たとえば、「オゾン層は地上を有害な紫外線から守るために存在する」といった目的論を選好する比率と宗教や年齢や人種などの関係の調査研究が進んだ。人間に目的論選好があるなら、創造論の一掃は困難。より目的論思考する幼いときに創造論を家庭で注入されているなら、それを覆すのは無理筋かもということにもなる。
このあたりから派生して、さらにそもそも科学の論理と人間の自然な思考があってないのではという研究群もでてきた。
それに絡んで、進化論は正しいと回答している人も、自然選択を理解していないという調査も行われた。単純でありながら「突然変異+自然選択による進化」というアイデアが自然な思考とあってないのか、誤解続出する。
この創造論支持とは別に、陰謀論や株式相場の迷信などについての探求も始まっている.. このコントロールの喪失と回復には、否定論・インテリジェントデザイン・政府支持・神への信仰などが絡んできて面白いことになっている
一方、米国における政治課題のひとつ「地球温暖化」について、民主・共和党支持者の間の意見が大きく
乖離していく10年という現象が関心をひく。15年くらい前は、民主党支持者と共和党支持者の間に温暖化についての意見の乖離は見られなかったのが急変している。


この急変に何が絡んでいるのか? 民主党支持者と共和党支持者は何か違ってないか?という疑問がわく。そこでわかってきたことは生理的な反応の違い。表層にあるイデオロギーや政策の違いよりも、はるかに深いところで、民主党支持者と共和党支持者に差異が見られることが実験でわかってきた。たとえば、共和党支持者には「世界を黒か白かで見て、不確実性に不寛容で、しかし経験への開放性の欠如(という性格特性)を持ち、閉鎖性を必要とする」傾向がみられる。
もちろん、Chris Mooneyが指摘するように、「多くの形質について我々は広く分布しており、それらのうち幾つかの形質は我々をリベラルに向かわせ、別の形質はその逆の効果を持っている」そして「保守の心理はまったく正常であり、多くの利点がある(そしてもちろん欠点もある)」
とともに、時間制限・注意力散漫・酩酊・恐怖・潔癖などによりリベラルも一時的に保守にシフトすることがわかってきた。熟慮している間に食われてしまう自然の脅威の中で生きていくには、即断即決や決断を完遂する意志などが有効だろう。現代における、そのような反応のひとつが、「読まずにタイトルだけで反論」というもの。熟慮していると負けるという自然の脅威の中と変わらない人間の、適応的な反応だ。即時に敵味方を識別し、敵を徹底的に叩く。識別を間違ったかもという逡巡は死を招きかねない。共和党脳は危機のときには効果的に機能するだろう。革命の推進するのもまた。
このような調査研究は以下を示唆している。
- 彼らは馬鹿でもなけれは、狂ってもいないし、異常者でもない。あえて言うなら、戦闘モードよりであること。
- 高学歴な共和党支持者は賢明であるが故に、より温暖化否定論を支持する。陰謀論者は彼らの中では首尾一貫している。
ただ、それなりに創造論や温暖化否定論や陰謀論にまつわる心理学が見えてきたとはいえ、その対策方法が米国で出来ているかというと、全然できてない。