2012/03/18

STS学者 on 「水の記憶事件」

「ホメオパシーが効くことが実証できない理由を科学者が解明すべき」だという...
If homeopathy cannot be demonstrated experimentally, it is up to scientists, who know the risks of frontier research to show why. To leave it to others is to court a different sort of golem - one who might destroy science itself.

ホメオパシーを実験的に実証できないのであれば、フロンティア研究のリスクを知る、科学者たちに、その理由を示すことが委ねられる。それを他人に任せるのであれば、科学自体を破壊するであろう別種のゴーレムを召喚することになる。

[Harry M. Collins, Trevor J. Pinch: "The Golem: What You Should Know About Science", 1993 p.144]
...の直前部分が、さらに興味深い記述になっている。
Recently, on British television, the public at large was able to witness a stage magician informing a prestigious scientist, head of a famous Paris institute, that his ideas were ridiculous. The motive for this attack was not the professor's methods but the topic he had chose to research - homeopathy; the instrument of the attack was, nevertheless, an idealised version of what scientific method ought to be. It is no coincidence that those who feel most certain of their grip on scientific method have rarely worked on the frontiers of science themselves. There is a saying in love 'distance lends enchantment'; it is true of science too. It is important that these vigilante organizations do not become so powerful that they can stamp out all that is strange in the scientific world. Saving the public from charlatans is their role, but scientists must not use them to fight their battles for them. If homeopathy cannot be demonstrated experimentally, it is up to scientists, who know the risks of frontier research to show why. To leave it to others is to court a different sort of golem - one who might destroy science itself.

最近、ステージマジシャンが、有名なパリの研究所長である一流の科学者に、彼の考えが馬鹿げていると教えている光景を、多くの人々が英国のテレビで目撃することとなった。攻撃の動機は、教授の方法ではなく、教授の選択した研究テーマであるホメオパシーだった。攻撃手段は、かくあるべきという理想化された科学的方法だった。科学的方法を知るものであれば、科学のフロンティアでは科学的方法がうまくいくことがまれであると感じる。

恋愛について"距離が魅力を増す"というのがある。それは、まさしく科学にも当てはまりる。それはこれらの自警組織が科学の世界で奇妙なものすべてを根絶できるほどどには強力になっていないことが重要である。ペテン師から人々を守るのが彼らの役割だと言っても、科学者は自らの戦いに彼らを使ってはならない。

ホメオパシーを実験的に実証できないのであれば、フロンティア研究のリスクを知る、科学者たちに、その理由を示すことが委ねられる。それを他人に任せるのであれば、科学自体を破壊するであろう別種のゴーレムを召喚することになる。

[Harry M. Collins, Trevor J. Pinch: "The Golem: What You Should Know About Science", 1993, 1998]
格調高く語られているが、何のことはない。これは「"水の記憶"事件」のことである。「有名なパリの研究所長である一流の科学者」とはJacques Benvenisteであり、ステージマジシャンはJames Randiのことである。

ことの始まりは、「当時ネイチャー誌の編集長だったジョン・マドックス氏はベンベニスト博士の主張が間違っていると認識していたにもかかわらず、公開科学論争のきっかけになればという目的で信頼のおけない論文を掲載してしまった」[Skeptic's Wiki]のが1988年6月である。「そしてネイチャー誌は3名の調査委員をベンベニスト氏のもとに送り込んだ。その中には、自称超能力者のインチキ行為を暴露することで有名なマジシャンのジェイムズ・ランディ (James Randi)も含まれていた」[Skeptic's Wiki] その報告は1988年7月にNatureに掲載された

そして、英国Channel 4の"After Dark" 1988年9月3日放映で、James Randiは当事者としてJacques Benvenisteと対決する。

で、もともとJames Randiは1972年に"超能力者"Uri Gellerとの戦いを開始し、1976年に設立されたCSICOP(現CSI)の創設期の会員・フェローでもあった。トリックを仕掛けてくる"超能力者"や"霊媒"たちに対抗するためには、同じ技術を持つマジシャンがとても有用だった。

テレビでの対決は、この問題が科学論争ではなく、まさしく「トンデモ vs デバンカー」の戦いであることを象徴するできごとだった。

しかし、Harry M. CollinsとTrevor J. Pinchは、James RandiやJaques Benvenisteの実名を挙げたり、「水の記憶」事件のことだと明記したりしていない。それはSTSの方法として抽象化なのかもしれない。でも普通に見れば、「馬鹿な相対主義者の文章にしか見えなくなると思って、具体的内容への言及を避けた」ようにしか見えない。




posted by Kumicit at 2012/03/18 10:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | ID: General | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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