多様な創造論が米国には存在している。
==>創造論の連続分布
その中でも40〜50%の人々が信じているのが、地球も宇宙も6000歳で、人類は現在の形で6000年前に創造されたという"若い地球の創造論"(創造科学)である。
==>世論調査
20世紀初頭には進化論教育を禁止するなどの動きがあったが、紆余曲折を経て、公立学校から創造論が排除され、進化論教育がおこなわれるようになってきた。そして、最後に残った創造論教育は、ルイジアナ州の「進化論と創造科学を同一時間教えることを義務付けた州法」だった。
これは、1987年に連邦最高裁で米国憲法の定める政教分離原則に反するとの判決が出て、葬り去られた。
==>Edwards v. Aguillard裁判(1987)
この違憲判決で公立学校から完全に排除された創造論者たちは、再度侵入を果たすべく動き始めた。
コンテンツはそのままに、「創造論」を「インテリジェントデザイン」に、「創造論者」を「デザイン支持者」に書き換えることで、再侵入を果たそうという試みもそのひとつだった。
==>Common Descentな創造科学とインテリジェントデザイン
創造論の副読本として編集が進んでいた"Of Pandas and People"もそのように書き換えられた。しかし、その過程で全置換に失敗した。
==>中間化石 cdesign proponentsists
もちろん、この書き替えだけでは公立学校への再侵入は果たせない。もはや宇宙も地球も6000歳とは言えない。しかし、宇宙は135億歳・地球は45億歳と言っても、45%の"若い地球の創造論"支持な人々はついてこない。
そこで、宇宙と地球の年齢を棚上げし、研究の対象外にした。これは、"古い地球の創造論"を支持する人々をも取り込むために都合がよかった。
==>ID理論の主導者Phillip Johnsonは進化論は有神論と相容れないと語った
そして、インテリジェントデザインのコンセプトができあがる。
==>インテリジェントデザインの定義あれこれ
==>IDEA Center FAQ (ショート版2)
==>IDEA Center FAQ (ショート版1)
ここで重要になるのが、デザインの検出。聖書ではなく科学で、生物が進化したのではなく、インテリジェントデザイナーによってデザインされたことを示す手段。それが、Demhbskiの説明フィルタだった。
==>どのようにデザインを検出するのか(IDEA Center FAQ)
そして、デザインの検出をSETIになぞらえた。しかし、その過程で、59は素数ではなくなった。
==>インテリジェントデザインでは59は素数ではない by Dembski
SETIとデザインの検出の根本的違いをつきつけられることになる。SETIは異星人の属性を仮定するが、インテリジェントデザインはデザイナーの属性を仮定しない。SETIは信号を見つけた所から研究が始まるが、インテリジェントデザインはデザインを見つけたら研究完了。
==>SETIとIDのアナロジーをめぐる戦い〜Robert Camp
==>SETIとIDのアナロジーをめぐる戦い〜PvM
==>「SETIはデザイン推論」ではない
SETIとのアナロジーとは別に、Dembskiの説明フィルタが古典的な詭弁である「God of the gaps」(科学で解明できないものは神様のせいなのさ)そのものだと指摘される。
==>God of the gaps詭弁および関連の詭弁
==>どのようにデザインを検出するのか(IDEA Center FAQ)
これに対抗して...
==>インテリジェントデザインは"God of the Gaps"ではない
あまりにも明瞭な"God of the Gaps"形式であるため、言い逃れしようがない。そこで...
==>科学も"Natural Law of the Gaps"だ
しかし、「進化したはずだ」というのは研究の始まりであって、結論ではないという、SETIとのアナロジーと同じ問題につきあたる。
そして、もうひとつ、ハイレベルのコンセプトである共通祖先と、ロウレベルの理論である個々の生物器官の進化メカニズムの違いにも突き当たる。個々の進化メカニズムが解明しつくされなくとも、ハイレベルのコンセプトである共通祖先は確立されている。
==>進化論は正しいと言う創造論者
==>創造論者の攻撃に対して"共通祖先"が無傷である理由
そんなこんなで、インテリジェントデザインは中味の何もない"理論"になったが、それを気にする者は支持者にもいなかった。所詮は進化論は間違っていると言えれば内容など不要だったからだ。
==>復習インテリジェントデザイン
そんなものが科学であるわけもなく...
==>インテリジェントデザインが科学ではない理由
ペンシルバニア州Dover学区に侵入を果たしたものの、すぐに違憲判決を受けた。
==>Kitzmiller v. Dover裁判(2005)
それでインテリジェントデザインが終わるわけではないが、同様の試みは困難になった。
還元不可能な複雑さやNFL定理の意図的誤用などは後回し。
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