これらをめぐる時系列は以下の通り。
- HIV否定論の立場をとったMbeki政権によるAIDS犠牲者数は33万人(2008/11/17)
人口4800万の南アフリカ共和国のHIV/AIDSは、de Klerk政権(1989-1994)で感染拡大を抑られず、Nelson Mandela政権(1994〜1999)で感染が進行し、Mbeki政権(1999/6〜2008/9)で遂にこんなことに:- 成人5人のうち1人がHIV感染者[Nation Master]
- 毎日1000人以上がAIDSで死亡[Nation Master]
- 少なくとも片親がAIDSで死亡した、0〜17歳の子供は140万人[2007年推定](AIDS孤児 Unicef定義)
この状況のもと、Thabo Mbeki前大統領(在職1999/06/14 - 2008/09/24)が「HIVはAIDSの原因ではない」というHIV否定論の立場をとっていたことは、これまで何度か取り上げてきた。- ニセ科学「AIDS再評価運動」〜南アフリカの場合〜 (2007/08/15)
- HIVはAIDSの原因ではないという南アフリカ大統領は一歩も引かない (2007/08/24)
- 南アフリカのHIV否定論者たちの退場 (2008/10/23)
Max Essex率いるHarvard大学の研究グループは、その被害の大きさをを33万人と推定した。
==>Chigwedere et al. , J Acquir Immune Defic Syndr 2008;49:410-415)>/a>- これに対抗すべく、UCBのPeter Duesberg教授は、HarvardのMax Essex教授の利益相反を理由として、論文取り下げをHarvardに要求。しかし、利益相反の事実そのものが存在しなかったため、このDuesberg教授の試みは失敗した。
==>DuesbergをめぐるNatureの記事(2010/05/04)(2010/05/08)- Duesberg教授は、Chigwedere et al. <.a>に反論する論文を同じJAIDSに投稿するが、拒絶された。そこで、非査読学術論文誌Medical Hypothesesに再投稿した。これは掲載されるや批判集中。出版社Elsevierは5人のレビューアーに論文のレビューを依頼。5人全員が拒絶を推奨し、論文は取り下げられる。
==>DuesbergをめぐるNatureの記事(2010/05/04)(2010/05/08)
これについて、Ben GoldacreもPeter Duesbergを批判している。
==>Ben Goldacre on 査読ではなく編集者1名による学術誌 (2010/03/18)- 一方、この問題により、出版社Elsevierと編集長Bruce Charltonの戦闘に。
[Daniel Cressey: Editor says no to peer review for controversial journal
Move demanded by publisher would 'utterly destroy' Medical Hypotheses .(2010/03/18)]
The editor of what is perhaps the world's most controversial medical journal has pledged to resist attempts by its publisher to implement radical changes to its approach.
Bruce Charlton, who is professor of theoretical medicine at the University of Buckingham, UK, has staunchly defended his journal, Medical Hypotheses, saying that it has for 35 years followed "a radical and dissenting agenda" and "tries to favour unfashionable and unpopular views".
The journal's publisher Elsevier is seeking major changes to Medical Hypotheses in the wake of a furious row over the publication last year of a paper claiming that there is no proof that HIV causes AIDS. A key part of these changes will be to implement peer review in place of the current editorial review.
Elsevier also says there will be "especially careful review" of potentially controversial articles.
But Charlton claims that this "would utterly destroy Medical Hypotheses", and he insists that he will neither resign nor assist with the proposed reforms, as demanded by Elsevier.
"Elsevier plan to continue a zombie Medical Hypotheses - i.e. still moving around, but dead inside," he told Nature. "I have requested that they do the honest thing and kill the journal outright. I would rather Medical Hypotheses existed in its pure form for 35 years than that it has a dwindling and corrupt afterlife."
おそらく世界で最も物議を医学誌の編集長が、根本的な変更を求める出版者側に抵抗すると堅く主張している。
英国University of Bckinghamの理論医学の教授であるBruce Charltonは、「ラジカルで主流に反対することを目的とし、支持者の少ない見方を好んで取り上げること35年」の自らの学術誌Medical Hypothesesを擁護した。
学術論文誌の出版社であるElsevierは、「HIVはAIDSの原因だと証明されていない」と主張する論文掲載をめぐって昨年おきた大騒ぎにりより、Medical Hypothesesの運営方法を大きく変えようとしている。その重要な点は、現在の編集者によるレビューのかわりに、査読を導入することである。
Elsevierはまた「論争の的となる論文について、特に慎重にレビューすべき」とも述べている。
しかし、Charltonは「このような変更は、Medical Hypothesesという学術誌を破壊するものである」と述べた。彼は編集長を辞任もしないし、出版社が求めるような変更も行わないと主張している。
Bruce CharltonはNature誌に対して「ElsevierのプランはMedical Hypothesesをゾンビとして生かしつづけようとするものだ。私はElsevierにことを誠実に行い、Medical Hypothesesを廃刊にするよう要求している。私はMedical Hypothesesが過去35年のままの姿でいてほしい。別物になって生き延びるよりは。」と述べた。- HIV否定論を主張しても問題にされることがなかったPeter Duesberg教授に、利益相反問題が起きる。Medical Hypotheses掲載論文の共著者のひとりが、南アフリカでAIDSを治療できると主張していビタミン剤を売っていたMatthias Rathのもとで働いていたにもかかわらず、論文に利益相反のあることを記載しなかったとの指摘である。
==>DuesbergをめぐるNatureの記事(2010/05/04)
==>DuesbergをめぐるNatureの記事(2010/04/20)
==>Peter DuesbergをめぐるScienceの記事(2010/04/16)
この大学と局による調査を求める2通の手紙のうち、ひとつは南アフリカのAIDS活動家団体からのもの。しかし、当該人物は3年前にRathのもとを離れており、無理筋な指摘と思われる。 - 成人5人のうち1人がHIV感染者[Nation Master]
Matthias Rathのもとにいた人物が共著者である以上、何らかのケチがつくのは当然としても、現在はMatthias Rathの利益とは関係しておらず、Peter Duesberg教授に何らかの処分が行われるとは考えにくい。
このままフェードアウトなネタで終わりそうだが...