部分が、原著と翻訳では別物になっている:
0章 呪われたDNA

彼の汗のにおいを嗅ぐことができるかね? あの独特のヤギのような汚臭は3-メチル-2-ヘキサノン酸だ。覚えておきたまえ、あれが分裂病のにおいなのだ。
--「羊たちの沈黙」(トマス・ハリス著)より、レクター博士の言葉

Introduction

"My Mother's obsession with the good scissors always scared me a bit. It implied that somewhere in the house there lurked: the evil scissors."
-- Tony Martin, The Late Snow


1章 姉はこうして狂っていった

彼らは美しく、優雅で、とんでもない性悪だ
-- シャム闘魚について、レンスレアー工科大学ラルフ・ノーブル教授

Chap.5: Insights From My Sister's Love Letters

"I'm really easy to get along with once you people learn to worship me"
-- Anonymous


2章 「邪悪な成功者」の正体

心理学者たちが、犯罪者として捕えられた反社会的な人物や医学的に診断可能な異常者の研究ばかりしていた頃 --。社会的生活にするりと入りこみ、巧みに権力を手中にしていく、もっとずっと恐ろしい異常者たちの秘密を明かそうとしたある科学者がいた。

Chap.1: In Search of Machiavelli

"They're beautiful, they're elegant, they're vicious as hell ....
there's a real life lesson here somewhere."
-- Professor Ralph Noble, Rensselaer Polytechnic Institute,
Psychologt of Motivation class, Fall 1991,
on Siamese fighting fish



3章 人の性は善か、悪か

(彼らは)支配下に置いた人間の精神的苦痛から快楽を得る。社会的地位を求めそれに到達し、支配力を行使し、社会的に認められた役割で罰を与える。たとえば、残酷で以上に厳しい罰を与える判事、新兵を虐待する軍曹、メンタルヘルスに関する法律を乱用して患者を監禁する精神科医 --
ヘア、クック、ハート共著 Psychopathy より

Chap.2: Psychopathy

"... and he's refreshingly free of emotional baggage."
-- Tonya, The Tonya Show, apropos her pet iguana Spiro



4章 気まぐれな遺伝子

遺伝子の「変種」である対立遺伝子の気まぐれが、歴史のところどころに恐ろしい「邪悪な成功者」を産み落としてきたとしたら--?
キーワードは、遺伝子の映像化/「スイッチ」を押すストレス/神経内「受信機」の変異/気分を左右する遺伝子/小さな扁桃体/衝動的暴力を起こす酵素。

Chap.3: Evil Genes

"The Problem with the gene pool is there aren't any lifeguards."
-- Anonymous



5章 共感しない脳

脳内には自分の行動をもとにした「型紙」があり、ミラーニューロンがその型紙を使って他人の苦痛を真似し、自動的に共感が芽生える。しかし、このミラーニューロンがいつも正常に機能するとは限らないとしたら...?

Chap.4: Using Medical Imaging to Understand Psychopaths

"In the beginning, there was nothing. And God said, 'Let there be Light.' And there was still nothing. But you could see it."
-- Anonymous



6章 脳が私に嘘をつかせる

絶対に家を掃除しよう、最高のやり方で、残りの人生もそうするつもり...
-- 姉キャロリンの日記から

Chap.6: The Connection Between Machiavellianism and Personality Disorders

"Welcome to the Psychiatric Hot Line:

- If you are obsessive-compulsive, press I repeatedly.
- If you are schizophrenic, listen closely and a little voice will tell you which number to press
- If you have borderline personality disorder, hang up. You have already pushed everybody's buttons."

-- Anonymous



7章 悪魔に魅入られた男(毛沢東)

「共産主義者として生きるためにもっともむずかしいのは、過去の予測に努めなければならないことだ」
-- 旧ユーゴスラビア元副大統領、ミロヴァン・ジラス

Chap.9: The Perfect "Borderpath": Chairman Mao

"The hardest thing about being a communist is trying to predict the past."
-- Milovan Dilas
Chapter.1の先頭が、Chapter.5の翻訳部分である第1章の先頭に使われている。Chapter.9/第7章は一致しているが、他はまったく別物。原著がAnonymousな一文を使っているので、それらしく有名なものに置き換えたというわけでもない。もちろん、置き換えたという但し書きもない。

いったい、何がしたかったのやら。
posted by Kumicit at 2009/10/06 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | Others | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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