2006/07/29

定向進化というアンチダーウィニズム

John Wilkins [1998]によれば、アンチダーウィニズムには以下のようなものがあるという。

  • 創造論
  • 系統発生説(定向進化)
  • ネオ・ラマルキズム(環境がゲノムに指示する)
  • プロセス構造主義(生物の幾つかの特徴を決定する変化の深い自然法則がある)
  • Saltationism (形態の変化は突然変異で一気に起きる)

これらのうち、Jean-Baptiste Lamarck自身も支持していた系統発生説(定向進化)とは:
系統発生説(定向進化)[wiki:Orthogenesis]

Orthogenesis, orthogenetic evolution or autogenesis, is the hypothesis that life has an innate tendency to move in a unilinear fashion due to some internal or external "driving force". The hypothesis is based on essentialism, finalism and cosmic teleology and proposes an intrinsic drive which slowly transforms species. George Gaylord Simpson (1953) in an attack on orthogenesis called this mechanism "the mysterious inner force". Classic proponents of orthogenesis have rejected the theory of natural selection as the organising mechanism in evolution, and theories of speciation for a rectilinear model of guided evolution acting on discrete species with "essences". The term orthogenesis was popularised by Theodor Eimer, though many of the ideas are much older (Bateson 1909).

系統発生説あるいは定向進化あるいは自然発生説は、何らかの内的あるいは外的な推進力によって、生物には直線的な方向に動く生来の傾向があるという仮説である。この仮説は、本質主義と目的因論と宇宙目的論に基づくものであり、漸進的に種を変える内在的な推進力を提唱する。系統発生説を攻撃したGeorge Gaylord Simpson [Evolution and Geography 1953]はこのメカニズムを「不可解な内在力」と呼んだ。系統発生説の古典的な支持者は、進化を推進するメカニズムたる自然淘汰の理論と、本質に異なる種に作用する直線的な導かれた進化についての種形成理論を拒絶した。多くのアイデアはもっと古いもの[Bateson 1909]だが、系統発生説(定向進化)という言葉を一般に広めたのはTheodor Eimerである。

Many sources mix this heterodox view of evolution with another - that evolution is proceeding to some long term or ultimate goal; the result are definitions that state "orthogenesis proposes that evolution moves in a unilinear fashion towards a perfect goal". While it is true that early and famous examples of orthogenesis often conflated these two ideas (e.g. Jean-Baptiste Lamarck's theory of evolution), and that these two ideas are buried just below the surface of Intelligent Design, it is important to recognize that these are in fact two separate ideas that are rejected by mainstream science: the latter idea of goal-oriented evolution is better understood as a form of teleology. The distinction can be seen when we recognize that orthogenesis is inherent in the theories of Haeckel and R. S. Lull. Both scientists proposed mechanisms whereby evolution proceeded in unilinear fashion, but neither saw goals (instead they made pseudo-scientific appeals to unknown genetic driving processes). Noticing this is important, because similar flaws recurrently resurface at the fringes of science (typically taking the form of new, mysterious molecular drives that supposedly are pushing phenotypic evolution in certain directions or forcing the formation of new species).

多くの文献では、この進化の異端の見方を、すなわち進化は何らかの長期的あるいは究極の到達点を目指して進むものだという見方と組み合わせている。その結果は「「系統発生説は、進化が完全なゴールの方へ直線的な方法で進むと提唱する」という定義である。Jean-Baptiste Lamarckの進化論のように、系統発生説の初期の有名な例の多くがこの2つの考えを融合している。これらの2つの考えはインテリジェントデザインの表面直下に埋め込まれている。これについて認識すべき重要な点は、実際、これらの2つの考えが主流科学によって拒否されているということだ。後者のゴールを目指した進化は目的論の形でよく理解される。その違いは、系統発生説がHaeckeとR. S. Lullの理論に固有であることをみればよくわかる。この二人の科学者は、直線的な方法で進化が進むがというメカニズムを提唱したが、いずれも到達点を見出していない。かわりに彼らは、未知の遺伝的駆動プロセスという擬似科学を主張した。類似した結果が科学の辺縁でくりかえし起きるので、これに注目することは重要である。特徴的には、おそらく特定の方向に表現型進化を駆動しているか、新しい種の形成を駆動している、新しい不可解な分子駆動の形をとる。

The orthogenesis hypothesis had a significant following in the 19th century when a number of evolutionary mechanisms, such as Lamarckism, were being proposed. Jean-Baptiste Lamarck himself accepted the idea, and it had a central role in his theory of inheritance of acquired characteristics, the hypothesised mechanism of which resembled the "mysterious inner force" of orthogenesis. Other proponents of orthogenesis included Leo Berg, philosopher Henri Bergson and, for a time, the paleontologist Henry Fairfield Osborn. Orthogenesis was particularly accepted by paleontologists who saw in their fossils a directional change, and in invertebrate paleontology thought there was a gradual and constant directional change. Those who accepted orthogenesis in this way, however, did not necessarily accept that the mechanism that drove orthogenesis was teleological.

系統発生説仮説は、ラマルク説など幾つかの進化メカニズムが提案されていた19世紀には、多くの支持者がいた。Jean-Baptiste Lamarck自身もこの考えを受け入れていて、"不可思議な内在力"とよく似た仮説的メカニズムである彼の獲得形質の遺伝の理論の中心的役割を占めていた。系統発生説の支持者には他にLeo Bergや哲学者Henri Bergsonや一時的には古生物学者Henry Fairfield Osbornなどがいた。特に、化石に方向性のある変化と無脊椎動物古生物学におけ漸進的な方向性のある変化を見出した古生物学者に系統発生説は支持された。しかし、このように系統発生説を受け入れた人々が、系統発生説を駆動したメカニズムが目的論的であると必ずしも認めるわけではなかった。

The orthogenesis hypothesis began to collapse when it became clear that it could not explain the patterns found by paleontologists in the fossil record, which was non-linear with many complications. The hypothesis was generally abandoned when no mechanism could be found that would account for the process, and the theory of evolution by natural selection became the prevailing theory of evolution. The modern evolutionary synthesis, in which the genetic mechanisms of evolution were discovered, refuted the hypothesis for good. As more was understood about these mechanisms it became obvious that there was no possible naturalistic way in which the newly discovered mechanism of heredity could be far-sighted or have a memory of past trends.

系統発生説では、古生物学者が化石記録に見つけた多くの複雑さがある非直線的なパターンを説明できないことが明らかになり始めると、系統発生仮説は崩壊を始めた。系統発生仮説は、その過程を説明するメカニズムが見つからなくて次第に放棄されていった。そして、自然淘汰による進化論が有力な進化論となった。進化の遺伝子のメカニズムを発見した現代進化総合説は、系統発生仮説を完全に論破した。新たに発見された遺伝のメカニズムには、先験の明や過去の履歴の記憶を持つ自然主義的な方法がありえないことが明らかになった。

J.H.ブルック他によれば、この直線的な定向進化をJean-Baptiste Lamarckが受け入れていたのは、理神論者だったことと関係しているという:

ラマルクが理神論者であることは、次のような点から言われる。

  • 直線式の分類が支持され得ないことを認めた後も、長く彼は進化の直線的傾向を取り入れることの条件とした存在の鎖に傾倒していた。
  • 神の創造は合理的に定められ、知性的であると確信していた。つまりこれは彼が種の絶滅を認めるの困難にした考え方である。
  • 生存のための闘争を積極的に評価しなかった彼の楽天主義。

J.H.ブルック他: 創造と進化, 1974, p.58 [Amazon]

Jean-Baptiste Lamarckは、「進化の過程を導くとき、神が人間をつくることを直接目的にしていたと、心から信じていた」(p.57)ので、「獲得形質の遺伝の原理は、単に生物体の規則的な進歩から逸脱しているものを説明するのに使われた」(p.57)。

この系統発生説(定向進化)の
  • 内在的な力あるいは外力によって進化する
  • 究極の到達点へ向かって進化がする

という考えは、「個体レベルの突然変異と自然淘汰」ではなく、「種が集団として変化していく」という考えにつながる。そして、その考え方の魅力は強力なようで、旧世紀後半になっても系統発生説(定向進化)につらなる説が、提唱されている(認められたわけではないが)。有名なところでは進化とは、種社会の棲み分けの密度化であり、個体から始まるのではなく、種社会を構成している種個体の全体が、変わるべきときがきたら、皆一斉に変わるのである」という今西進化論とか。SFだと、アーサー C クラーク: 幼年期の終わりwiki:幼年期の終わり,wiki:Childhood's End)[1953]が始まりで、ファーストガンダムのニュータイプなども同様。


この系統発生説(定向進化)を、現在のインテリジェントデザインと比べると

  • 大きな進化の道筋について、Lamarckが理神論的なフロントローディングを想定するのに対して、インテリジェントデザインはデザイナーの超自然からの介入(intervention)を想定する
  • 小さな変化について、Lamarckが獲得形質の遺伝を、インテリジェントデザインが突然変異と自然淘汰による小進化を想定する
と違いはある。しかし、「究極の到達点」のようなアンチダーウィニズムな考えは同じ。「進化は究極の目的へ向かっての進歩であり、その進化はデザイナーによってのみなされる」とも言えるインテリジェントデザインは、系統発生説(定向進化)の変種と見てもよいかもしれない。


そして、この系統発生説(定向進化)の魅力故に、2006年5月時点の米国の世論調査で:

Guided by God .................... 36%
God had no part .................. 13%
God Created in Present Form ...... 46%

http://www.pollingreport.com/science.htm
という形で、"若い地球の創造論"が半数を超えることがないのかもしれない。


posted by Kumicit at 2006/07/29 12:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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