2010/01/23

製薬会社自身による薬剤効果の検証は利益相反となるか(1/3) Ben Goldacre

BMJがBen GoldacreVincent Lawtonによる製薬業界の実験の利益相反についての対論を掲載した。

Ben Goldacreは製薬会社が行う実験は利益相反になっていて、医療判断を狂わせる"悪い証拠"が作られているという立場から、Vincent Lawtonは適切に対処すれば、そうはならないという立場から論を展開して、対論を形成している。

今日はBen Goldacreの論から:
Ben Goldacre: "Is the conflict of interest unacceptable when drug companies conduct trials on their own drugs? Yes", BMJ 2009;339:b4949, doi:10.1136/bmj.b4330, 2009


医療の実行は証拠に基づいている。正しい選択をするために、これらの基礎となる証拠が完全で高品質であることを必要だ。しかし、現在、我々が使う証拠の大半は製薬会社によって作られる。実験の実行において、これらの企業に利益相反(Conflict of Interest = CoI)のあることは疑うべくもない。彼らは自分たちの製品を売りたいので、自然と自分たちが資金提供して実施される実験の結果がポジティブであることを求める。しかし、この利益相反により悪い証拠が作られ、医療判断を歪ませ、患者に実害を与えているという証拠が今や、系統的レビューやメタアナリシスやケーススタディから得られている。

まず、単一分野の具体的な話から始めよう。Rochon[1]は、非ステロイド性の抗炎症剤(NSAID)について、他のNSAIDと比較した公開文献をすべて見つけた。どの実験でも、資金提供した企業の薬剤が、比較対象と同等かそれ以上だという結果だった。すなわち、全ての薬剤は、全ての薬剤より良いと。そのような結果はありえない。

系統的レビュー[2]では、企業の資金による30の調査研究の結果が資金提供者に有利かどうか調べて、製薬会社が資金提供した場合は、他の産業が資金提供するよりも4倍も、自社に有利な結果が出ていたことが発見された。

どのようにして、このような系統的バイアスが起きるのか? 一つの答えは、疑わしい実験デザインである。たとえば、競合相手の薬剤は不十分な服用量にしたり、あるいは服用量を多くして、副作用のリスクが高まるようにして、資金提供者の薬剤が選好されるように調査研究がおこなわれる[3]。

もうひとつの一般的問題は、企業がどのデータを発表し、どのデータを発表しないか選択可能なことである。SSRI抗鬱剤の実用実験における自殺を試みた数や、rofecoxib (Vioxx)における心臓発作の数など、明確な情報を得ることの困難さが、人目を引く話で書かれてきた[5]。

同様に、治療法の効果についての残念な結果が静かに消えていくという、恒常的に存在する発表バイアスも問題である。この問題は多くの分野で見られ、特にSSR1[6]や幾つかの医療分野では、そのスケールは驚くほどだ。Ramsey and Scoggins[7]はclinicaltrials.govで癌についての全実験2028件を調べた。これらの実験のうち17.6%しかPubMedに見当たらなかったが、それらのうち64.5%はポジティブな結果を発表していた。企業が資金提供した実験に限れば、その結果は極端なものになる。たった5.9%しかPubMedに見当たらないが、これらの実験のうち75.0%でポジティブな結果が出ていた。

残念な結果が発表されることがない一方で、指摘するのがむつかしい方法で、ポジティブな結果が何回も発表されることがある。ondansetronの有効性についてメタアタリシスを実施した[8]グループが目を見張る発見をした。9つの実験の3335名の患者のデータが複数回、さらなる14個の報告で、発表されていた。これらの重複発表では、いずれも明瞭な参考文献を提示しておらず、これらの実験が新規のものでないことを一般読者が見つけるのが困難になっている。決定的に、そしておそらく必然的に、ondansetronの効果が大きいことを示すデータは、有意に2回以上発表される。

ポジティブな結果が複数回発表されることは、医師たちに薬剤が実際よりも良いと思わせることになるのは避けられない。医師たちは多忙であり、読んだ実験結果について、記述内容をチェックできない。ある研究では、プライマリーケア関連に限定しても、発表された論文をすべて読むには1か月あたり600時間を要すると推定している[9]。重複発表や、疑わしい実験方法の調整は見落とされる。そして、これらにより医師たちが薬剤の効果を過大評価する具体例がondansetronのメタアナリシスで見られる。この例では、薬剤の抗嘔吐作用の効果は23%の過大評価につながっている[8]。

私がここで書いた問題は目新しいものではなく、これまでに何度も書かれてきた。製薬会社の手から効果の研究を切り離すことなく、この問題は解決可能だろう。しかし、そのためには製薬会社がこのスキャンダルの大きさを認識し、自社と競合他社の実験データを完全に公表することを義務付けるといった、より効果的規制を求めるキャンペーンを自ら、行うことが必要だ。

しかし、我々は惰性と、この重大な問題に適切に関与することに失敗している規制当局という現実に直面している。医療では悪い情報は、悪い判断につながる。我々は、競合する別の薬剤の方が効果的あるいは副作用が小さいにもかかわらず、そうでない薬剤を選んでしまう。安価な薬剤でも同じ効果が得られるのに、高価な薬剤を不必要に買ってしまって、社会の限られた医療費を奪われてしまう。これは危険で不合理だ。治療の判断をする医師たちに、良質な実験データ、製薬会社が公表することを選択したポジティブなデータだけではなく、すべてのデータへのアクセスを可能とする必要がある。

  1. Rochon PA, Gurwitz JH, Simms RW, Fortin PR, Felson DT, Minaker KL, et al. A study of manufacturer-supported trials of nonsteroidal anti-inflammatory drugs in the treatment of arthritis. Arch Intern Med 1994;154:157.
  2. Lexchin J, Bero LA, Djulbegovic B, Clark O. Pharmaceutical industry sponsorship and research outcome and quality: systematic review. BMJ 2003;326:1167-70.
  3. Safer DJ. Design and reporting modifications in industry-sponsored comparative psychopharmacology trials. J Nerv Ment Dis 2002;190:583-92.
  4. Fergusson D, Doucette S, Glass KC, Shapiro S, Healy D, Hebert P, et al. Association between suicide attempts and selective serotonin reuptake inhibitors: systematic review of randomised controlled trials. BMJ 2005;330:396.
  5. Hippisley-Cox J, Coupland C. Risk of myocardial infarction in patients taking cyclo-oxygenase-2 inhibitors or conventional non-steroidal anti-inflammatory drugs: population based nested case-control analysis. BMJ 2005;330:1366.
  6. Turner EH, Matthews AM, Linardatos E, Tell RA, Rosenthal R. Selective publication of antidepressant trials and its influence on apparent efficacy. N Engl J Med 2008;358:252-60.
  7. Ramsey S, Scoggins J. Commentary: practicing on the tip of an information iceberg? Evidence of underpublication of registered clinical trials in oncology. Oncologist 2008;13:925–9.
  8. Tramèr MR, Reynolds DJ, Moore RA, McQuay HJ. Impact of covert duplicate publication on meta-analysis: a case study. BMJ 1997;315:635-40.
  9. Alper BS, Hand JA, Elliott SG, Kinkade S, Hauan MJ, Onion DK, et al. How much effort is needed to keep up with the literature relevant for primary care? J Med Libr Assoc 2004;92:429-37


posted by Kumicit at 2010/01/23 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | Others | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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