2006/03/27

眼のない魚をめぐるAiGの奇妙な記事

"若い地球の創造論"のAnswers in Genesisが、地下洞の闇の中で眼を魚が失う過程を進化の証拠ではないと言う。しかし、その説明は、何故か、バークレーの進化論教育用のページ「進化論についての誤解」と同じようなものになっている。

進化はない by AiG

以下に示すのは、Ken Hamが主宰する"若い地球の創造論"の最もアクティブなサイトAnswers in Genesisの「New eyes for blind cave fish?」という記事からの引用である。この記事はAiGが、「洞窟の眼のない魚は、眼を失っても同じ種にとどまっており、しかも眼を作る遺伝情報が失われたのではなく、その眼を作るスイッチが壊れただけなので、進化の証拠ではない」と主張しているもの。引用部分は魚が眼を失う過程の説明:
Imagine a situation in which a group of such ‘normal’ fish swim into a stream which enters an underground cave, and become trapped in this pitch-dark environment. Their eyes are completely useless here.

正常な魚の群れが地下洞への流れに乗って泳いでいき、闇の環境に囚われるところを想像してみよう。ここでは彼らの眼はまったく役に立たない。

But eyes do not ‘disappear’ just because they are no longer needed. The fish’s DNA would have programmed into it the instructions on constructing eyes, and the code on the DNA does not ‘know’ that the eye is no longer needed, so it will keep on manufacturing eyes, generation after generation.

しかし、眼が必要なくなったからといって、眼は"失われる"わけではない。魚のDNAは眼を作る命令をプログラムされていて、DNAのコードは眼が必要なくなったことを"知らない"ので、世代を重ねて眼を作り続ける。

However, due to the effects of the Curse on all creation (Genesis 3:19, Romans 8:20–22), genetic copying errors (mutations) arise in all living things. In fact, in a moderate-sized population, many of these errors occur in each generation. It is not hard to see how one of these could result in a gene that usually ‘switches on’ eye development being corrupted, or somehow ‘switched off’, via mutation.

しかし、あらゆる被造物へのカースの効果によって(創世記3章19節、ローマ人への手紙8章20〜22節)、遺伝子複製のエラー(突然変異)があらゆる生物に起きる。実際、中規模の群れでは、世代ごとにこれらのエラーの多くが起きる。これらの変化のひとつが、突然変異により、本来は眼の成長をスイッチオンする遺伝子を壊すか、スイッチオフしてしまうことがありうるのは想像に難くない。

In a normal above-ground situation, such eyeless fish would probably never survive much past early infancy, because they would be so handicapped both in locating food and escaping predators. So for all practical purposes, we never see eyeless fish in the wild where there is sunlight.

普通の地上の環境では、眼のない魚はおそらく幼生の初期の段階を生き抜けないだろう。それは餌の位置を知ることと捕食者から逃れることに非常に大きなハンディキャップがあるからだ。なので、実際、我々は陽光のもとで野生の眼のない魚を見ることはまったくない。

However, in the cave, it is a different matter. The eyeless type no longer suffers this disadvantage compared to its compatriots. Not only that, the eyeless ones even have an advantage over the others. This is because, as fish bumped into rocks and cave walls in the darkness, the eyed ones would be likely to injure their eyes. The delicate tissue of eyes is prone to injury, which would allow harmful bacteria to enter, leading to infection and often death.

しかし、洞窟の中では事態は違ってくる。眼のない魚は健常な魚に比べて、もはやなんら不利な点はない。それどころか、眼のない魚は他の魚よりも有利ですらある。何故なら、魚が闇の中で岩や洞窟の壁に衝突すると、眼がある魚は眼を傷つけやすい。繊細な眼の組織は傷つきやすく、そこから有害なバクテリアが侵入し、感染を招き、死に至りやすい。

The eyed fish would thus have a lesser chance of surviving to produce offspring. Those fish carrying the ‘eyeless’ genetic defect would have a greater chance of passing it on to the next generation, so it would not take many generations under such circumstances for all the fish to be of the ‘eyeless’ type.

眼のある魚は生き延びて子孫を残す可能性が小さい。"眼のない"遺伝障害を持つこれらの魚は、次の世代を残す可能性が非常に大きく、従って、このような環境で世代を重ねることで、すべての魚が"眼のない"魚になっていしまうだろう。
間違いなく、この記事は"若い地球の創造論"サイトに載っているものだ。

しかし、アイロニーという他ないのだが、洞窟の闇の中で魚が眼を失う過程が、インテリジェントデザイン理論家たちが言う「Unguided, purposeless process」[Dembski 2004, Harris and Calvert, 他多数]として説明されている。

あと、mutation(突然変異)という単語の近所で聖書を引用している点。基本的にAiGの記事は聖書引用がお約束なのだが、この記事ではまさに絶妙の位置。突然変異を創世記に記された現象として語ることで、創造論を信じる読者に読ませる効果が出ている。


進化論の説明 by バークレー

そして以下に示すバークレーの「進化論についての誤解(Misconception of Evolution)」というページ群の記事と同じことを言ってしまっている。


[Original]
Misconception: “Natural selection involves organisms ‘trying’ to adapt.”

Response: Natural selection leads to adaptation, but the process doesn’t involve “trying.” Natural selection involves genetic variation and selection among variants present in a population. Either an individual has genes that are good enough to survive and reproduce, or it does not---;but it can’t get the right genes by “trying.”
誤解:「自然淘汰は、生物が適応しようとしていることを意味します。」

正解:自然淘汰は適応を導きますが、その過程には「適応しようとする」ことは含まれません。自然淘汰は、遺伝子の多様性と、集団にいる変種たちからの選択を意味します。
個体が生き残り繁殖するに十分よい遺伝子を持っているかどうかにかかわらず、"適応"しようとすることで、正しい遺伝子を手に入れられません。



[Original]
Misconception: “Natural selection gives organisms what they ‘need.’ ”

Response: Natural selection has no intentions or senses; it cannot sense what a species “needs.” If a population happens to have the genetic variation that allows some individuals to survive a particular challenge better than others, then those individuals will have more offspring in the next generation, and the population will evolve. If that genetic variation is not in the population, the population may still survive (but not evolve much) or it may die out. But it will not be granted what it “needs” by natural selection.

誤解:「自然淘汰は生物が必要なものを、その生物に与えます。」

正解:自然淘汰には、意図や感覚はありません。自然淘汰は種が何を必要としているか感知できません。集団がたまたま遺伝的変異を持っていれば、ある挑戦に対してある個体は他の個体より生き延びやすくなるでしょう。それらの個体は次世代により多くの子供たちを残し、集団は進化するでしょう。遺伝的変異がその集団になければ、それでも生き延びるかもしれません(あまり進化しないが)。あるいは滅びるかもしれません。しかし、自然淘汰によって"必要"なものを与えられることはありません。



ある意味、もうひとつの問題をここに見る。"若い地球の創造論"のAiGは進化論を誤解して批判しているのではないのかもしれない。だとするなら、正しく理解したところで、何も変わらないのかもしれない。


posted by Kumicit at 2006/03/27 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | Creationism | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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