2006/03/21

再読 インテリジェントデザインネットワーク [1/4 再読]

Intelligent Design: The Scientific Alternative to Evolution
William S. Harris and John H. Calvert
http://www.intelligentdesignnetwork.org/NCBQ3_3HarrisCalvert.pdf

これを久しぶりに読み直す......


インテリジェントデザインというもの

インテリジェントデザインとは「インテリジェントエージェントが働いたときに生成されると知られる情報の型を認識および検出することで、自然界にある物がデザインされたものであるかを探求する科学理論」[IDEA CENTER FAQ]である。

主要な概念は以下の3点:

  • 複雑な指定された情報(Complex Specified Information)
     

       
    • Dembskiの作った概念
    • 自然法則でも偶然でも説明できない
    • 有意味な情報
    • Beheの「還元不可能な複雑さ」はCSIのひとつのかたち

  • Dembskiの説明フィルタ(Dembski's Explanatory Filter)[IDEA CENTER FAQ]
     

    • DembskiによるCSI検出方法
    • 自然法則で説明がつく現象・情報はデザインではない
    • 偶然で説明がつく現象・情報はデザインではない
    • 有意味でない情報は現象・情報はデザインではない
    • それ以外なら、デザインである=CSIである

  • 還元不可能な複雑さ(Irreducible Complexity)[IDEA CENTER FAQ]
     

    • Dr. Michael Beheの作った概念(ただし、Muller, H. J. 1939. Reversibility in evolution considered from the standpoint of genetics. Biological Reviews of the Cambridge Philosophical Society 14: 261-280.が初出。創造科学のHenry Morris, Scientific Creationism, 1974,1985, pp59も同じ議論をしている)
    • 多くの部品がいっしょになって機能し、全体が効率的に機能するには個々の部品が代替不可能な必須である複雑な生物システム
       
    • バクテリアの鞭毛が例(ただし、漸進進化可能な迂回進化経路が提示されてしまっている)



Dembskiの問題点は、"God of the gaps"論という疑似科学の論法をとっていること。「自然法則でも偶然でも説明がつかない、有意味な情報はデザインである」というのは、まさに"God of the gaps"論そのもの。

Beheの問題点は、誰かが迂回経路を思いつくと終わってしまうこと。つまり「迂回経路がないからデザインだ」という"God of the gaps"論になっていて疑似科学の論法になっていること。

そして、インテリジェントデザインが「"神のようなもの"が、自然界に直接介入していて、それを科学的に検出可能だ」と主張していることが2つのものと対立を生む。

ひとつは「神は自然法則を介して人間を創造した」と考える有神論的進化論の立場をとるカトリックやメインラインバプテストであり、もうひとつは「自然法則として記述可能なものを扱い、第1原因・超自然・目的・価値・意義といったものを取り扱わない」という機械論の立場をとる科学である。

インテリジェントデザインネットワークの言い分を読み直す

2005年10月3日〜14日にかけて5回に分けて「インテリジェント・デザイン・ネットワークの言い分を読んでみる」というタイトルのエントリ(2,3,4,5)を書いた。Intelligent Design Networkというインテリジェントデザイン応援団を主宰するWilliam S. Harris博士とJohn H. Calvert法学博士のエッセイ「Intelligent Design: The Scientific Alternative to Evolution」と読むシリーズ。

Kumicitがインテリジェントデザインの触れた初めての文献である。その後、特に2005年10月から11月半ばあたりまでに書いたエントリたちは、Kumicitの手探りの過程そのもの。それから半年近く、インテリジェントデザインと"若い地球の創造論"について支持する文献と批判する文献を読み続けてきて、ある程度は話が見えてきた。

そして、William S. Harris博士とJohn H. Calvert法学博士のエッセイを読み直してみた。やはり、これが一番、手ごろにまとまっていて、わかりやすかった。確かに、インテリジェントデザインの理論家ではなく応援団なので深みには欠けるが、最初に読むには最適。
インテリジェントデザインの本山たるDiscovery Instituteのフェローたち(Dr. Stephen Meyer, Dr. William Dembski, Dr. Michael Beheなど)と違って、「宗教ではない」と言いつつ、すなおに宗教を語っている点もよいところ。とっても蹴りを入れやすい。

Kumicitの訳文は、タイポや訳語のゆらぎもけっこうあって、そのわかりやすさを損なっていた。また、半年前のKumicitのコメント群も、知識不足が目立つ。そこで、訳文の変なところを直し、コメントを改訂した上で、訳文・原注・コメントの3つのエントリに組みなおしてアップすることにした。これでも不十分なので、折に触れて修正していこうと思う。




posted by Kumicit at 2006/03/21 00:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID Introduction | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック