- メモ: オレゴン州信仰療法医療ネグレクト事件(1) 2010年7月2日のOregonLiveの報道 (2010/07/28)
- メモ: オレゴン州信仰療法医療ネグレクト事件(2) 2010年7月15日および22日のOregonLiveの報道 (2010/07/29)
1200名の信者のいる信仰療法宗教"Followers of Christ"の信者であるTimothy J. Wyland (44歳)とRebecca J. Wyland (23歳)が、医療ネグレクトで子供Alaynaを重体にしたため、裁判で親権を停止された。
彼らが所属する"Followers of Christ"では過去30年に、少なくとも20名の未成年者が治療可能な病気で死亡している[OregonLive]。それ以外に、成人も治療可能な病気で死亡していると思われる。それなりに死体の山が積み上がっている。しかし、いまだ信仰療法を続けている。
OregonLiveの報道によれば、このTimothyは、現在の妻Rebeccaとは2年前に再婚していて、2006年にTimothyの前妻Moniqueは乳癌で死亡している。その際、Moniqueはいかなる医療も受けていない。
[Alayna and Rebecca Wyland, Timothy Wyland and Rebecca Wyland-- OregonLive]
死体が積み上がっても方向を変えないのはカルト宗教らしい行動である。
ただし、宗教の形をとっていない場合でも、方向転換できない例はある。
HIV否定論者Christine MAggioreの場合
- HIV否定論者Christine Maggioreの訃報 (2008/12/31)
- ニセ科学「AIDS再評価運動」とID理論 (2007/07/05)
Christine Maggioreは、HIVに感染していることがわかっていながら、母子感染リスクを下げるための抗レトルウィルス剤(ARV)の使用を拒否し、感染のリスクのある母乳養育を行って、娘Eliza Janeに母子感染させた。そして、2005年春にEliza JaneはAIDS関連肺炎で3歳で亡くなった。
しかし、Christine MaggioreはHIV否定論を取り下げることはなく、娘の死因はAIDSではないと主張し続けた。そして、自らもここ半年は肺炎を患い、2008年12月27日に死亡した。Christine MaggioreはHIV否定論に、自らと娘の生命を生贄に捧げた。
[Christine Maggiore --LA Times, Eliza Jane -- Guardian]
一方で、方向転換した例もある。
ホメオパスThomas Samの場合
- 自分の生後9か月の娘を死なせたホメオパシー医(ホメオパス) (2009/06/01)
- 生後9か月の娘を死なせたホメオパシー医に有罪の陪審評決 (2009/06/07)
- ホメオパシーで娘を死なせたホメオパスは第2子を通常医療にゆだねていた (2009/08/19)
- ホメオパシーで娘を死なせたホメオパスに判決 (2009/10/01)
Thomas SamとManju Sam夫妻が赤ちゃんな娘を病院に連れていったのは、重病になってから日数がたってからだった。慢性湿疹によりGloriaの皮膚からは出血していたが、両親はインドからの旅行帰りの時差ぼけで疲れていて、医者に援助を求めなかった。そして、生後9か月のGloriaが眼の感染症になったとき、ようやく医者の援助を求めた。しかし、その段階では既に一週間手遅れであり、Gloriaはもう助からなかった。Gloriaは弱っていて栄養失調になっていて、2002年5月に感染症で死亡した。
この裁判で、裁判官James Glissan QCは「Thomas Samsが殺人の嫌疑を受ける前に、夫妻の第2子(現在は3歳の男子)が赤ちゃんのときに湿疹になった。赤ちゃんは資格ある医師から、ホメオパシーと栄養剤の併用により、うまく治療された。しかし、男の子は後に、別の症状を進行させた。男の子は通常医療で治療された。これはThomas Samsの悔恨の明らかな証拠である。『ごめんなさい』というのは簡単だ。しかし、心を入れ替え、態度を変え、方法を変えることは非常に困難である。彼が、悲劇的事件から教訓を学んだことは明らかである」と述べている。
ホメオパスThomas Samは第1子の死によって、ホメオパシーが効かないことを知って、第2子では悲劇を繰り返さなかった。
[Thomas Sam and Manju Sam -- Daily Telegraph]
そして..
オレゴン州のTimothy & Rebecca Wyland夫妻は、法廷あるいは州福祉事業局が求める治療は何であれ受けさせると約束して、現在は養護施設に預けられている子供を返すようにDouglas V. Van Dyk裁判官に求めた(が、却下されている)。これは妥協であって、方針転換ではないだろう。
自らが死亡するまで戦い続けたHIV否定論者Sophie Brassardの例もある。
==>HIV否定論 Sophie Brassardの場合 (2009/03/17)
方向転換するのは困難と考えた方がよいかもしれない。