What caused this year's unprecedented Arctic ozone hole?温室効果ガスにより、対流圏が温まり、成層圏が冷えていることが、結果として北極でのオゾン層破壊を加速しているようである。
Earth's ozone holes are due to the presence of human-emitted CFC gases in the stratosphere. The ozone destruction process is greatly accelerated when the atmosphere is cold enough to make clouds in the stratosphere. These polar stratospheric clouds (PSCs) act like ozone destruction factories, by providing convenient surfaces for the reactions that destroy ozone to occur. PSCs only form in the 24-hour darkness of unusually cold winters near the poles; the atmosphere is too warm elsewhere to support PSCs. Stratospheric temperatures are warmer in the Arctic than the Antarctic, so PSCs and ozone destruction in the Arctic has, in the past, been much less than in the Antarctic. In order to get temperatures cold enough to allow formation of PSCs, a strong vortex of swirling winds around the pole needs to develop. Such a "polar vortex" isolates the cold air near the pole, keeping it from mixing with warmer air from the mid-latitudes. A strong polar vortex in winter and spring is common in the Antarctic, but less common in the Arctic, since there are more land masses that tend to cause large-scale disruptions to the winds of the polar vortex, allowing warm air from the south to mix northwards. However, as the authors of the Nature study wrote, "The persistence of a strong, cold vortex from December through to the end of March was unprecedented. In February - March 2011, the barrier to transport at the Arctic vortex edge was the strongest in either hemisphere in the last ~30 years. This unusual polar vortex, combined with very cold Arctic stratospheric temperatures typical of what we've seen in recent decades, led to the most favorable conditions ever observed for formation of Arctic PSCs. The reasons for this unusual vortex are unknown.
地球のオゾンホールは人間が放出したCFCガスが成層圏に存在することによって生じる。オゾンの破壊過程は成層圏が十分に寒くて、成層圏に雲が形成される場合に、大きく加速される。これらPSC(極地成層圏雲)は、オゾンを破壊する化学反応の"convnient surface"を提供することにより、オゾン破壊工場のように働く。PSC(極地成層圏雲)は、極近くで非常に寒い24時間夜なときにのみ形成される。それ以外の大気圏は暖かすぎてPSC(極地成層圏雲)を維持できない。南極より北極の方が成層圏の気温は高い。そのため、北極でのPSC(極地成層圏雲)形成およびオゾン破壊はこれまで、南極よりはるかに小さかった。PSC(極地成層圏雲)が形成されるような低気温を実現するには、極をめぐるswirling windの大きな渦が必要である。そのような"polar vortex"は極近くの冷たい大気を隔離し、中緯度の暖かい大気と混合するのを防ぐ。南極に比べて、北極回りには"polar vortex"の風を大きく乱してしまうような大きな陸地があり、南からの大気の流れと混合されやすくなっている。このために、冬から春にかけての強い"polar vortex"は南極ではよくあることだが、北極ではあまり見られなかった。しかし、Nature掲載論文の著者たちは「12月から3月末にかけて強く冷たい渦が持続したのは、これまでになかった。2011年2-3月には北極の渦の端での大気混合に対する障壁は、南北極あわせて過去30年で最強のものだった。」と書いている。過去数十年に典型的にみられる北極成層圏の低気温とあわせて、この普通でない"polar votex"により、これまでに見られないPSC(極地成層圏雲)形成の好条件が整えられた。この普通でない"polar votex"の原因は不明である。
[JeffMasters: "Unprecedented Arctic ozone hole in 2011; a Florida tropical storm next week?" (2011/10/04) on Dr. Jeff Masters' WunderBlog]
なお、この北極の大規模なオゾン破壊についての典型的なdenailismの主張には以下のようなものがある。
北極の気温でこういうことが起こるとは今まで言われていなかった。ということは、人為的な影響より、自然の変動の方が大きな影響を与えているということだろうか?
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予測が不十分だったということはあるだろう。でも、もしそうなら、オゾン層破壊は自然現象だということになることはないのだろうか?ここを是非、説明してほしい。北極の気温の変動は今に始まったことではないのだから。
[中西準子:"雑感564-2011.10.24「“北極にもオゾンホール“の大きな記事に根源的な疑問」"]
【Sound Scienceの最新記事】
これは、中西さんが今回の北極オゾン層破壊の原因を自然変動と温暖化のみに求めており、フロンの排出があってもなくても変わらなかったのではないかと主張しているように見えるところがポイントなのでしょうか。
デュポン撤退後も、同じ議論が1995年に米国議会で起きています。そのときの科学者Dr. S Fred SingerとDr. Sallie Baliunasは温暖化否定論の主要メンバーとなっていて、いわば温暖化否定論の前哨戦と位置付けられています。
http://transact.seesaa.net/article/135519273.html
米国の温暖化否定を概観する (1) 前哨戦 あるいは オゾン層破壊否定の戦い
http://transact.seesaa.net/article/8280522.html
サウンドサイエンス〜オゾン層
プロが「CFCによるオゾン層破壊が、極地成層圏雲により効率的に起きている」と考えているのに対して、中西さんが「CFCによるオゾン層破壊」とは独立に「極域の低気温によるオゾン層破壊」があるかのように書いています。これはDenialismに、ありがちな記述です。
中西さんは、リスクコミュニケーションの観点から・・・というバイアスが掛かっているのだとは思いましたが、確かにダメな議論をしていますね。