なお、引用されているように、"国境なきホメオパス"の活動は、ボランティア3名(Sally Tamplin, Holly Manoogian & Alyssa Wostrel)による10日の活動である。"国境なきホメオパス"のレポートには数字はないが、大きめに見積もってセッション10分・1日12時間稼働・3人・フルに10日としても2000名程度。セッション1時間の普通のスタイルをとって、8時間稼働くらいだと、240名程度。それだけの人々が"魔法の水"を与えられるという"被害"を受けたと思われる。
ハイチの人々が何をしたというのか?
これを考えてほしい。一年半前、ハイチの人々は巨大地震にみまわれ、完全な復興は可能だとしても、数十年、あるいは生涯を要する。その日から、ハ イチの人々は膨大な国際援助を受けたが、それはよいことだ。良くないことは、それらの援助にまぎれて、ニセ医療が入り込んできたことだ。ニセ医師 の中でも最たるものであるニセ医師、ホメオパスたちがハイチに入り込んでいることに気付いたのは自身から数週間後のこと だった。このホメオパス集団は、有名で役に立っている国境なき医師団から名前を取って、おどろくべきことに"国境なきホメオパス"と称してい る。"国境なき医師団"と"国境なきホメオパス"の大きな違いは、もちろん、医師団は「自然災害を受けた地域の被害に対する有効な医療である」の に対して、ホメオパスは逆に「魔法の水と、希釈した魔法の水が薬品を記憶するが、尿や糞のことは忘れ去るという、科学以前の生気論信仰」を持ちこ んでいることだ。
それから、1か月後に書いたように、ホメオパスたちがハイチにニセ医療を持 ち込んだだけでは終わらなかった。(鍼麻酔を切断手術に使いたがっている)鍼治療師たちや、鍼の経絡をタッピングする"エネルギー経絡タッピング (Energy Meridian Tapping)の療法師が続いた。ハイチの地震被害地域にこいつらが侵入していることを、私はほとんど忘れていたことは認めよう。少なくとも、私は読者 が"国境なきホメオパス"のアップデートレポートを送ってくるまでは。Homeopaths Without Borders-NA (HWB) has accomplished another successful mission to Haiti.
国境なきホメオパスはハイチでの成功ミッションをまた一つ完了した。
私は最初の一行を読んで大笑いするところだった。しかし、私はホメオパスの成功が、ハイチの被災者たちの苦痛を与えることによるものであることを 思い返した。そして読み進めて、大きな不安を感じた。Volunteers Sally Tamplin, Holly Manoogian and Alyssa Wostrel traveled to Port-au-Prince on May 23 and returned home on June 3, participating in the longest, most intense undertaking in that country by HWB. Responding to requests by charitable groups in Haiti, the volunteers worked not only in the capital but also traveled to sites in the countryside. Their ten-day schedule was a whirlwind of compassionate homeopathic intervention.
"Holly Manoogian and Alyssa Wostrel"のボランティアSally Tamplinは5月23日にPort-au-Princeに出向き、6月3日に帰国した。これは国境なきホメオパスがハイチで実施しているなかでも最長 の治療従事期間である。ハイチの慈善団体の要望に応えて、ボランティアたちは首都のみならず、田舎にも出かけた。彼らの10日間は、思いやりある ホメオパシー治療の疾風だった。
「思いやりあるホメオパシー治療」とは恐るべき考えだ。本当の薬剤を購入し、"国境なき医師団"や国際赤十字のような役に立つ慈善団体を支援する ために使われるべき資金を、彼らは首都から離れた場所に滞在して旅費と滞在費として使った。そして、彼らは自らが集めた資金を、状況が未だ悪く、 飲料水が不足し、道路が壊れたままで、瓦礫の山が国中に積みあがっていて、少人数でもできることすら、人々の必要を満たしていないと彼らが言うと ころに、魔法の水を運ぶために使っている。
そして、これらの少人数がハイチの人々のためにやったことは何か?ささやかだ:Haitians continue to demonstrate symptoms of trauma and grief from an earthquake that took place a year and a half ago. Skin problems such as ringworm are prevalent as are gastrointestinal problems including severe diarrhea; some of the latter are related to poor nutrition. Vaginal infections persist. Sadly the group treated several very ill infants who were malnourished, dehydrated, underdeveloped, feverish and covered with rashes from head to toe.
ハイチの人々は一年半前におきた地震によるトラウマと悲痛の症状を呈し続けている。白癬などの皮膚の症状は重度の下痢を含む胃腸の症状と同様に広まっており、後者は栄養不足との関連もある。膣感染はまだ続いている。悲しいことに、我がグループが治療した重症の子供たちは、栄養失調や脱水や発育不全や発熱や全身の発疹などになっていた。
膨大な種類のレメディが使われるが、もっとも使われるのはアルニカ、アコナイト、イグナシア、コースティカム、ネイチュミア、セピア、フォスフォラス、サルファーである。
はっきりさせよう。それは、ホメオパスの一団が、まだ壊滅的な地震から復興途上にある貧しい第3世界の国に行った。彼らは白癬や膣感染症や感染性下痢など病気に苦しんでいる人々を見出す。彼らは栄養失調や発育不全や脱水症状の乳児を見出す。彼らが提供するものは? アルニカ、アコナイト、イグナシア、コースティカム、ネイチュミア、セピア、フォスフォラス、サルファー、それらすべてを一分子も残らないように希釈したものだ。言還るなら、彼らは水と、水をたらした砂糖錠剤だ。彼らはPedialyteのような電解質水すら持っていない。粉ミルクとともに電解質水は、これらの乳児たちに、ほぼ確実に必要なものだ。
あまりの役立たずに唖然とした私は、"国境なきホメオパス"の過去の遠征レポートの幾つかを熟読することにした。2010年4月のレポートにあるように、ホメオパスたちが、いかに救援活動に入り込んでいるを見ると憂鬱になる。Immediately after we opened our clinic at the French Hospital, men, women, and children from all over the city headed our way. They lined up seeking help for headaches and dizziness, sprained ankles and crushed toes, and every complaint in between. We treated an infinite number of people who had irritated eyes caused by the debris in the air and countless lethargic babies weakened by the inadequate food supply. We used Euphrasia for eyes and Carbo vegetabilis for the infants. We also used Sepia and Vaginitis combinations for many of the female complaints and Arnica montana and the Arnica gels for a good number of the musculoskeletal injuries. We relied on many of the most basic remedies like Calcarea carbonica and Sulphur and handed simple cell salt combination remedies to the children over and over again. There were countless other valuable medicines, but rarely did we need Aconite, Ignatia, or Natrum muriaticum. Why was that so?
フランス病院に我々の診察室を開くや、市内全体の男や女や子供たちがやってきた。彼らは頭痛や、めまいや、捻挫した足首や、潰れた足の指など、あらゆる症状の助けを求めて列をなした。空中を飛散するダストで目に炎症を起こした人や、不適切な食糧で弱って昏睡状態になった乳児を、数えきれないくらい治療した。我々は目の炎症にはユーフレイジアを、乳児にはカルボを使った。また、多くの女性の症状にはセピアとヴァジニティスのコンビネーションを、筋骨格系の傷害の多くにはアルニカ・モンタナとアルニカジェルを使った。我々はカルカレア カルボニカやサルファーのような最も基本的なレメディを使い、子供たちにはセルソルトのコンビネーションを使った。数えきれないほどの価値ある薬品があるが、アコナイトやイグナシアやネイチュミアなどを必要とすることはなかった。何故だったのか?
はっきりさせよう。足の指が潰れたり、目に炎症を起こしたり、その他あらゆる傷病の人々には魔法の水が与えられた。ホメオパシーがどうやって千切れた指や四肢をどうやって治療するか疑問に思うかもしれない。彼らは四肢を水で希釈して四肢を強化するのだろうか?もちろん、これは悪いジョークだ。しかし、傷病な人々に彼らが提供できない手助けを焼くするするホメオパスたちの考えに、私は怒りを覚える。ここでも苦しむのは乳児だ。これらの乳児がほぼ確実に必要としているのは電解質水と粉ミルクである。しかし与えられるのは魔法の水だ。そして、この2月のレポートによれば、ホメオパスの活動からハイチの人々が得たのは、医療専門家に対するニセ医療な洗脳だった。これらのホメオパスたちはホメオパシーレメディを与えるだけでは満足せず、看護婦たちにホメオパシーを教えたのだ。
彼らは最良の意志に基づいて行動しているのが明かなことを考えると、私は彼らに厳しくできない。彼らは医療の手助けが人々を見て、快適さはいうまでもなく、少なからぬ時間と労力を犠牲にして、彼らが助けになると信じていることをしている。たとえ、そうであっても、彼らがやっていることは、ほとんど役に立たないことなのだ。「ほとんど」と私が言うのは、彼らが「我々は水や食料や、トラウマや外傷や慢性症状や急性症状のためのホメオパシーを提供した」と自らの努力を描写しているからだ。水や食料は役に立つ。ホメオパシーはそれほどではない。本当のところ、まったく役に立たない。そして、そのことは"国境なきホメオパス"を止めることはない。彼らは自らが訓練した看護婦ホメオパスたちによる恒久的な診療機関を立ち上げようと模索している。
地獄への道は善意で舗装されている。ホメオパシーのようなニセ医療を善意に加えても、この地獄への道をニセ医療が突き進むのを加速するだけだ。
[Orac::"Homeopathy in Haiti, a year and a half later" (2011/07/06) on Insolence]
2011/07/09
ハイチで活動したホメオパス 2011
ニセ医療を批判し続けるOracが、地震から一年半経過したハイチでのホメオパスたちの活動を取り上げた。
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