2010/09/30

コントロールの喪失によって、インテリジェントデザイン支持に傾く...

コントロールの喪失(理解できない力で制御不可能になったという感情)および、その回復と否定論・陰謀論の関係について、幾度か取り上げてきた。


これらと関連する研究論文が最近Journal of Experimental Social Psychologyに掲載された。

==>Bastiaan T. Rutjens, Joop van der Pligt, Frenk van Harreveld: "Deus or Darwin: Randomness and belief in theories about the origin of life", Journal of Experimental Social Psychology, Volume 46, Issue 6, November 2010, Pages 1078-1080

これは、140名の学部学生(女性108名、男性32名、年齢平均21.06歳(標準偏差3.96歳))を被験者として、コントロールの喪失と、進化論・インテリジェントデザイン支持の関連を実験したもの。

方法は:
Participants were randomly assigned to a control-threat or nothreat condition. Control was manipulated by a bipartite task: first, participants were asked to recall an unpleasant situation over which they had or lacked control, and to subsequently summarize this event in 50-100 words. Next, they were asked to provide three reasons supporting the notion that the future is (un-) controllable.

被験者はランダムに、コントロール脅威条件と、非脅威条件に分けられた。コントロール脅威側は2段階のタスクで操作された。まず、被験者はコントロールを持っているor失った状態の不愉快な思い出を問われ、その出来事を50〜100語でまとめさせられた。続いて、未来が制御可能(不可能)な理由を3つ挙げるように告げられた。
そして、58名がダーウィン進化論(TE)とインテリジェントデザイン(ID)の説明文を見せられて、41名がダーウィン進化論(TE)とConway Morrisの進化論(CMTE)の説明文を見せられて、38名がConway Morrisの進化論(CMTE)とインテリジェントデザイン(ID)の説明文を見せられて、どちらが地球の生命の起源の説明について適切なフレームワークか選択させられた。

その結果は...
Rutjens2020fig.png

非脅威条件では

  • 進化論 vs インテリジェントデザインは、インテリジェントデザインのちょっと勝利、
  • Conway Morris進化論 vs インテリジェントデザイン vs 進化論は、インテリジェントデザインのそれなり勝利、
  • 進化論 vs Conway Morris進化論は、 Conway Morris進化論のちょっと勝利。

これがコントロール脅威条件で

  • 進化論 vs インテリジェントデザインは、インテリジェントデザインのかなり勝利、
  • Conway Morris進化論 vs インテリジェントデザイン vs 進化論は、インテリジェントデザインのそれなり勝利、
  • 進化論 vs Conway Morris進化論は、 Conway Morris進化論の圧倒的勝利。


「コントロールの回復」を求めて「進化論より、Conway Morris進化論あるいはインテリジェントデザインへ流れた」らしい。

感情に応じて、わりと簡単に考えを変えているらしいことを示す研究だが、類似したネタとして「神と科学の間」で考えを簡単に変えるという研究がある。
[Jesse Preston and Nicholas Epley: "Science and God: An automatic opposition between ultimate explanations", J. Experimental Soc. Psychology, 45, 238–241, 2009.]

Science and religion have come into conflict repeatedly throughout history, and one simple reason for this is the two offer competing explanations for many of the same phenomena. We present evidence that the conflict between these two concepts can occur automatically, such that increasing the perceived value of one decreases the automatic evaluation of the other. In Experiment 1, scientific theories described as poor explanations decreased automatic evaluations of science, but simultaneously increased automatic evaluations of God. In Experiment 2, using God as an explanation increased automatic evaluations of God, but decreased automatic evaluations of science. Religion and science both have the potential to be ultimate explanations, and these findings suggest that this competition for explanatory space can create an automatic opposition in evaluations.

科学と宗教は歴史を通して繰り返し衝突してきた。その理由の一つは、科学と宗教が同一の現象について対立する説明を提示してきたことによる。我々はこの対立が自動的に起きることを示す証拠を提示する。証拠は、一方が認められた価値を増すと、他方の評価自動的に下がる。実験1では、科学理論が貧弱な説明だと言われると、科学への評価を自動的に下げたが、同時に神への評価を自動的に高めた。実験2では、説明として神を使うことは、神の評価を自動的に高めたが、同時に科学への評価を自動的に下げた。宗教と科学には最終的な説明である可能性があり、これらの調査結果は、説明の座をめぐる競争で、自動的に他方の評価を下げることを示唆している。
人が何を正しいと考え、何を信じるのかというのは、本人にとっては重大に思えても、実際にはこの程度で変化するものらしい。


なお、被験者が見せられた説明文は以下の通り:
Darwin's Theory of Evolution (TE):

Evolutionary theory posits that the way our world and the universe work springs from evolution; a process in which inheritance, procreation, and natural selection play an important role. Natural selection, the basis of this theory, is generally an unstructured and random process in which unpredictable features of the natural environment determine how life evolves. A wide array of circumstances determines how life evolves, and coincidence plays a large part in this process.

進化理論は、我々の世界の在り方と、宇宙の働きが進化によるものだと考える。その過程では、遺伝と繁殖と自然選択が重要な役割を果たす。この理論の基礎である自然選択は、一般に非構造的かつランダムな過程であり、予測不可能な自然環境の性質によって生命の進化が決定される。環境の違いによって生命の進化は支配され、偶然が重要な役割を果たす。

Intelligent Design (ID):

Intelligent Design theory posits that the way our world and the universe work can be best explained as the result of the efforts of a higher power (for example God), who designed our world and exerts control over it. Contrary to evolutionary theory, which explains life on our planet as the results of random processes, ID theory posits that, given the complexity of our planet, its design requires an external agent.

インテリジェントデザイン理論は我々の世界の在り方と、宇宙の働きを、神などの高次のパワーの結果としてもっとも良く説明できるとと考える。その高次のパワーは世界をデザインし、そのコントロールために力を使う。地球の生命をランダムな過程の結果と考える進化理論と違って、インテリジェントデザインは地球の複雑さについて、そのデザインは外部のエージェント必要とすると考える。

Conway Morris' version of evolutionary theory (CMTE)

A recently introduced version of evolutionary theory has been developed from the basic assumption of ‘converging evolution.’ According to this principle, life on our planet is not the result of random processes: if evolution would be replayed, results would inevitably be similar to the present state of affairs. The course of evolution follows certain paths and is therefore best described as a mechanism that is bound to have specific structural characteristics.

最近提唱された進化論のバージョンは、収斂進化を基本的な仮定として発展した。この原理によれば、地球上の生命はランダムな過程の結果ではない。進化を再度実行すれば、必然的に現在と類似した状態に到達する。進化の過程は特定の経路に従うので、特定の構造特性に限定するメカニズムとして進化はもっともよく記述される。
posted by Kumicit at 2010/09/30 00:01 | Comment(1) | TrackBack(0) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「非脅威条件では」はたぶん「非コントロール条件では」ですよね。ちょっと混乱しました。
Posted by nrt at 2010/10/01 22:35
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。