2011/01/29

終わりに近づく教会たち

米国には33万の教会があるWall Street Journalの報道によれば、2008年以降に200近くの教会が銀行から抵当権行使されている。全体の0.1%にも満たない数だが、これまでは教会が不動産ローンを返済できずに教会施設を放棄することが無に等しかったに比べると、大きな変化である。

ひとつの原因は広い意味では経済情勢かもしれないが、直接的には宗教側にある:
Religious denominations of all kinds have suffered in recent years as donations have declined, with many Catholic parishes closing and synagogues merging their congregations. But the property-financing problems have been concentrated among independent churches, which while seeking to expand lack a governing body to serve as a backstop to financial hardship.

近年あらゆる種類の宗派が寄付金の減少に苦しんでおり、カトリックは教区を閉鎖し、シナゴーグは信徒団を合併した。財政問題の安全装置として機能する管理機関のない独立系教会に、不動産金融問題が集中的に起きている。
そして、もうひとつが金融機関側の動き:
Historically, churches wanting to build turned to their governing bodies or to specialized lenders that originated fixed-rate 25-year to 30-year mortgages.

歴史的には教会施設を建てたい教会は、宗派管理機関や専業の貸し手の固定金利の25〜30年の不動産ローンを使ってきた。

But during the real-estate boom, regional and community banks attracted churches with lower rates on shorter-term loans. At the same time, some bond underwriters began offering churches more money up front if they issued so-called compound-interest bonds. In such cases, churches often paid nothing until the bonds came due years later, but then had to pay both the principal and accrued interest, which often doubled the amount they owed.

しかし、不動産ブームで地域やコミュニティの銀行が教会に低利短期ローンを提供した。同時に債券のアンダーライターが、さらに多くの資金調達にコンパウンドインタレスト(複利)ボンド発行を持ちかけた。多くの場合、教会は満期日までお金を払わないで済む。満期日が来たら元本と利子をもとめて返済する。
通常の債券だと発行者は、半年ごとにクーポン(金利)を支払い、満期日に元本と最終回のクーポンを支払う。しかし、コンパウンドインタレストボンドだと、満期日まで支払いがなく、満期日に元本と複利をまとめて支払う形になる。そして...
Many such bonds come due in the next few years. But with property values down and cash in short supply, many churches won't have the funds to payand will have trouble refinancing. "In 2011 and the next couple of years, we're going to see a big maturity wall hitting these churches," said Scott Rolfs, head of Wisconsin-based investment bank Ziegler and Co.'s Religion and Education practice.

そのような債券は数年で満期日になる。不動産価値が下がり、キャッシュフローが不足すると、返済資金がなくなり、借り換えができなくなる。2011年以降の数年間に満期が来るものが多く、これらが教会に打撃を与えるだろうと、Ziegler銀行のScott Rolfsは言う。
また、このような短期ローンやコンパウンドインタレストボンドを使ってなくても、教会施設内に小売店舗スペースをつくって、そこからの賃貸料で安定収入を得ようとした教会も資金難に陥っている場合があるという。テナントの小売店が閉店し、次の借り手が見つからないと、教会は不動産ローンの返済資金に困り、そのときに不動産価値が下落していれば、返済期間を長くして直近の負担を軽くするような借り換えもできず、抵当権行使されることを選択するしかなくなる。

これらの教会の先行きは、紙でも信者でもなく、不動産価格が持ち直すかどうかにかかっている。
posted by Kumicit at 2011/01/29 01:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | News | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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