しかし、数か月程度の短い期間について、一日前取引で取引される48個の商品(30分単位の電力)を見れば、長期トレンドを無視できる。そうなると、日本全体の需要と卸電力取引所の価格はそれなりに相関する。
電力会社により時別需要データを公開しているところと、してないところがあるので、ここでは日本全体の時別需要データのかわりに東電の時別需要データを使う。下図は、東電の時別需要データと2012/5〜8の卸電力取引所システムプライス(価格分断が起きた場合も平均値として算出される価格)の関係である。

このときの約定量と需要の関係は、特に傾向がない。

これの理由の一つは取引所の需給(売買入札量)が見合っていないこと。東電需要に見合って買入札量は大きくなるが...

当然のことながら、東電需要の多いの時は、取引所に出せる余力が少なくなるため、売入札量が減少する。

結果として、おおよそ「買入札量>売入札量」の状態となっていて...

日本卸電力取引所の取引制度が「売側も買側も価格と量を入札する」形式であるため、「買入札量>売入札量」であっても、売入札量のすべてについて約定されるわけではなく、結果として、約定量と価格あるいは約定量と東電需要の間には関係性が見いだせなくなっている。
話を戻して、時間帯別価格を詳細に見ていく。以下は、横軸が48個の商品(0:00〜23:30)、縦軸は上から2012/5/1〜2012/8/31である。緑っぽいところが安く、赤っぽいところが高い。

基本的に平日昼間(昼休みのぞく)が高くなっている。興味深いのは、5-6月の夜間の価格が、7-8月よりも高いこと。これは、夜間とピークの需要の差によるもの。夏場の方が夜間とピークの差が大きく、結果として夜間の余力が大きくなっていることによるものと思われる。
ところで、約定できなかった「買入札」だが、必ずしも販売する電力が足りなくなって困るというわけではない。というのは、「買入札」には、「自社の高コストな発電所を動かすより、安い電力があれば買う」という電力会社の買入札が含まれているからである。(このような取引は、卸電力取引所創設前の経済融通での取引そのものである。)また、販売会社も収益的には非常に不利だが、不足分はペナルティな価格で電力会社から供給を受けられる。この取引方式は経産省電力システム改革専門委員会の2012年7月の電力システム改革の基本方針でも言及されておらず、今後も当分、変わらないようである。
【Othersの最新記事】