2010/04/16

サイモン・シンの名誉棄損訴訟が終了

The Guardianの2010年4月15日付の報道によれば、英国カイロプラクティック協会によるSimon Singh名誉棄損裁判が、英国カイロプラクティック協会の訴え取り下げにより終了した。
The British Chiropractic Association dropped its libel action against the science writer Simon Singh today, filing a notice of discontinuation in the high court.

The case had become a cause celebre, with scientists, celebrities and freedom of speech campaigners lining up to condemn the British libel laws and argue that Singh had a right to express his opinion in print.

The sudden end to the case will strengthen the campaign for reform of the libel laws, which Jack Straw, the justice secretary, is considering.

英国カイロプラクティック協会は、本日、サイエンスライターSimon Singhに対する名誉棄損訴訟を取り下げ、最高裁判所に裁判終了の通知がファイルされた。

英国の名誉毀損法を非難し、Simon Singhには文書で自らの意見を述べる権利があると主張する、科学者・有名人・言論の自由運動家には、この裁判は悪名高い事件になった。

この訴訟の突然の終結により、名誉毀損法の改革のための運動は強められることになる。この名誉棄損法の改正をJack Straw法務大臣も考慮している。「

[Simon Singh libel case dropped -- British Chiropractic Association ends legal action against science writer for comments in Guardian article (2010/04/15) on The Guardian]
既に、2010年4月1日時点で、英国カイロプラクティック協会の「意見ではなく事実」という主張が認められず、事実上、裁判は英国カイロプラクティック協会の敗北が確定していた。そして、。今回、英国カイロプラクティック協会は完全撤退。ようやく、"Trick or Treatment"をめぐる戦いは終了した。


なお、これまでの経緯は以下の通り。


2008年4月19日付のThe Guardianに、Simon Singhの"Trick or Treatment"の第4章 "The Truth About Chiropractic Therapy"の要約が掲載された。英国カイロプラクティック協会は、対抗措置として、2008年8月に、掲載したThe Guardianではなく執筆者であるSimon Singhを訴えた。

これはSimon Singh自身を黙らせることを目指しているからのようである。英国カイロプラクティック協会は自らのWebサイトにも裁判の件についての情報を掲載せず、自らも沈黙した。

==>英国カイロプラクティック協会が、"Trick or Treatment"のSimon Singhを訴える (2008/09/04)


その翌年、ようやく英国カイロプラクティック協会の副会長であるRichard Brownが、Simon Singhを訴えた件に関連して、New Scientistに、カイロプラクティックを擁護する記事を書いた。その論点は....

  1. 背骨が整列しないことが大半の病気の要因だとする19世紀の考え方を信じてるカイロプラクターは少数
    <==Edzard Ernst教授によれば、大多数のカイロプラクターはそう信じている。
  2. カイロプラクティックは危険性は他の医療と同等
    <==リスクだけあるけど、効果のない治療法だというのがSimon Singhの論点
  3. カイロプラクターは背骨マニュピレーション以外に姿勢についての助言や安心や運動など幅広い治療法を使う
    <==喘息が「姿勢についての助言や安心や運動など」で決着がつくわけではないし、発作によっては死に至る危険性も持っている。Richard Brownの主張が正しいとしても、「適切な医療受療の遅延」の問題がある。


==>NewScientist誌の掲載されたカイロプラクターによるカイロプラクティック擁護記事 (2009/09/16)


これより少し前の2009年月に、高等法院Eady裁判官は、言葉の意味に対して結論を下し、Simon Singhの記述を「意見」ではなく「事実」と解釈した。これでは、Simon Singhは裁判で自身を弁護できなくなる。

しかし、2009年10月16日に、Lord Justice Lawsは「Eady裁判官は、表現の自由に対する名誉の権利側にあまりに権利のバランスが偏っている」として「Eady裁判官の結論は法的に誤りである」と記述し、Eady裁判官の判断は覆った。

==>Simon Singhと英国カイロプラクティック教会の戦闘継続中... (2009/10/17)
==>BCA v. Simon Singhメモ 2010/02/23 (2010/02/26)

一方、英国のカイロプラクターの4人に1人が、英国広告基準協議会の判例に違反したとしてサイモン・シンの支持者たちから苦情を申し立てられ調査対象となっている。その過程で、英国カイロプラクティック協会が、カイロプラクティックの効果を支持する証拠が皆無であることを自覚していたことを示す行動ととっていく。

==>サイモン・シンを訴えたことで自爆する英国カイロプラクティック協会 (2010/03/05)


そして、2010年4月1日付で、控訴裁判所の歴史的判決で、Simon Singhは名誉棄損訴訟においてフェアコメントの擁護弁論を使う権利を得た。「事実」ではなく「意見」であるとの裁判所判断であり、事実上、英国カイロプラクティック協会は裁判での勝利は不可能になった。

==>サインモン・シンが一歩前進 (2010/04/01)
posted by Kumicit at 2010/04/16 08:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | Quackery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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