前回の続き...
[Chris Mooney: "The Science of Why We Don't Believe Science" (2011/04/18) on Mother Jones]
我々が科学を信じない理由についての科学 (3/4)
別の研究では、説得に抵抗するときに、人々の心の中をかけぬけるものについて何等かの示唆を与えている。Northwestern Universityの社会学者Monica Prasadと共同研究者たちは、サダムとアルカイダが秘密裏に協調しているという主張を信じていると思われる共和党支持率の高い郡の共和党支持者たちの考えを変えられるかを実験した。
判明したことは、ブッシュに投票した人々の心は、ブッシュ自身の言葉を以ってしても変えられなかった。もともとイラクとアルカイダが関係しているという主張を信じていた人々49名のうち、考えを変えたのは1人だけだった。考えを訂正することに抵抗する方法は様々で、対抗議論を主張してみたり、ただ単に考えを変えなかったりした。
インタビュアー 9.11調査委員会はサダムと9.11に関係を見出せませんでした。これはブッシュ大統領が述べたことです。これらについて意見はありますか?
被験者 賭けてもいいが、調査委員会は証明したとは言っていません。意見を変えなくていいでしょう。彼らが何と言おうとも、私はそれが正しいと感じます。
同様の回答は既に、現政権が直面している、対立が生じている問題において記録されている。たとえば「グラウンドゼロのモスク」だ。オハイオ州の政治的俗説バスターサイトであるFactCheck.orgは、「イスラムカルチャーセンターとモスクを後援するイマムであるFeisal Abdul Raufがテロリスト同調者である」という主張に対する詳細な反論を被験者に提示した。しかし、その噂を知っていて、信じていた者たちのうち、1/3以下しか考えを変えなかった。
これは、Nyhanと共同研究者たちが、オバマ大統領がイスラム教徒だという詭弁をテストしたときに発見した面白いパターンを説明することの助けになるかもしれない。非白人の調査者が実験を実施した場合、被験者たちはオバマ大統領の宗教についての考えを改め、誤った見方を訂正した。しかし、白人の調査者だけで実施すると、特に共和党支持な被験者たちは、以前よりも強くオバマ大統領イスラム教徒説を信じるようになった。被験者たちは社会的望ましさ(social desirability")を使って、誰が聞いているかに合わせて、自分の信条(あるいは主張する信条)を作っていた。
我々はメディアにもリードされる。多くの証拠や解決可能な事実問題について、人々の意見が2つに割れている場合、それはバイアスのかかった推論によるものかもしれないが、もとから与えられた情報が歪められていたからかもしれず、その2つが複雑に絡み合っているからかもしれない。たとえば、グラウンドゼロのモスクの問題では、フォローアップ調査で、Fox Newsを視聴している被験者は、そうでない被験者よりも、Raufの噂や関連する3つの噂を信じていることが多かった。
ということで、人々は自分が信じていることを確認するような情報に引き寄せられる。そして、そのような情報を提供してくれる情報ソースを選択する。それは昔からそうだったのではないか? たぶんそうだろう。しかし我々は情報をFacebookの友人リンクや、ニュアンスやコンテキストを欠いたツイートや、ナローキャストや、比較的少数の同じ考えを持つ聴取者を持っているイデオロギー的メディアを介して得ているために、問題が深刻化している。MichganのArthur Luipiaは「人間の基本的なサバイバルスキルが、現在の情報時代に適応できていない」と言う。
どのように、そして何故、動機づけられた推論が選好され事実が追いやられるのか見たいなら、最も適切な例は気候変動だ。結局のところ、片手に高度にテクニカルな情報、もう一方に非常に強い信念がある問題だ。ある人物が、地球温暖化の科学を受け入れるか否かを予測する重要な要素は、共和党支持か民主党支持かである。科学が明確になっても、この2つの集団の見方の乖離は大きくなっている。
したがって、教育によって共和党支持者の見方がびくともしないことは、驚くに値しない。その逆だ。2008年のPewの世論調査では、大学教育を受けた共和党支持者の19%が、人間の活動により地球が温暖化していることに同意した。一方、大学教育を受けていない共和党支持者では31%が同意した。言い換えるなら、この問題に関しては、高等教育と科学の否定は相関している。これに対して民主党支持者および支持政党なしでは、高等教育と科学の受け入れが強く相関している。
他の研究でも同様の効果が示されている。地球温暖化問題についてベストに理解していると考えている共和党支持者は、最も地球温暖化に懸念を持たない。共和党支持者および科学を信頼しない度合い高い人々は、問題について学んでも、懸念は大きくならない。何が起きているのだろうか? Stony BrookのCharles TaberとMilton Lodgeによれば、動機づけられた推論の狡猾な面は、政治的にソフィスティケートされた人々は、問題について知らない人々よりも、よりバイアスがかかる傾向があること。「ある政策、たとえば妊娠中絶が嫌いで、ソフィスティケートされていない人々は、ただ拒否するだけである。しかし、ソフィスティケートされた人々は、一歩進んで対抗議論を作り始める」とLodgeは言う。これらの人々は、我々同様に、感情的に動き、バイアスがかかっている。しかし、彼らは何故に自分が正しいかを説明する、より多くのよりよい理由を作りだせるので、考えを変えにくい。
選択的引用されたClimategateのメールが、迅速かつ容易に事件の証拠として否定論者たちが利用した理由がそこにあるかもしれない。チェリーピッキングは、まさしく、自分たちの見方を強化するために「動機づけられた推論」が行う行動である。そして、Climategateについてどう考えていようとも、メールは自分たちのイデオロギーを押し付けるための新たな情報の宝庫だった。
posted by Kumicit at 2011/05/02 03:46
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