2012/11/08

メモ「FAQ: ハリケーンに核攻撃」

NOAAのFAQにこんなのがあった。
[Chris Landsea: Subject: C5c) Why don't we try to destroy tropical cyclones by nuking them ? on NOAA]

ハリケーンの季節がくると、核兵器を使って嵐を破壊すべきという意見が出てくる。嵐を消滅できないだろうという事実と別に、このアプローチは、放出された放射性降下物が貿易風で急速に陸地に運ばれて、破壊的な環境問題を起こすことを無視している。言うまでもなく、これは良いアイデアではない。

さて、これが有効なハリケーン軽減技術ではない理由のより厳密な科学的な説明をしよう。爆発物でハリケーンを軽減することの主たる難点は、必要なエネルギー量である。完全に成長したハリケーンは5〜20x1013ワットの熱エネルギーを放出可能で、そのうち10%以下が風の力学エネルギーに転換される。放出される熱は、20分ごとに10メガトンの核兵器を爆発させるのと等価である。1993年のWorld Almanacによれば、人類全体が消費するエネルギーは1013であり、ハリケーンのパワーの20%に満たない。

力学エネルギーについて考えれば、人間の排出するエネルギーはハリケーンに匹敵するが、それでも、海の真ん中の一点にエネルギーの半分を集中することは困難である。ハリケーンに強引に干渉する方法は有望ではなさそうである。

さらに、核爆発であっても、爆発は衝撃波を作り出し、爆発地点から超音速で彼方へ伝播していく。そのような衝撃波通過後に、大気圧は上昇しない。これは、大気圧が地表の上にある大気の重さを反映しているからである。通常の大気圧では地表1m2あたり10トンある。最強のハリケーンでは9トンである。カテゴリ5のハリケーンをカテゴリ2のハリケーンに弱めるには、ハリケーンの目に0.5トン/m2の空気を追加しなければならない。半径20kmの目全体では5億トン以上となる。それだけの空気を動かす方法は思いつかない。

ハリケーンに成長する可能性のある弱い熱帯性低気圧への攻撃も有望ではない。大西洋では毎年80個程度の熱帯性低気圧が生まれるが、典型的には年5個がハリケーンに成長する。どの熱帯性低気圧がハリケーンに成長するか予め知る方法はない。熱帯性低気圧の放出するエネルギーがハリケーンの10%だとしても、非常に強力である。したがって、ハリケーン軽減には、毎年何十回も世界の電力を注ぎ込まなければならない。

posted by Kumicit at 2012/11/08 08:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | Others | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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