2011/04/21

共和党支持と温暖化否定のリンクが過去10年強まってきている

米国では、保守思想的には人間の価値を貶めるものとして、福音主義キリスト教の立場では創世記に反するものとして、進化論と地球温暖化とヒトクローンが挙げられている。反進化論の歴史は100年になるが、温暖化否定論の歴史はわりと短い。Gallup pollの世論調査によれば、支持政党とのリンクが強くなったのは過去10年のことだという。
{Aaron M. McCright and Riley E. Dunlap:"THE POLITICIZATION OF CLIMATE CHANGE AND POLARIZATION IN THE AMERICAN PUBLIC'S VIEWS OF GLOBAL WARMING, 2001–2010", Sociological Quarterly, Volume 52, Issue 2, pages 155–194, Spring 2011, DOI: 10.1111/j.1533-8525.2011.01198.x via Chris Mooney]

We examine political polarization over climate change within the American public by analyzing data from 10 nationally representative Gallup Polls between 2001 and 2010. We find that liberals and Democrats are more likely to report beliefs consistent with the scientific consensus and express personal concern about global warming than are conservatives and Republicans. Further, the effects of educational attainment and self-reported understanding on global warming beliefs and concern are positive for liberals and Democrats, but are weaker or negative for conservatives and Republicans. Last, significant ideological and partisan polarization has occurred on the issue of climate change over the past decade.

我々は2001〜2010年の全米の代表的なGallup Pollの10会の世論調査データの分析から、米国の一般人の間での気候変動についての考え方の政治的分極を調べた。リベラルおよび民主党支持者は、保守および共和党支持者よりも、科学的コンセンサスと一致した信条を報告し、地球温暖化に個人的に懸念を表明することがわかった。さらに、教育および地球温暖化の考えや懸念についての理解は、リベラルおよび民主党支持ではポジティブだが、保守および共和党支持者では弱いかネガティブである。そして、気候変動の問題について過去10年、顕著なイデオロギー的および党派的な分極が起きていることがわかった。

PollGW_DemRep20012010.png





もののついでに、米国の温暖化否定を復習しておくと...

1970年代から1990年代にかけての「CFCによるオゾン層破壊」をめぐる戦いで、否定論者たちは次のような行動をとった。

  1. 証拠に反論する広告キャンペーンの開始
  2. 自分の視点を支持する、既に否定された科学研究や神話を科学的事実として宣伝する
  3. 科学的な不確定さを指摘し、即時対応したときの経済減少を主張
  4. 自分たちの視点を支持するローカルなデータを使い、全地球的な証拠を無視する
  5. 「予算獲得のために大災厄の不確かな予測を利用している」と、科学者を批難する
  6. 「イデオロギー的ゴールを推進するために環境問題を誇大宣伝している」と環境保護主義者を批難する
  7. 「米国だけ規制したら、競争力を失う」と主張する
  8. 「対策をとるためには、さらなる研究が必要だ」と主張する
  9. 影響とともに生きていく方が費用がかからないと論じる
これは、温暖化否定論で行われていることと、まったく同じである。

==>米国の温暖化否定を概観する (1) 前哨戦 あるいは オゾン層破壊否定の戦い(2009/12/13)


この戦いの最後に登場した否定論者サイドの科学者Dr. S Fred SingerとDr. Sallie Baliunasはいずれもオゾン層の専門家ではなかった。そして、地球温暖化問題でも否定論者として登場した。

==>米国の温暖化否定を概観する (2) オゾン層破壊否定の終わり あるいは温暖化否定論者の登場(2009/12/13)
==>米国の温暖化否定を概観する (5) 温暖化否定論の立場をとる科学者たち(2009/12/13)

温暖化否定論の主張はDr. S Fred Singerひとりで尽くされてしまっている。その主張を、理系スタッフのほとんど存在しない保守系シンクタンクが出版物などの形で広めていく。専任やフェローなどの形で理系のPhDを関与させているのは、Dr. Sallier Baliunasの所属するThe George C Marshall Instituteや、Dr. S Fred Singerが自ら主宰するSEPPくらいである。

==>米国の温暖化否定を概観する (5b) 温暖化否定シンクタンク (2009/12/18)

そして、それらの宣伝を受けて、温室効果ガス排出規制に対抗する政治家(共和党Inhofe上院議員)がいる。

==>米国の温暖化否定を概観する (6) 温暖化否定の政治家Jim Inhofe(2009/12/14)

Jim Inhofe連邦上院議員の行動は、2002年のLuntzメモにしたがったもの。その助言は、かつてのオゾン層破壊否定のときに行われたものと同様なものだった。

==>米国の温暖化否定を概観する (6b) 2002年のブッシュ政権への助言 Luntzメモ (2009/12/17)

地球温暖化否定とオゾン層破壊否定はまったく同じ形で進行しているように見える。しかし、その2つには巨大な違いがあった。それは福音主義キリスト教である。聖書創世記をかかげて、温暖化を否定する連邦下院議員や牧師たちもいる。

==>米国の温暖化否定を概観する (3) 聖書に基づく温暖化否定論(2009/12/13)

「人間は1万年前までに神よって現在の姿で創造された」と信じる人にが40%以上という、福音主義キリスト教(南部バブテスト)の影響のもとで、20〜30%が温暖化していないと回答し、15〜30%が人間が温暖化の原因ではないと回答する。

==>米国の温暖化否定を概観する (7) 温暖化否定論に立つ米国人たち(2009/12/15)

ただし、創造論者たちは、温暖化否定というわけではない。

==>米国の温暖化否定を概観する (4) 温暖化否定の立場に立つわけではない創造論者(2009/12/13)

また、世論調査結果は、夏が涼しいとか、Climate Gateとかで変動するものの、長い目で見れば趨勢はほとんど変わっていない。福音主義キリスト教の影響が大きい人々は考え方を変えないようである。

==>米国の温暖化否定を概観する (7b) ゆるがない米国の世論(2009/12/16)

これについては、今回の調査結果を見ると、全体では、ゆるがないように見えていたが、実際には、支持政党で分極化が進んでいた。


posted by Kumicit at 2011/04/21 22:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | Sound Science | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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