2010/02/28

代替医療は安い"医療"ではないと思う

代替医療は医療費削減に使えそうとか、安いことが唯一の利点とか思ってしまうけど、それはありそうにない。

とってもラフにコストを考えると、通常医療と代替医療の違いは、医薬品や医薬材料が高価かどうか。医療費の構成から見ると...
[国民医療費の構造(平成18年度)]

医療サービス従事者 [医師、歯科医師、薬剤師、看護師等]  49.8%
医薬品                           21.3%
医療材料[診療材料、給食材料等]               6.1%
委託費                            5.2%
経費、その他 [光熱費、賃借料、支払利息等]         17.7%
それは27.4%に相当するにすぎない。すなわち、通常医療を代替医療にしてもコストは3/4にしかならない。

一方、代替医療の方がコストが高くなる要素がある。かねてから指摘されるように、代替医療、特にホメオパシーは長時間の対話が特徴である。そして、その対話こそがプラセボな治療効果をもたらしていると考えらている。実際、最近も、ホメオパシーのプラセボ効果はレメディではなく、時間をかけたコンサルテーションによて生じているというランダム化研究結果が出ている。
The trial by UK and US researchers randomised 83 patients to homeopathy with or without a consultation with a homeopathic practitioner for a 24 week course with 12 weeks of follow-up, and analysed how many patients experienced an improvement in their symptoms as measured by a 20% increase in the American College of Rheumatology criteria.

No differences were observed in symptoms' severity, but researchers did find significant differences in secondary outcomes.

ホメオパシーの24週の治療コースと12週のフォローアップについて、ホメオパスのコンサルテーションありとなしにランダムに振り分けた83名の患者について、American College of Rheumatology criteriaで20%増加を規準として症状の改善があったかを、英国と米国の研究者が試験した。症状の重さについて違いがなかったが、二次的な効果に大きな違いがあった。

Patients who received a consultation showed a significant improvements of 0.6 points on a disease activity score, and improved by 3.04 points in swollen joint count, 9.12 points in current pain, and 6.01 points in weekly pain.

Patients also had a less negative mood, with a -5.92 mean difference compared with patients who did not receive a consultation.

Dr Sarah Brien, senior research fellow in complementary medicine at the University of Southampton, concluded: ‘Homeopathic consultations are associated with clinical benefit for patients with active stable rheumatoid arthritis through the consultation and not the remedies.’

The research will be presented at the South West Society for Academic Primary Care annual research conference in Oxford next month.

University of Southamptonの補完医療のシニア研究フェローであるDr. Sarah Brienは「レメディーではなく、ホメオパシーのコンサルテーションがューマチ性関節炎の患者に臨床治療上の効果がある。

この研究はOxfordで来月(2010/03)開かれるSouth West Society for Academic Primary Care の年次大会で発表される。

[Lilian Anekwe: "Effect of homeopathy 'due to consultation'" (2010/02/26) on PULSE]
実際、英国のホメオパスを幾つか(energi, bodywise homeopathy, Leeds Homeopath)見てみたが、ホメオパシーの"治療"は初回75〜90分、フォローアップ30〜45分というのが相場のようである。
First Followup Remark
. Time (min) Adult Fee Child Fee Time (min) Adult Fee Child Fee remedies child age
energi homeopathy 90min £60 £45 45min £40 £30 included under 18
bodywise: Kadri 75min £50 £40 45min £40 £30 included under 18
bodywise: Murphy 90min £55 £40 45min £45 £30 included incl Student
bodywise: Gati 90min £55 £40 45min £45 £40 included under 11
Leeds Homeopath 75min £60 £40 40min £40 £35 ? ?

これだけ時間をかけるので、通常医療よりも、"診察"コストは当然高くなる。なので、医薬品や医薬材料費がゼロになったとしても、人件費でその分を食いつぶされるかもしれない。

実際、これらのホメオパスたちの価格は初回75〜90分で、日本円で大人6700〜8100円、子供5400〜6100円。フォローアップは30〜45分で、大人5400〜6100円、子供4000〜5400円である。決して、安くない。

しかし、この価格は暴利とは言えない。治療前後に準備時間なども必要と思われるので、事実上,、1時間当たりの収入は6000円程度と思われる。これは1年にすると、2000時間×6000円=1200万円程度。治療用の部屋などの賃貸料・維持費や、事務処理費用をこの中から負担することになるので、ホメオパス本人の年収は1000万円には届かない。もちろん、稼働率が下がれば収入はその分減る。決して高すぎる年収ではない。(とても事務員を雇えるような収入ではない)

したがって、「時間をかけると」という代替医療、特にホメオパシーの特徴を守りつつ、ホメオパスの経営が成り立つことを考えるなら、国レベルの医療費削減や個人レベルの安い"医療"は実現しない。

それが実現するのは、英国Bootsのような薬局チェーンで1000円程度のレメディを買って済ませる人が続出する場合のみ。
posted by Kumicit at 2010/02/28 00:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | Quackery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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