[GILL SWAIN: KILLED BY HOMEOPATHY? (Daily Mail 2006/09/06) Good Health (another copy]
チャールズ皇太子を始め多くの人々にとって、代替医療を使うことは大きな美徳だ。Bobの夫人が乳癌になったときも、そう考えた。彼女が支払った恐るべき対価について、彼の苦悩に満ちた証言を読んでほしい。
The Lancetに掲載された最近の報告によれば、ホメオパシーに効果はない。Julia de Vaattは、代替医療を支持して、通常医療を受けることを拒否して、乳癌で1年前に死亡した。
彼女の夫Bobは58歳で、West London在住で、ITコンサルタントから小説家に転身した。BobはGill Swainに、ホメオパシーには効果がなく、誤った希望をいただかせることで危険なものになっている理由を語った。
Juliaが私に、生検を受けた胸にしこりが見つかったと告げた。検査結果はその朝に届いた。それは悪性だった。当然のように、私たちは非常に取り乱した。彼女はまだ47歳で、12年前にロンドンのパブで出会ったときに私に魔法をかけたときの、素敵な笑顔の少女のままだった。私たちは出会って5か月で結婚し、二人の子供を授かり、浮き沈みがありつつも、とても幸せだった。
Juliaの次のアポイントで。彼女は緊急に乳腺腫瘤摘出と化学療法が必要だと告げられた。しかし、彼女は既にそれに反対だった。彼女は、手術が行われれば、癌が転移するという怖い話を聞いたことがあった。
それは昔の話だったが、多くの人々が持っている見方だった。私は彼女に、「後で補完医療を受けることもできるのだから、6歳の息子と11歳の娘のために手術を受けるように」説得した。しかし、彼女は断固として拒否したので、私は彼女が望むことなんら何でも手伝う必要があると考えた。
私の仕事仲間の妻であるホメオパスが、2年前に乳癌の手術を受けたが、次にそのような機会があったら、手術を受けないと言っていたと、Juliaは私に告げた。そのホメオパスはホメオパシーなら何でも治療できると信じていた。私のみたところ、Juliaもそう信じているようだった。
私はホメオパシーを見るにつれ、ホメオパシーに何らかの効果はあるのかもしれないと、嫌々ながら考えるようになった。私には、ホメオパシーはインフルエンザ予防接種と同じように働くもので、ホメオパシーと通常医療の違いは有効成分の希釈度の違いだと思えた。
Juliaは頑固なので、私には彼女に何を強制できる気がしなかった。彼女が手術を拒否したとき、彼女の主治医はドアをバタンと閉めたときも、彼女は動揺していなかった。主治医は怒って、彼女は5年以内に死亡するだろうと言った。
しかし、Juliaは顧みることなく、West Londonで開業していたホメオパスに週1回相談に行った。彼女の死後、私は引き出しの中に、小さな錠剤の包やボトルを見つけた。それらはまったく同じに見えたが、肝臓・脾臓・腎臓と記載されていた。
ホメオパシーには具体的な効用がありそうに思えなかった。それがおそらく、Juliaが極端な治療法を試し始めた理由だったのだろう。
やがて、Juliaは二人目のホメオパスに相談に行くようになった。そのホメオパスはインドのサイババを信奉し、自身をミセス・サイと呼んでいた。そのホメオパスはWest Londonのテラスハウスで開業していた。
土曜ごとに、私はその家まで車で出かけて、ガラスの小瓶いっぱいの錠剤を受け取り、それぞれに7ポンド支払った。3年以上にわたり数千ポンド支払った私は、いらついて、そのホメオパスにいつ治癒するのかと問うた。そのホメオパスは「あなたの奥さんは既に治癒している。彼女には癌はもう残っていません」と答えた。
私がそれをJuliaに伝えると、Juliaは激怒して、サイババに関わるものすべてを投げ捨てた。
もっとも役に立たなくて、もっとも高価だった治療法は、"Vita Fons II"水だった。JuliaはSomersetのTauntonにある会社に、85mlあたり18ポンドで注文していた。つまりは1リットル当たり210ポンドということになる。
彼女はこの水を、タルカムパウダーやスキンクリームさらには、発根剤や種皮などともに、月1〜2回、注文していた。
有効成分表はなく、それらはどれも賢しげに医薬品ではないと書かれていた。水には明確に「これは水です」と書かれていた。
添付された説明書には「この製品は崇高なデベロップメントがエンコードされている」と書かれていた。それが何を意味するのであれ。そして「プレパレーションは固有の完全性の意識を喚起する効果を達成する。これらを使用することで、魂と内在的神性のインタフェースを向上させる」と書かれていた。
"Vita Fons II"の会社はさらにバックアップサービスを提供していた。「固有の波動」を知らせるために、髪の毛をひと房を送付すると、一日24時間様々なエネルギーを放送することを、月あたり29.5ポンドで約束していた。さらには、彼らは8ポンドで私信を提供していた。
この無意味な言葉は神について言っているようだったが、私には21世紀のスネークオイルにしか思えなかった。これらはすべてスピリチュアルな話しなので、証明も反証もできない。
2004年7月にJuliaが死んだ後で、私は手紙が保管されているのを見つけた。その手紙、Vita Fons IIの背後にいる女性Elizaeth Buckinghamが、Juliaが癌であること知っていたことを示していた。2003年8月付けの手紙には「塩水で傷を洗うなら、その水にVita Fons IIを加えることをお奨めします。」とあった。読み進めると、彼らはJuliaに「この水をかけたら、小切手を送ってください」と書いていた。私は不愉快になった。
信仰を商売目的にこのように使うのは非道徳かつ汚い。教区司祭が聖水を1リットル210ポンドで販売したら、逮捕されるだろう。しあkし、別の道を進めば、なんだって公正な取引になる。
Juliaはサイキック外科医ひとりと、3〜4人の遠隔ヒーラーに相談するようになった。彼らは彼女に電話で、物理的に検査する必要はなく、自宅から90分セッション60ポンドでスキャンできると告げていた。
症状が改善しないと言うと、彼らはあなたの行いが悪いと返してくる。喜んでいる患者に対しては結束しているクラブのようになる。もっとも、私には患者がアドバンテージをとられていると思えるが。
Juliaがひとたび下り坂を転げ落ち始めると、他の多くの治療者たちが寄生虫のように群がってきた。おそらく彼らは患者の情報を交換しているのだろう。なかには善意もあったかもしれないが、彼らは弱い立場の人々から金を巻き上げていた。
癌だと診断されてから4年がたった1994年までには、Juliaは人生のすべてをこれらの治療法に捧げるようになっていた。
私が買い物や料理をしている間、彼女はベッドルームに閉じこもって、瞑想や読書やネットサーフィンをしていた。
一方、腫瘍は大きくなっていた。2001年には身体の表面に到達し、出血があった。Vita Fons IIの人々は、「これは良い兆候かもしれず、悪い兆候かもしれない」といった。そして、服を脱がなくてもよいように、服の上から水をかけるように助言した。Juliaは関節に持続性の痛みを感じるようになった。そして、腫瘍が匂い始めた。死の匂いを。
ひどい状態だったはずだが、彼女は死にたいとは思っていなかった。彼女は子供たちとともに行きたいと願っていたが、子供たちに自分の病状を告げないと心に決めていた。
人々は私に何故、彼女を医者に無理にでも連れて行かなかったのかと問う。しかし、彼女は泣き叫んで去って行った。私が治療法が効いていないのではないかと疑い、考えを改めるように言うと、彼女はますます頑なになっていった。
これらの商品の費用が野放図に拡大して、私たちはお金に困るようになっていた。そして、そのことが息子に悪影響を及ぼしている点について、私たちは議論するに至った。
私は彼女に信じられないくらい怒っていたが、それでも彼女を支えようとしていた。私は彼女を愛していたが、息子のために離婚しようと決心し、行動を強制しようとした。というのは私たちはもう今までのようなことを続けられなくなっていたからだ。
彼女が死んでから、私は罪悪感を感じているか自問したが、答えはノーだった。私はあれ以上何もできなかったと考えているが、私は彼女が話していた人々すべてに反対する、ただひとりだった。彼らの中には私自身が問題だと言っている者たちもいた。
私は30年ITの仕事をしていたが解雇され、ワンルームに引っ越して、彼女と家庭に住んでいる子供対を毎週末訪問するようになった。
Juliaが生きている姿を最後に見たのは、昨年5月に通りでショッピングバッグを持っているときだった。私は彼女が人生の終わりに来ているのだと感じた。
彼女の死はあっという間にやってきた。7月に、息子が友達と休日に出かけた、その日の午後に、誰かが"Macmillan nurses"を呼んだ。2日後に彼らは私に電話をかけてきて、母の死の前に息子を連れてくるようにと言ってきた。しかし、私が着く前に、手遅れであることが分かった。私は息子に、彼女が癌であり、既に死亡していると告げねばならなかった。彼女が子供たちに癌であることを告げなかった理由は分からない。
たぶん、彼女は自分が回復すると信じていたのだろう。私は回復するとは考えていなかったが、彼女は医師意志の強い女性であり、私は彼女の願いを無視できる気がしなかった。
息子は泣き出して「何かおかしいと思っていた」と言った。それは悲惨だった。息子も娘もJuliaが病気のことを言わなかったことに怒っていた。Juliaはさよならを言う時間も、手紙を書いて説明する時間も残していなかった。私は打ちひしがれたが、それで終わりではなかった。
葬儀の後で、私は"Vita Fons II"水が何十箱もワードローブの中に隠してあるのを見つけた。さらに、錠剤2錠と「ベルリンの壁。有毒。手を触れないでください」と書かれた紙の入った、小さな錠剤ケースを見つけた。これは本物のベルリンの壁の破片を含んでいて、生活の中で遭遇する摩擦に対応うするのを助けるものとされていた。それがどう女性の乳癌の治療につながるのか、私にはわからなかった。それから私は12,000ポンドのクレジットカードの請求書を見つけた。その金額は過去10年にわたり、彼女の病気のために支出された金額のほんの一部にすぎない。
私は怒ったが、それはJuliaに対してではない。彼女の深い懸念を悪用したと思われる者たちに怒っている。彼らは行動できたの法規制がないためであり、彼らの主張があまりに形のないものだった。
それらはチンプンカンプンなものだが、病気が末期的であれば、信じるようになるかもしれない。Trading Standards当局は詳細に調査すべきだと思う。しかし、「壺の中の神」を売ると基本的に主張している者がいたとして、当局に何ができるかわからない。ただ、私は、そのような商売をしている者たちが道徳的かつ倫理的に病んだものから財産を作っていることを公開すべきだと思う。
しかし、ホメオパシーはそれとは違う。というのは肉体的治療を主張しているからであり、医学教育を受けて否人々が治療を行ってよいというのはナンセンスだからだ。ホメオパシーが医療の中で正当なものとして扱われるとしたら、それは通常医療の資格に追加する形のみだ。また、肉体を診断することなく治療を実行できるというのは、間違いである。
私はそれらの商売を行う者たちは、代替医療が効かないだけでなく、危険になる時点があることを知っておくべきだと考えている。すなわち、Juliaのように通常医療の替わりに用いようとした時だ。彼らには、自分にとって最善の行動がとれない人々に対して、責任がある。
統計によれば乳腺腫瘤切除の85%は成功しているので、Juliaは治癒の可能性が大きかった。治癒しなかったとしても、"いわゆる治療"に恐るべき執着をすることなく10年は生きられただろう。彼女はもっと苦痛が少なく、家族の生活はもっと普通で、私たちはお金に困ることもなく、離婚することもなかっただろう。まったく恐るべき人生の浪費だった。
Vita Fonx IIの広報担当であるElizabeth Buckingumは「Julia de Vaattという名前を関知していない。したがって、彼女が顧客であったかどうかわからない。私が言えることは、我々が、生死を彷徨っている弱い立場の人々から収奪を行っていない点だ。我々はこの製品が癌治療など、いかなく肉体的症状を治療するとは宣伝していない。スピリチュアルヒーリングに関して推奨している」と述べている。
英国ホメオパシー協会(The British Homeopathy Association)は医療資格のあるホメオパシー開業医を代表している。広報担当は「これは悲劇的な事例だと思われるが、我々は起きたことをまったく容赦できない。Julia de Vaattに、乳癌の治療にホメオパシーに依存するべきだと助言してはならなかった。我々は1400名のホメオパスを代表していて、彼らは医療資格を持っている。彼らは誰も、癌だと診断された後に通常医療の使用を停止するように患者に助言することはない。ホメオパシーは通常医療とともに使ってもよいが。残念ながら、すべてのホメオパスが医療資格を持っているわけではなく、法的規制もない。これは誰でもホメオパスとして開業できることを意味する。」と述べた。
BOB de Vaattは"Fake Honesty"(SeaNeverDry Publishing, £7.99)の著者である。
2010/08/17
メモ「Julia de Vaattとホメオパシー」
これはちょっとあやしいDaily Mailの紙媒体に掲載された記事である。ネット上には言及例はあるが、あまり広く取り上げられていない。ただし、英国ホメオパス協会(The Society of Homeopaths)が反論記事を挙げているので、実在ネタだと思われる。
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