2009/11/26

National GeographicのID論記事の残り分〜カンブリア爆発

日本語版ナショナルジオグラフィックに掲載されたインテリジェントデザイン関連記事:

==>ニュース - 動物 - 進化論対「ID」論:脊椎動物の目 (2009/11/24)

「眼」だけとはさびしいと思ったら、「THE EYES OF VERTEBRATES (脊椎動物の眼)」に始まる6ページものの記事の1個目の訳だった。せっかくなので、続きも順に見ておくことにする。

まずはナショナルジオグラフィックの2回目の記事のカンブリア爆発:
[THE CAMBRIAN EXPLOSION (カンブリア爆発)]

インテリジェントデザインの主張

捕食者アノマロカリスのような新しい種が比較的短い時間スパン以内で化石の記録に現れた、地球の歴史の5億3000万年前の期間をカンブリア爆発と呼ぶ。現在に存在する生物の系統は、この生命が花開いた時期に遡れる。

Discovery InstituteのLuskinによれば、カンブリア紀は「大量の情報が生物圏に急速に注入することを必要とする、大量の生物の多様性の突如の爆発を示している。私の見方では、そのような急速な形での情報の起源をインテリジェントエージェントは説明できる。私は段階的な、ネオダーウィニズムの過程では、そのようなタスクは処理できるとは考えない。」

進化論の反論



カンブリア爆発はまったく爆発ではない。「それは30億年前のゆっくりした出来事である。これを示す化石証拠がある。さらに、カンブリア紀以前の、柔構造や顕微鏡サイズの生物の化石を見つけている。我々は、どのように単純な生物が複雑になっていくか、明瞭に見れる。」とOccidental CollegeのProtheroは言う。


創造論者の主張



Discovery InstituteのCasey Luskinが連呼しているネタだが、元は同じくDiscovery Instituteのインテリジェントデザイン部門Center for Science and CultureのStephen Meyerセンター長の数少ない持ちネタ。

ただし、出所としては、統一教会信者Jonathan Wellsとして、創造論者の主張リストにおさめられている:

==>CC301 Cambrian explosion contradicts evolutionary "tree" pattern.
==>CC301 カンブリア爆発は進化論的ツリーパターンと相反する


実は論拠不明なCasey Luskinの「情報を吹き込むインテリジェントエージェント」



上記のLuskinの発言の出典はこのあたり:
[Casey Luskin: "Human Origins and Intelligent Design -- Review and Analysis", ISCID Archive, August 2004]

Abstract: Intelligent agents can rapidly infuse large amounts of genetic information into the biosphere, reflected in the fossil record as the abrupt appearance of novel fossil forms without similar precursors.

インテリジェントエージェントは大量の遺伝情報を生物圏に急速に吹きこめる。これを受けて、類似の祖先のない新規な化石形態が突如出現したことが化石記録にある。
...
As Meyer et al. note:
Intelligent design provides a sufficient causal explanation for the origin of large amounts of information, since we have considerable experience of intelligent agents generating informational configurations of matter.[4]

インテリジェントデザインは大量の情報の起源について十分な因果関係の説明ができる。というのは我々は、インテリジェントエージェントが情報量のある物質の構成を生成するという少なからぬ経験を持っているからだ。


[4] Meyer S. C., Ross, M., Nelson, P., Chien, P., "The Cambrian Explosion: Biology's Big Bang," in Darwinism, Design, and Public Education, edited [強調追加]
さて、Casey Luskinが論拠としたインテリジェントデザイン運動の指導者であるDr. Stephen Meyerは何を根拠に言っているか見てみると...
[Stephen C. Meyer, P. A. Nelson, and Paul Chien: "The Cambrian Explosion: Biology’s Big Bang", 2001]

As Meyer argued in a previous essay about the origin of life, intelligent design does provide a sufficient causal explanation for the origin of large amounts of information, since we have considerable experience of intelligent agents generating informational configurations of matter. To quote information theorist Henry Quastler, the “creation of new information is habitually associated with conscious activity.”[95]

Meyerが前のエッセイで生命の起源について論じたように、インテリジェントデザインは大量の情報の起源について十分な因果関係の説明ができる。というのは我々は、インテリジェントエージェントが情報量のある物質の構成を生成するという少なからぬ経験を持っているからだ。情報理論家Henry Quastlerを引用しておくと「新しい情報の創造にはいつも意識活動が伴っている」

[95] Henry Quastler: "The Emergence of Biological Organization" (1964, p.16).
[強調追加]
Dr. Stephen Meyerの論拠はHenry Quastlerらしい。ということで、Henry Quastler:"The Emergence of Biological Organization"を見てみると...

The `accidental choice remembered' is a common mode of originating information. Since creation of information is habitually associated with conscious activity, it will be worthwhile to discuss this mode of creating information in terms of human activity. A humble way of originating information furnishes an exact analog to the presumed situation in the case of the nucleic acid system: this is the instance of information emerging by the choosing of a number combination to unlock a safe. It does not matter how the combination was originally selected wisely, by culling it from a table of random numbers, or unwisely, by using a guessable sequence such as birth date or telephone number. What matters is that before the combination is set into the lock, every number sequence is exactly as good as every other one (namely, no good!), and after it has been set, one sequence is useful and all others are useless. Thus the choice of a sequence and the subsequent implementation of the choice by setting the lock have created information.

"偶然の選択の記憶"が情報生成の普通のモードである。新しい情報の創造には、いつも意識活動が伴っているので、このモードの情報生成を、人間の活動の言葉で論じておく価値がある。情報を始める謙遜な方法は、核酸系について想定される状況の正確なアナロジーを提示する。これは金庫のカギをあけるための数字の組み合わせの選択よって生成される情報の例である。この数字の組み合わせは賢明に乱数表から選択しようが、愚かにも誕生日や電話番号のように推測可能な組み合わせにしようが、それは重要ではない。それが何であれ、番号の組み合わせがカギに設定されるまでは、どんな数字の組み合わせも、まったく他の組み合わせと等しく良い(すなわち、よくない)。そして、カギに番号の組み合わせが設定されれば、ひとつの組み合わせだけが有効で、それ以外は役に立たなくなる。このように数字の組み合わせの選択と、選んだ組み合わせをカギにせっていすることで、情報が生成される。

(Quastler H., "The Emergence of Biological Organization," Yale University Press: New Haven CT, 1964, pp.16-17. Emphasis original)

[quoted by Stephen E. Jones]
「新しい情報の創造には、いつも意識活動が伴っている」は「偶然の選択の記憶」のわかりやすい説明の例として日常生活品を使うといっているだけである。

ということで、「インテリジェントエージェントは大量の遺伝情報を生物圏に急速に吹きこめる」というCasey Luskinの主張の論拠は存在しない。
タグ:id理論
posted by Kumicit at 2009/11/26 08:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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