2011/08/08

たぶん剥いだ表土の処分場は確保されない

福島県内で進行中の除染では、おおよそ以下のことを行っている(南相馬市の例)。

  • ミニホットスポットの処理
  • 清掃
  • 高圧洗浄機を用いた洗浄
  • 窓ガラス拭き
  • 建物外壁の洗浄
  • 表土剥ぎ
表土などの除染廃棄物は、日本原子力研究開発機構の実験に基づく原子力安全・保安院の推奨である「耐水シートを敷いて地下埋設」する形で一時保存される。

この方法は「放射性物質を含む表層土を埋め込み、上に土をかけることで、放射性核種が地中に広がり、検出がいっそう困難になってしまう。汚染部分が拡大すればするほど、ますます手に負えなくなる」とキアフォット教授(原子力工学・放射線医学・生体工学)の指摘するところでもある。

でも埋設するのは、前回見たような状況にあるから。

  • 除染せずに放置すれば、いずれ放射性物質は土中に染み込み除染が困難になっていく
  • 学校等の施設の除染は最優先課題
  • しかし、除染廃棄物を運び込むべき最終処分場あるいは一時保管場所が確保できていない。

最終処分場あるいは一時保管場所は確保できない理由は、どこも住民の反対が大きいこと。放射性物質がほとんどない、あるいは検出されていなくても、反対の声が大きい現状は問題だとしても、当面、変えようがない。:
[がれきの放射能測定、岩手・宮城 県外処理へ地ならし (2011/07/20) on 朝日新聞 (魚拓)]

受け入れ側自治体の一部で、住民が反発。川崎市では4月に受け入れを表明して以降、住民らから「放射能汚染が不安なので受け入れないで」などの電話やメール約6千件が殺到。東京都や京都市などほかの自治体でも同様の事態が相次ぎ、県外での受け入れは始まっていない。

[陸前高田の松、使用中止に=京都・送り火の薪−放射能懸念の声で (2011/08/07) on 時事通信]

東日本大震災で津波に流された岩手県陸前高田市の名勝「高田松原」の松を、「大文字」で知られる京都の伝統行事「五山送り火」で燃やす薪として使用する計画が、福島原発事故による放射能汚染を懸念する声が寄せられたため中止になったことが7日、分かった
結局のところ、最終処分場あるいは一時保管場所として利用可能な国内の場所は「警戒区域内」に確保するほかない。警戒区域内であれば:

  • 既に汚染されている場所が多くある
  • 住民が退避していて現時点では住んでいない
  • メルトダウンした核燃料の処理など廃炉に至る工程が続く限り、退避を継続する必要があり、数十年は住民が還ってこれない
実際、最終処分場を福島県内に確保しようとした環境省だったが、6月9日に福島県佐藤知事が県内最終処分場を拒否したことで、確保できないでいる

警戒区域を最終処分場にすることは、警戒区域を「永久帰還不可能区域」にするものであり、福島県庁そして、双葉・浪江・大熊・楢葉などの各町役場/町長も受け入れることは「政治的」にできない。事故以前にはこんな動きもあったが、現在はとても無理だろう。
[「原発のごみ」最終処分場、福島・楢葉町が誘致検討 (2009/03/15) on 朝日新聞(archive)]

東京電力の福島第二原子力発電所が立地する福島県楢葉(ならは)町の草野孝町長が、原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場誘致を検討していることがわかった。朝日新聞記者の取材に明らかにした。処分場は02年から公募中で、これまで高知県東洋町など約10の自治体で誘致の動きが起きたが、反対運動で未定のまま。応募すれば、原発を抱える自治体では初めてになる。

草野町長によると、処分場を公募している経済産業省の認可法人「原子力発電環境整備機構(NUMO)」の担当者を来月にも町内に招き、誘致に向けた勉強会を町議や住民代表と開くことを考えている。草野町長は「福島県には原発が10基あり、原発との共生は町の課題。安全性が確保されれば、住民の理解を得て処分場の受け入れを考えていきたい」と話している。

まとめると...
  • 除染を急ぐべき
  • そのときの廃棄物を現地地下埋設で一時保管するのは汚染拡大を招くのでNG
  • 県外に最終処分場を確保することは住民の反対が大きくて困難
  • 福島第一原発周辺の「警戒区域」に最終処分場を確保することは、「永久帰還不可能区域」化を意味し、福島県も各町も受け入れられない

で、このままいくと「除染しない」か「一時的地下埋設とその永久化」の二者択一。

ここまでの登場人物は、福島県と福島市・郡山市・南相馬市などの除染が必要な自治体と警戒区域にあって仮想自治体化している浪江・双葉・大熊・楢葉など、最終処分場について環境省・学校の除染について文科省・地下埋設について原子力安全保安院などの政府機関。明らかに、政府各省庁と地方自治体と住民で調整不可能な問題があって、解決は急がないといけない状況で、登場すべきなのに登場していない人物がいる。「警戒区域への帰還が早々に実現することはなく、それを前提に最終処分場を警戒区域内に設定する」ことを宣告し、それを自治体及び住民に強要し、悪者になることができる最終責任者が。

登場していない理由はもちろん、その動機がないからだと思われる。

  • 悪者になっても、脱原発を支持する人々からの評価は下がることはあっても、上がることはない
  • 原発消極容認〜積極推進な人々からの評価が上がるわけでもない
  • 自分がやらなくても次期首相がやることになる。その場合、次期首相の評判は下がるが、その反動で自分の評価が上がると思われる

posted by Kumicit at 2011/08/08 07:13 | Comment(0) | TrackBack(1) | Earthquake | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック

cocolog:69407410
Excerpt: (続き 2011年8月12日 19:05:29) 「警戒区域」を「最終処分場」にするという発想(例えば↓)は、「合理的」なのかもしれないが、それは日本全土を「最終処分場」にするという話になっていきかね..
Weblog: JRF のひとこと
Tracked: 2011-08-12 19:05